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せみ塚と立石寺

夏はやおとろえ、鈴虫が鳴き初める。蝉のむくろが所構わず転がるようになった。我が物顔で夏を謳歌した彼らだが、幼虫の半数は羽化できぬまま尽きるという。蝉時雨も聞き納め。大役を果たした蝉たちをねぎらう碑が東北にある。立石寺(りっしゃくじ)の「せみ塚」だ。

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立石寺は東北の四寺廻廊の一つ。天台宗の霊山で創建は860年。芭蕉の

「閑さや 岩にしみ入る蝉の声」

で知られる。「Lonely planet Japan」で「end of the world」と説明された「みちのく」も東京駅から新幹線と在来線で3時間。千葉県の銚子より近い。

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密教を奉じる根本中堂には不滅の法灯が燃え続けているという。奥の院まで石段が続き、苔むした石仏や碑にお堂が並ぶ。石段は1000段で一段一段上がるごとに煩悩が消えていくという。往復2時間と行ったところか。

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芭蕉に倣って岩を這い、仏閣を拝す。

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霊気が満ちているけれど、汗がにじむ。幸い要所要所に自動販売機。絶景を眺めながらのコーラ。

汗だくで石段を上りつつ狛犬を探すが・・・一匹もいない。なんということだ。落胆する筆者の目に映ったのは無数に並ぶ碑、碑、碑。ひときわ印象的なのは、山口素堂の句碑。

「滅びゆくもの 美しき  遠き世の 供養の文字乃 苔にやつるも」

日本の文化の底流をなす無常感。静寂が山を満たす。

「ほろびこそ わが よろこび。 しにゆくものこそ うつくしい」

 by 大魔王ゾーマ 復活の呪文がある世界でも「もののあはれ」は健在。

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芭蕉も聞いたであろう蝉の声を背に、駅前の茶屋でお蕎麦に天ぷらもつけて、ついでにお銚子もつけて一服しよう。

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