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小説|暴言の爆心地に

 聞くに堪えない轟音。彼女の静かな街の中心に鉛色の暴言が落ちました。彼女が幼い頃によく遊んだ公園も、通っていた学校も、住み慣れた実家も、暴言が焼き尽くします。気づけば焼け野原の真ん中に彼女はいました。

 体に傷はなくとも彼女は立ち上がれません。暴言を落とした飛行機は何もなかったかのように飛び去ります。天井のない廃屋で、彼女は月も星もない夜を迎えました。また暴言が落ちる夢を見るのが怖くて眠れません。

 朝日は雨雲に隠されます。雨に濡れた彼女に傘を貸したのは、いつの日か公園で遊んだ友だちでした。タオルを渡してくれたのは、久しぶりに会った同級生。温かいお茶を淹れてくれたのは、彼女の両親です。

 雨は上がり、しかしまだ立てず、彼女は廃屋から荒野へと這い出ました。友だちや同級生や両親が残した足跡に雨が染み込み、芽が出ています。日を含んだ雨露が光る双葉。それは言の葉です。彼らが彼女にかけた、言葉。






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ショートショート No.323

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