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小説|銃を持つほうが右

 右と左のどちらがどちらか、僕はおばあちゃんから教わりましたが、その覚えかたが変でした。「銃を持つほうが右」だと言うのです。銃? 銃とは何でしょう。きいてみると、おばあちゃんも銃が何かは知らないそうです。

 おばあちゃんも、そのおばあちゃんから、そう教えられたようです。同じ質問をおばあちゃんもしたけれど、そのおばあちゃんも銃を知らなかったといいます。銃のことが気になり、僕は近所のもの知り博士をたずねました。

 ずいぶん昔の話だから、くわしくは知らないそうです。手に持つと何かが飛びだすもの。博士はそう言いました。何が飛びでるのでしょう。博士にもそれは分からないようです。僕はお礼を言って帰りました。

 帰り道。僕は歩きながら青々と晴れた空に右手をかざします。どんな形かわからないけれど、僕は銃を持つまねをしました。ふいに鳥が羽ばたく音。空に向けた僕の銃から、白いハトが飛び去ったように見えました。






ショートショート No.104

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