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中国スタートアップ 資金調達Weekly Report_2021/04/02-2021/04/08_14w

こんにちは!
中国大好きな竹内雄登です。
現在は、SPEEDAというデータベース向けに中国産業調査をしていますが、前職は、ソフトバンクでベンチャー投資などのM&A業務をしていました。

今年の2021年から、ITjuziというデータベースの情報をもとに、Weeklyで中国スタートアップの資金調達状況について発信することにしました。
このWeekly Reportでは、主に以下3点についてまとめていきますので、お時間がない方は気になる箇所だけでも、ぜひご覧ください。

・各週の資金調達案件まとめ
 - 資金調達件数(日別、業界別、都市別、ラウンド別)
 - 投資金額(日別、業界別、都市別、ラウンド別)
 - 資金調達実施企業リスト
・上記資金調達により、新たにユニコーンになった企業
・投資案件数上位10の投資家

では、早速本題に入りたいと思います。

1. 日別 資金調達件数・金額

2021年の第14週目である4月2日〜4月8日における、日別の資金調達状況を見ていきます。

[資金調達件数]
4月2日〜4月8日の週は、合計83件となりました。
なお、1月1日からの資金調達件数の累計は1,392件となりました。

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[調達金額]
非公開や曖昧な情報を除き、公開されている情報のみを集計したため、あくまで参考としてのデータですが、4月2日〜4月8日の週では、公開金額合計で225.3億元の資金調達が行われました。
また、1月1日からの調達金額の累計は2,295.7億元となりました。なお、今週の83件のうち58件が金額非公開のため、単純計算すると、今週の調達金額は集計できた金額の約3倍の規模になると考えられます。

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2. 業界別 資金調達件数・金額

では、業界別に見ると、どうなっているのでしょうか。

[業界別 資金調達件数]
今週の83件の内訳を見ていきます。
業界別に見ると、医療・健康の資金調達件数が最も多く、合計18件となりました。次いで、先進製造、メディア、ローカルライフサービスが上位に入り、上位4業界だけで今週の件数全体のうち54.2%を占める結果になりました。

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1月1日からの資金調達件数累計の内訳を見てみると、上位4業界の医療・健康、法人向けサービス、先進製造、ローカルライフサービスだけで、全体の57.4%を占めています。

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[業界別 調達金額]
公開されているものだけのため、あくまで参考程度のデータですが、今週は物流、Eコマース、医療・健康、先進製造の順に多く、上位4業界で全体の96.2%を占めています。

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なお、物流、Eコマースが上位になった理由は、それぞれ大型の資金調達が行われたためです。

物流では、极兔速递(J&T Express)がセコイアチャイナ、ヒルハウスキャピタルなどから18億米ドル(約117億元/約1,980億円)の戦略投資を受けました。なお、今回のラウンドで同社はユニコーン企業になりました。

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极兔速递(J&T Express)の創業者は元OPPOインドネシアのCEOで、本拠地をインドネシアに置く配送業者です。中国には2020年3月に上陸したばかりですが、すでに1日あたり2,000万件の宅配を行っているようです。
なお、同社が中国で急成長した理由は、中国ECの利用者数がアリババを超えて1位になった拼多多(Pinduoduo)の商品配送を支えているためのようです。ちなみに、同社のインドネシア本社は米国でのIPOを計画しているようです。

Eコマースでは、生鮮食品EC大手の叮咚买菜(Dingdong Maicai)が7億米ドル(約45.5億元/約770億円)を調達したほか、中古品取引プラットフォームの转转(Zhuanzhuan)が3.9億米ドル(約25.4億元/約431億円)を調達しました。

話を戻して、1月1日からの調達金額累計を業界別に見ると、物流、Eコマース、医療・健康、先進製造の順に多く、上位4業界だけで全体の60.2%を占めています。なお、先週時点では、物流は3位でしたが、上記の极兔速递(J&T Express)による大型資金調達によって1位に躍り出ました。

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3. 都市別 資金調達件数・金額

続いて、都市別の内訳を見ていきましょう。

[都市別 資金調達件数]
今週の83件を都市別に見ると、上海、北京、深圳、杭州の順にランクインし、上位4都市だけで全体の71.1%を占める結果となりました。

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1月1日からの資金調達件数累計の内訳を見てみると、上位4都市の北上深杭(北京、上海、深圳、杭州)だけで66.6%を占めています。
また、先週に引き続き、上位10都市のみで累計投資件数の85%を占めていることから、投資は一部の都市に集中していることがわかります。

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[都市別 調達金額]
公開されているものだけのため、あくまで参考程度にご覧いただきたいのですが、今週は上海、北京、蘇州、杭州の順にランクインしました。なお、上海が圧倒的1位である理由は、上記の极兔速递(J&T Express)と叮咚买菜(Dingdong Maicai)が上海に拠点を置いているためです。

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1月1日からの調達金額累計の内訳を見ると、北京、上海、深圳、長沙に集中していることがわかります。次いで、蘇州、広州、杭州の順に多く、公開金額ではあるものの、ついに蘇州が5位にラインクインしました。

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4. ラウンド別 資金調達件数・金額

ラウンド別に見るとどうなっているのでしょうか。

[ラウンド別 資金調達件数]
今週の83件では、シリーズAが41件で1位、戦略投資が25件で2位になりました。これら上位2つのラウンドだけで全体の79.5%を占めています。

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1月1日からの資金調達件数累計の内訳を見てみると、先週に引き続き、シリーズA、戦略投資、シリーズBの順に多いです。シード/エンジェルラウンドの比率は日に日に上昇しており、アーリーステージの企業による資金調達が活発であることがわかります。

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[ラウンド別 調達金額]
公開情報のみをもとに集計した調達金額をラウンド別に見ると、戦略投資が最も多い155.7億元となり、全体の69.1%を占めています。
次いで、シリーズDが45.5億元で2位となり、全体の20.2%を占め、上位2つのラウンドで全体の89.3%を占める結果となりました。なお、上記の大型資金調達につき、极兔速递(J&T Express)と转转(Zhuanzhuan)は戦略投資で、叮咚买菜(Dingdong Maicai)はシリーズDで大型資金調達を行いました。

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1月1日からの調達金額累計の内訳を見ると、シリーズD、戦略投資、シリーズAの順に多く、上位3ラウンドでの合計は全体の61.4%を占めています。

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5. 今週、新たにユニコーンになった企業

今週は1社が新たにユニコーン企業になり、中国のユニコーン企業数は2021年4月8日時点で284社*になりました。
*ITjuziが公開しているデータのため、その他データベース等がまとめている数値と異なる可能性があります

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[企業概要]
企業名:极兔速递
業界:物流
拠点:上海
設立時期:2015年8月
バリュエーション:78.0億米ドル/507.0億元
主要な投資家:红杉资本中国, 高瓴资本, 博裕资本
企業HP:https://www.jtexpress.com.cn/


6. 今週、資金調達を行った企業リスト

2021年4月2日〜4月8日に資金調達を行った企業は以下の通りです。

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7. 今週末時点での投資件数TOP10の投資家

2021年の投資件数TOP10の投資家は以下の通りとなりました。
※順位の矢印は先週との比較を表しています

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テンセントは今週3件の投資を行い、先週に引き続き1位にランクインしました。今週は、物流、ゲーミング、Eコマースへそれぞれ1件ずつの投資がありました。

セコイアチャイナも先週同様2位にランクインしました。
今週の投資案件は7件となっており、医療・健康、Eコマースへ2件ずつ、物流、法人向けサービス先進製造へそれぞれ1件の投資をしています。なお、今週の投資先のうち、上記の叮咚买菜(Eコマース)、极兔速递(物流)が含まれています。


以上、今週の中国スタートアップ資金調達レポートでした。

今後も毎週レポートしていきたいと思いますので、よかったらスキとフォローをお願いします。


お問い合わせは以下にて受け付けております。
竹内 雄登(Yuto Takeuchi)
Twitter:https://twitter.com/yuto_takeuchi01

注:
・本noteは速報の位置付けとしています
・事実を整理し、定期的に投稿することを目的としていますので、特定企業の分析や各社の投資傾向に関する情報が薄くなることはご了承ください
・本noteにおける中国スタートアップは、中国を拠点とする非上場企業を指します
・投資件数・金額およびその他データは本note投稿時点にITjuzi上で集計できたものを反映していますので、後日ITjuziのデータが修正・削除された場合、Weekly Reportの前後で数値のずれが発生する可能性があります。ずれが発生した場合、遡及して過去分を修正しませんので、ご了承ください



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