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目指すは地域と共生するキャンプ場。ときがわ町コモリバで過ごすやさしい時間
いま、日本に何度目かのアウトドアブーム、キャンプブームが訪れています。
このキャンプをアカデミックな視点から考え、発信しているのが、國學院大学のランタントークという試みです。國學院の教授陣が教育、歴史、考古学などそれぞれの専門分野から、縦横無尽にキャンプを語っています。
このnoteは、より広い方々に「キャンプ×アカデミア」のおもしろさに触れてもらうことを意図した、いわば出張版。
連載5回目となる今回は少し趣を変え、『キャンプコーディネイター』として活動し、イラストや漫画を通じてキャンプの魅力を伝えているこいしゆうかさんをゲストに、ランタントーク本編でも取り上げた『ときたまひみつきち COMORIVER(以下、コモリバ)』の魅力を体験レポートでご紹介します。
コモリバってどんなところ?
コモリバは、2018年に埼玉県比企郡ときがわ町にてオープンしたリゾート施設。「ときがわ町の美しい川と自然に囲まれながら、すごもりしたくなる場所」をテーマに、テントや食材を持ち込んだキャンプをはじめ、手ぶらでも楽しめるBBQやグランピング体験など、どんな方でも気軽にアウトドアを体験できる施設です。その他にも、たくさんの本が揃うライブラリーカフェやサウナといったさまざまなアクティビティが楽しめるのも大きな特徴。
桜の木々とテント(写真提供:コモリバ)
春にはキャンピングサイトを沿うようにして生えている桜の木々が一斉に花を咲かせ、あたり一面を彩ります。満開の桜の下でアウトドア体験なんて、想像しただけで豊かな気持ちになりますよね。
今回こいしさんは、コモリバ一押しのグランピングとBBQを体験することに。どんなワクワクが待ち構えているのか、ぜひ読者のみなさんも一緒に楽しんでみてくださいね。
では、レポートスタート!
川あそびにおいしい料理で大満喫!
この日の天気予報はまさかの「雨」。台風がどんどん向かってきているという予報を耳にし、若干の焦りを感じる取材クルー。しかし現地に着いてみれば、そんな心配は一切ご無用。少しの雲こそあれ、晴れ空が見えるほどです。テントに荷物を置いて、まずは目の前の川へ!
透き通る水が日の光を反射して、キラキラ輝いています。思わずこいしさんから「めちゃくちゃキレイ!!」と、うれしい叫びが飛び出ます。
「これは入るしかないでしょう!」と、こいしさんが持ってきたのはアウトドアチェア。浅めの川にチェアを入れれば、涼しい川の空気を感じながらチルアウトができるのだとか。あまりの気持ち良さに、シャツの裾が浸っていることも忘れてしまっています。
こいしさん「これぐらいの広さの川なら、子どもが遠くへ行ってしまう危険性もないので家族で利用する方も安心ですね私自身、数々のキャンプ施設へ行きましたが、小川沿いのグランピングははじめてなんです。仮に目を離したとしても安心できるし、ここならお子さん連れの友達とも気兼ねなく来られそう!」
気づけば川遊びに夢中になってしまった私たち。お腹も相当空いてきたので、早速お昼ごはんを食べることにしました。
今回こいしさんは、『COMORIBBQ(コモリバーベキュー)』を注文。こちらのメニューは「野外で楽しむコース料理」をテーマに、前菜やメインディッシュ、締めのご飯にデザートなどをすべて自身の手で作っていくという形式のもの。
ただ、自身の手で作るとはいえ、そこには調理の過程がほとんどありません。スタッフの方々が事前に下ごしらえしてくれたものを簡単に調理するだけで、あっという間に料理が完成します。
こいしさん「前菜、メインなどコースになっていて、普段のBBQよりも一段とレベルアップしたお料理が楽しめました。炭を起こしてただお肉を焼くだけでなく、パエリアやサラダなど、バリエーション豊かな料理を手軽にいただけるのは素晴らしかったです。それに、できあいのものや冷凍ものは一切なく、全てがやさしい味でおいしかった!お料理の内容も、季節にあわせてスタッフみんなで考えているそうで、ときがわ町のお野菜を使っているのもうれしいポイントですね!」
町とともに生きる。地域密着型のキャンプ場
川あそびやBBQを存分に楽しんだところで、『コモリバ』の支配人・鶴見さんに施設の魅力についてお話をうかがいました。
——コモリバはどういった経緯でオープンしたのでしょうか?
『ときたまひみつきち COMORIVER(コモリバ)』は2018年の夏にオープンしました。この場所は元々、文化交流センターというときがわ地域に住む住人の集会場として建てられた施設だったのですが、町の過疎が進むにつれて次第に使いみちを持て余すことに。一時期は老人福祉施設として活用したものの、最終的には遊休地として開放されることとなりました。しかしその結果、町外から河川敷でバーベキューをするために人々が集まり、トラブルが相次いでしまったのです。
そんな状況を見かねて、町がこの場所の活用方法を民間から公募することになり、そこで私たちが提案したのがコモリバです。ここはきれいな川原が目の前に流れているので、家族が安心してバーベキューや川あそびを楽しめるキャンプ施設はきっと需要が高いだろうと考えました。
ときがわ町は、埼玉のちょうど中央あたりに位置しており、東京から車で1時間ほどで来れるので、都市部に住んでいる方でも気軽に「自然」とふれ合うことができます。そういった点も後押しとなりました。
——お客さんとしては、どこに住んでいる方が多いですか?
さいたま市や、所沢、川越といった県内からのお客さまが多いですね。ただ、関越道や圏央道も走っていて23区内からのアクセスもよいので、なかには都心からお越しくださるお客さまもいます。
——コモリバはどんなところに力を入れているのでしょう?
もちろんグランピングやサウナといった設備には力を入れていますが、「焚き火」も自信をもってオススメしています。ときがわ町は「木材」で発展してきた町なので、スギ、ヒノキ、クヌギ、コナラといった地元の間伐材を薪として積極的に利活用しているんです。
——すごい、そんなにたくさんの種類があるんですね!
薪以外にもコモリバで使用している木材はときがわ町で採れたものを使っているんですよ。今私たちがいるオープンスペースも、全てときがわ町産の木材でできています。
——たしかに木でできたものがすごく多いですね。
コモリバは、「町とともに生きるキャンプ場」として、地域ならではのものを積極的に使うことを大切にしているんです。ときがわ町はなにもない場所だと思われがちですが、昔から林業が盛んで、木材の資源がたくさんありますし、水がとっても綺麗。町にはその水を使ったおいしいお豆腐さんがあったりもします。
私たちが宿泊者さまに提供しているお食事にも、そういった地元のものを積極的に使っているんです。また、基本的には、全て手づくりでお食事を用意しているのもポイントですね。それも、コース料理として提供することで、お客さまに特別な食体験をしていただくよう心がけています。
——たしかにキャンプでコース料理ってなかなか珍しいですよね。ちなみに『コモリバ』の名前の由来はどういったものなのでしょうか?
「共生」を意味する “COMMON” と、「川」を意味する “RIVER” を掛け合わせています。
この「共生」という言葉には「地域と共に生きる」という意味が強くありますが、食材の地産地消も、地元の木材を使うことも全て、この言葉に繋がっていくと考えているんです。
最終的に私たちは、ときがわ町に暮らす方々にとっての「ハブ」になりたいんですよね。本来この場所が持っていた「集会場」としての役割を、また戻すということなのかもしれません。この町を愛してくださる方々に、場所を提供する。簡単に言えばそれだけかもしれないけれど、そこで新たな繋がりやアクティビティが生まれる。
それこそがきっと、私たちがときがわ町に還元できる一つの価値であり、楽しみだと考えています。
日が暮れたころは、焚き火の出番!
支配人・鶴見さんとのお話を終え外に出ると、すでに日も暮れ始め、次第に雨が気になるような怪しい天気に。しかしそんな天気の悪さとは裏腹に、『せっかく焚き火のお話も聞けたし、やろうよ!』と、こいしさんのテンションがグングン上がってきたような。
20種類以上ものご用意があるという焚き火台の中から、こいしさんが選んだのはカナダのアウトドアブランド『SPORTES(スポルテス)』による、『ファイヤーウォール』というモデルでした。
「こんなにたくさんの種類の焚き火台が用意されているのは、なかなか見たことがないですね!」と、嬉しそうなこいしさん。話によれば、そのマニアックな見た目に反して、使い勝手はかなり良いのだそう。
こいしさん「もうすでにたくさんの焚き火台を持っているけれど、これは個人的に欲しくなっちゃいましたね。王道の焚き火台からちょっとマニアック心をくすぐられる品揃えで『コモリバ、やるなぁ』と心から思いました。これならベテランキャンパーも十分に満足できそうですね!」
ゆったり楽しむ、背伸びをしないやさしいグランピング
充実のアウトドアアクティビティを終え、そろそろ取材も終盤。大満足のこいしさんに、一日を通じたコモリバの感想をいただきました。
こいしさん「どこをとっても、『やさしい』と感じました。たとえば食事。スタッフの方々が一生懸命考えて作ったメニューは、最初から全て下ごしらえがされていて、少しの調理だけで食べることができるんですよね。それに、お皿やカトラリーの用意もしっかりとされている点もうれしかったです。
テントの中もびっくりするほど快適でした。タープやテーブルなどはもちろんのこと、テント内には快適に過ごすためのクッションやチェア、棚、送風機など、気遣いがつぶさに効いていて、しかも、おしゃれ。エアベッドも快適でしたし、正直、言うことなしです。今まで『グランピング』と聞くと、どこかオシャレすぎるような、ちょっと気合いが入ってしまうような気がしていたんです。ただ、コモリバのグランピングには『背伸びしすぎないアットホームさ』があったんですよね。だからこそ、ファミリーも楽しめそうだなぁと。
ホテルのような『完全なサービス』を楽しむというよりも、自らでほどよくカスタムできるサービスを受けて快適に過ごしつつ、安全かつ自由に自然と遊べる点が魅力的でしたね。仕事でなく個人的にも絶対また来よう、と思いました!」
キャンプのあとのお風呂は別格!
取材を終えた取材クルーが目指したのは、コモリバから車で10分弱の場所にある玉川温泉。昭和レトロの雰囲気をテーマとした温泉施設です。
キャンプを終えてふらっと来るには、ぴったりの立地。アウトドアアクティビティに体力を使い切ったと思いきや、「かわいい!!!」とこいしさんからまたもハイテンションな声が。まるで昭和の時代に戻ったかのような、古い看板や雰囲気あふれるポストに気分も上がってしまいます。
どこか懐かしいようなムードに和みながら温泉で疲れを癒せるのも、コモリバの醍醐味だよなぁ、と幸せな気分で一日を終えた取材クルーなのでした。
【取材協力】
ときたまひみつきち COMORIVER(コモリバ)
埼玉県比企郡ときがわ町本郷930-1
https://comoriver.com/
■コモリバについてのランタントーク本編はこちら
ランタントーク本編では、今回こいしさんが訪れた『コモリバ』の誕生秘話や背景について、國學院教授のアカデミックな視点を交えて紹介しています。行政や地方自治から考える「持続可能なキャンプ場」とは一体?合わせてぜひご覧ください。
執筆:三浦希
イラスト:こいしゆうか
編集:日向コイケ(Huuuu)