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勘違いしたままじゃ、デビューもヒットも夢のまた夢。

目次

1、市場調査より、私情調査が大切
2、思い込みを無くすと道が拓ける
3、『上手くなることの目的』を履き違えてはいけない
4、勘違いしたままじゃ、デビューもヒットも夢のまた夢


 しばらく更新が空いてしまいました。書きたいことは山ほどありますが、多すぎて一つ一つのテーマをまとめるのに意外と苦労するものなんです。
デリケートなテーマを扱っているので適当なことは書けないですし、頭の中にはあってもそれが常に言葉になっているわけではないので、まずはそこから始めることが難しくもあり、とても楽しんでいます。
 さて、今回のテーマは、とあるひとりのシンガーソングライターとの会話をきっかけに、ああこれは書かないとまずいな。と思ったことがテーマになっています。本当に、いやそれは大きな勘違いだよ!とツッコミたくなることが多すぎるのです。お付き合いさせていただいている音楽プロデューサーの方々や事務所、レコード会社の方々とお話しさせていただく中で、「そういう勘違いしている人、多いよね〜」という会話になるくらいですので、ちょっとここは真剣に、読んでいただいてメリットしか無いと思います。
 同時に、聴く側の皆さんにも是非知ってもらいたいし、きっと読んでいただいた後音楽の聞き方が変わるんじゃないかなと自負しています。
他にもそういう記事を過去にたくさん書いているので、気になるタイトルがあったら是非読んでみてください。
 今回の記事はひとりでも多くの人に読んでもらいたいので、無料です。


1、市場調査より、私情調査が大切 

 そもそも僕は、将来デビューを目指す若手のシンガーやシンガーソングライターの指導よりも、これからデビューすることが決まっている人や、既にデビューしている人のボーカル指導をさせていただくことが多いのです。時には、レコーディングに帯同し、ボーカルディレクションをすることもあります。ありがたいことに、僕がどういう指導をするのか、どういう音楽観を持っているかを知った上で、『こういう子がいるんですがなんとかなりますか?』とか、『この子聞いてみてください。ぶっちゃけどう思いますか?』と音源を送っていただくケースが多いです。
 大抵の場合、レッスンをさせていただく流れにはなるのですが、僕の場合はまず1時間くらいかけてヒアリングします。どうなりたい?今悩んでいることは?という部分は当たり前に聞くとして、趣味はある?好きなことは?嫌いなことは?普段どんなこと考えてる?お休みの日は何して過ごす?彼女(彼氏)いる?最近感動したことある?好きなミュージシャンは?好きな映画は?など、どんどん突っ込んだ質問をしていきます。ただですね、聞けば聞くほど、『そんなことどうでもいいから早くレッスンしてくれー』な顔になっていくのを手に取るように感じています(笑)

 はい!まず、ここが大きな勘違い!!アーティストを教えるのにその人のパーソナリティーがわからないところからはレッスンを始められません。絶対にムリだと言い切れます。例えば音域を広げて欲しいとか、声が枯れないようにしてくれというオーダーなら、とりあえず一曲歌ってもらって、今どんな発声になってるかを目と耳で観察してどこをどう改善すればいいかを見極めればどんどんレッスンを進めていけます。

 でも、アーティストのレッスンはそうはいきません。教えると言うより、その人の良さや元々滲み出ている魅力のみならず、持っている感性や人生観や美意識などなど、トータルして【その人が表現されている音楽】になるように最大限引き出すことが僕の仕事だと思っているからです。

 そういう方をレッスンさせてもらう時には僕が僕の価値観や感性で、良いとか悪いとか判断するような境地に無いわけで、ちょちょっと下調べして会った瞬間のインスピレーションでさぁ本題に入りましょう!なんてとてもじゃないけどできない…というか、怖い!その後の音楽人生を大きく左右することになるわけですから。あ、もしかしたらエスパーみたいな超人トレーナーがいて、瞬間的にそれができる場合もあるかもしれませんが、僕にはそれができないので時間をかけさせてもらうしかないんですごめんなさい(笑)

 このような感じで僕はレッスンに挑むのですが、当の本人が全然違う気持ちで僕の元にくることも稀ではありません。たっくさん市場調査をして、よくそこまで分析したねと心から感心するくらい、こういう曲を書けば売れる。最近の流行りはこういう声の出し方だ。というのを事細かく調べ上げています。いざ歌ってもらうと、確かに上手い!という人に出会うことも少なくありません。

 でもですね、どんなに市場調査をして流行りを掴んだり分析ができても、歌に魂が入ってないケースってとても多いんですよ。聞いていても心が震えないというか。こういう時、僕は【パンチが無い】とお伝えしています。誰かの真似じゃなくて、自分の心が震える方向に思い切り進んで行ってみるとどうなる!?とか、今どんな気持ち!?今歌ってて胸の奥の方で煮えたぎっている感情ってどんなのだった!?とか、質問の仕方(ここは企業秘密なので教えられません。というか、文字にできません。)を変えると、少しづつ、【自分】というものに向き合った音楽に変化していきます。

 誰よりも本人がそれに気づくので、書く歌詞の内容が変わったり、メロディーの作り方も歌い方も、どんどん変わっていくわけですね。究極、自分にしか無いモノになるよう引き出していくのですが、元々は本人もそこを目指していたはずなのに、いつの間にか全然違うことやってた…という気付きもあるそうです。だからトレーナーという職業があるんだよ!というつっこみと共に、これからは市場調査じゃなくて私情調査もしようなー!と声をかけています。


2、思い込みを無くすと道が拓ける

 思い込みって怖いですよね。大抵無意識だから余計に。何故だか、こうだ!って思ってる。もちろんそれもその人それぞれの価値観ですが、それによって視野が狭くなることだって、あるのです。
 例えば、世間一般的に失恋は良く無いこと、嬉しく無いことと認識されています。傷付くし、悲しいし、僕も失恋なんてできればしたくないです。でも、失恋の経験が無い人が、失恋の歌をうたえるのでしょうか。感情を抜きにすれば、誰だってどんな歌でもうたうことは可能です。このnoteを書き始めて三つ目の記事にも書いたことがここで重要な要素になってくるので、是非読んでみてください。(【解説】歌(音楽)で伸び悩んでいる人にも、音楽好きにもスパイスになる記事。)です。
 アーティストにとっては、失恋ですらも歌に生きる経験です。良い経験とか、悪い経験とか、頭で判断せずに【心が動いたら】それはあなたにとって、歌の幅を広げる出来事であることは間違いありません。

 俺は今悲しいぞーーーーー!!私は今猛烈に苦しい思いをしているーーー!と、声高らかに表現していいのです。失恋という一言じゃ表せない、あなたの表現の仕方が必ずあります。それは、普遍的なもの、例えば空を見上げて「嫌なこと吹っ飛ぶくらい晴れだ!」とか、「かんかん照りで暑過ぎるよ!」とか、「あー今日は家でゆっくりしようと思ってたのにこんなに晴れてたら出掛けたくなっちゃうよ!」とか、同じ【晴れ】でも、そこにあるそれぞれの感情こそが個性であるということを忘れないでください。

 天気予報で、晴れのことを「いいお天気」雨のことを「悪いお天気」とは言いません。農家の人にとっては、水不足は大打撃。雨は降らないとむしろ困ってしまうからです。だからこそ、自分にとって良いモノや悪いモノがなんなのかをおもいきり歌にしていいということです。恥ずかしがらず、こんなこと思ってて良いのかな…こんな風に考える自分はちょっと他と比べて変かな?と思うことがあるとしたら、そこにあなたの個性があります。是非、全部さらけ出してください。


3、『上手くなることの目的』を履き違えてはいけない

 前述したことを踏まえての話しになることは大前提で読んでいただけると幸いなのですが、僕のレッスンの門を叩く人の中にも大勢、「上手くなりたい!」という人がいます。気持ちはわかりますし、上手いに越したことはありません。
 でも、いくら上手くても届かなきゃ、伝わらなきゃ意味がないということも忘れてはいけません。自分が届けたいこと、伝えたいことを最大限表現する為には、もっと高い声が出せるようになりたい!自分が届けたいこと、伝えたいことを最大限表現する為には、途中で声を枯らすわけにはいかない!自分が届けたいこと、伝えたいことを最大限表現する為には…そうです。こうやって色々と突き詰めていった結果、気付いたら歌が上手くなっていた。くらいがちょうどいいと僕は思います。
 めちゃくちゃ上手いのに全然伝わって来ない人、たくさん見てきました。超下手なのにすっごく心を掴まれる人も同じ数かそれ以上見てきました。あとは、とっても味があったのに、上手くなって普通になっちゃったなぁという人も本当にたくさん見てきました。
 でも、不安に思うことはありませんよ。大事なことを忘れなければいいだけです。上手くなる為の練習なのか、届ける為の練習なのかをきちんと自分の中に持つこと。上手くなることが目的なのか、届けることが目的なのかということをきちんと自分の中に持ち続けること。たったそれだけです。


4、勘違いしたままじゃ、デビューもヒットも夢のまた夢

 さて、この記事を通して僕が伝えたかったことはこの章のタイトルそのままです。勘違いをしたままじゃ、デビューもヒットも夢のまた夢。もちろん市場調査や分析も必要なことではあります。でも、それは【自分の音楽を届ける為の手段】にしか過ぎないということ。

 いい経験と悪い経験を自分の価値観で判断するところまではGOOD!ですが、【どちらもあなたの心が動いた出来事として音楽になる】ということ。そして、それを表現してくれることで、同じ境遇にいる人たちにとってはとってもとっても励みになります。世の中に、世間一般的に良いとされる感情の歌しか無かったらクソつまらん!と思いませんか??

 上手くなるのは大いに結構!だけど、それは届ける為の手段の一つであって、【上手くなることが目的ではない】ということ。

 音楽は、【誰が一番上手いか選手権】ではありません。様々な境遇の中で、日々を一生懸命に生きているその生き様が音楽そのものだと僕は思っています。昔は上手い人を好んで聞く傾向に僕もありましたが、今は自分の心が震えるかどうか?で音楽を聞くようになりましたし、そうやって音楽をやるようにもなりました。

次回の記事で何を書こうか悩み中ですが、リクエストがあったので僕がどうして音楽活動を続けてこられたか?を書こうと(今は)思っています。


 

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