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小説|最後の一口を食べる天使

 なぜ私が神様に頼んで時間を巻き戻してもらったか。同じ天使として長年一緒に働いてきたあなただから言いますけれど、私は一度、人類を滅ぼしてしまったのです。事の始まりは、人間が最後の一口を食べなかったこと。

 人は食べ物が一つ余ると他人に気を遣って食べないでしょう。あれが人を不幸にしていると思ったのです。食べるかどうか悩む時間が、人の心を疲れさせていると。だから、私が代わりに最後の一口を食べるようにしました。

 すると、どうなったか。人は最後の二口で手を止めるようになりました。最後の一口は無いものと考えてね。だから、私は最後の二口も食べるようにしました。そうなると人間は最後の三口まで残すようになります。

 私が最後の三口目も食べるようにしてからは、いたちごっこ。ついには、私が食料を食べ尽くすことに。人類は滅亡。神様の力で元に戻りましたが。あの後、人が七つの大罪に暴食を加えたのは、たぶん私への当てつけです。






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ショートショート No.346

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