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小説|昨日の自分を撫でる夢

 一日の疲れがあなたの身体を重くします。なにも、やる気が起きません。ベッドに倒れ込みました。うつ伏せで目を閉じ、あなたは眠りにつきます。今日あった嫌なことを夢に見ないように願いながら。

 あなたは、あなたに会いました。夢の中です。あなたはそれが昨日の自分だと知っていました。おぼつかない足どり。こちらへ歩いてきます。目もとにはひどいクマがありました。疲れ果てているのがよく分かります。

 あなたが見えていないような遠い目をして何かつぶやきました。聞けば、喋る元気もない口から自分を責める言葉を吐いています。あなたはあなたを抱きしめました。子どもをなぐさめるように、何度も何度も頭を撫でます。

 朝。昨日の自分はもういません。起き上がり支度をはじめます。洗面所へ向かいました。鏡を見てあなたは気づきます。誰かにやさしく撫でられたかのように、自分の髪にクセがついていることを。






ショートショート No.96

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