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『脳内の片づけなきゃ病について考えてみる』


新しい目標を立てるとき、かならず出てくるのは「断捨離」である。
毎年毎年、同じ目標を立てているということは、
その目標は達成されていないということである。
たぶん、25年間くらい「すっきり心地よい家にする」といった目標を
立て続けている。

物を分別して不要なものを処分して整理して収納する。
ルールはこれだけ!
なのに、こんな簡単なことが私にはできない。

わたしの悩みの30パーセントはこの片づけ思考で占められていると思う。
この手の本やYouTubeがあると、
つい引き込まれて見てしまう。

今も手元に「なぜかワクワクする片づけの新常識」と
書かれたタイトルの本がある。
ジャケ買いがあるように、タイトル買いも当然あるだろう。
整理収納に悩んでいる人ならこのタイトルを見たら、
きっと心惹かれるに違いない。

ただこのタイトルの前には「シニアのための」とついているため、
50歳になったばかりの私にはまだ少し早いかも……と思いはしたが。
しかし、確実に年はとるのだ。
早めに読んでみたところで何も問題はない。

私はいわゆる貧乏な家で育った。
貧乏な家にありがちなイメージ通り、家の中は物があふれていた。
たとえば、6畳の部屋に姉と私の勉強机が二つと洋服ダンス、
大きい本箱、洋服掛けの家具、そして電子ピアノまでがあった。
書いてて6畳にこれだけの物が置けるものなのか、記憶違いかな? 
と悩んだが、確かに一部屋にこれだけのものがあった。

別の部屋もここまでギュウギュウではなくても似たような感じで、
やたら大きな箪笥がいくつもあった。
中学生ころの身体の大きさになると、
家の中でごろんと畳の上で手足を目いっぱい盾に伸ばして、
寝っ転がれるスペースはなかった。

そういう環境で育ってきているからか、
片づけ脳がうまく育っておらず今でも苦手だ。

みんチャレの片づけグループに入って毎日片づけを習慣化したり、
オーディブルでこんまりのときめく魔法の本を耳読しながら、
整理収納に「選択を集中」して取り組んでいるのに、
その時はきちんと片付いても、
翌日になるとどうもまた部屋が乱雑になり、
モヤッとした空気感漂う部屋になってしまっているのだ。

友人に整理整頓が得意な人がいて、
その人の家は突然訪問してもキラキラと綺麗に掃除されており、
とてもい心地よく整えられている。
同じ主婦として私とはかなりかけ離れている。

その友人に「どうやったら部屋がきれいにできるの?」と、
相談してみたこともある。
いっそ、その友人に我が家を片付けてもらいたい……と、
自分の片づけ能力の低さから考えたこともあるが、
我が家に遊びにきた友人に 「あ、そしたらこの棚処分できるわよ♪」と
気に入っていた棚のことを一方的に言われたことにカチンと来てしまって、
我ながら勝手だな……と思ったことがある。

友人のアドバイスから10年近く経ってから、
この棚を処分することにした。
ずっと友人の一言が引っかかって、処分するまい! 
と思っていたのに、
ふと、もういいか……と棚を手放したところ、
棚のスペース分だけ部屋がすっきり広がった。

棚がなくなっても、特に困らなかったし、
思い入れなどなかったのだ。
結局、その友人のアドバイスは的を得ていたのだ。
私のほうが、変な思い込みで歪んでいたんだなぁと思う。

コーチングを受けてみたことがある。
最初は片づける方法や、
どうやったら片づける時間をとれるかということを
質問され考えていたのだが、
オートクラインが働き、最終的に
「どうして片づけられないのか?」という問いが自分の中に湧いてきた。
一定のレベルまでは物を処分し、掃除することはできるのだ。

その問いに出てきた答えは
「きれいにすっきり整った部屋になるのが怖い」だった。
どうして怖いのか?
「もう片づけをしなくてよくなると、私のするべきことがなくなるから」
きれいに整った空間で、のんびり心地よく暮らしたい。
……のんびり?毎日?

『女性の品格』 の著者の坂東眞理子さんが、
以前テレビの特集でご自宅での様子が映っていたことがある。
朗らかな表情で、恥ずかしそうに雑多に散らかった家を歩きながら、
コンセントの汚れを拭いている様子が映し出されていた。

素晴らしいキャリアを持ち、女性の品格で大変すばらしい内容を書かれた
坂東真理子さんのギャップに私はとても好感を持った。
私はそういう人にほんとはなりたかったんだ、というのを思い出した。

私は片づけというタスクを日々行うことで、
空っぽの自分に向き合わなくてすむようにしていたのだ。

ダイエットと同じで、「痩せなきゃ」と自分に脅迫概念を与え続けても、
良い結果にはなかなか結び付かない。

本当は自分のライフワークを日々自信をもって
充実した日々を送れていれば、
生活や健康に支障がない程度に多少家が散らかっていてもかまわないのだ。

結局、片づけなきゃ病から解放されるには、
私の中の内面と向き合うしかない。
毎日、瞑想の時間を生活の中に組み込み、
自分の頭の中を空っぽにする。

それを日々繰り返すことで、空の自分の中に
新しい風が入ってくる。

部屋にもきっと新しい風が入ってくるではないかと期待している。



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