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中国スタートアップ 資金調達Weekly Report_2021/03/05-2021/03/11_10w

こんにちは!
中国大好きな竹内雄登です。
現在は、SPEEDAというデータベース向けに中国産業調査をしていますが、
前職は、ソフトバンクでベンチャー投資などのM&A業務をしていました。

今年の2021年から、ITjuziというデータベースの情報をもとに、
Weeklyで中国スタートアップの資金調達状況について発信
することにしました。
このWeekly Reportでは、主に以下3点についてまとめていきますので、
お時間がない方は気になる箇所だけでも、ぜひご覧ください。

・各週の資金調達案件まとめ
 - 資金調達件数(日別、業界別、都市別、ラウンド別)
 - 投資金額(日別、業界別、都市別、ラウンド別)
 - 資金調達実施企業リスト
・上記資金調達により、新たにユニコーンになった企業
・投資案件数上位10の投資家

では、早速本題に入りたいと思います。

1. 日別 資金調達件数・金額

2021年の第10週目である3月5日〜3月11日における、
日別の資金調達状況を見ていきます。

[資金調達件数]
3月5日〜3月11日の週は、合計104件となりました。
なお、1月1日からの資金調達件数の累計は958件となりました。

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[調達金額]
非公開や曖昧な情報を除き、公開されている情報のみを集計したため、
あくまで参考としてのデータですが、3月5日〜3月11日の週では、
公開金額合計で141.2億元の資金調達
が行われました。
また、1月1日からの調達金額の累計は1,476.4億元となりました。
なお、今週の104件のうち70件が金額非公開のため、単純計算すると、今週の調達金額は集計できた金額の約3倍の規模になると考えられます。

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2. 業界別 資金調達件数・金額

では、業界別に見ると、どうなっているのでしょうか。

[業界別 資金調達件数]
今週の104件の内訳を見ていきます。
業界別に見ると、医療・健康の資金調達件数が最も多く、
合計で24件
となりました。
次いで、法人向けサービス、先進製造、スマートハードウェアが上位に入り、上位4業界だけで今週の件数全体のうち68.3%を占める結果になりました。

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1月1日からの資金調達件数累計の内訳を見てみると、
上位4業界の医療・健康、法人向けサービス、先進製造、スマートハードウェアだけで、全体の58.8%を占めています。

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[業界別 調達金額]
公開されているものだけのため、あくまで参考程度のデータですが、
今週は不動産、医療・健康、金融、法人向けサービスの順に多く、
上位4業界で全体の75.8%
を占めています。

不動産が1位にランクインした理由は、京东产发がシリーズAで約45.5億元を調達したためです。なお、同社は今回のラウンドでユニコーン企業となりました。詳細は以下5をご参照ください。

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1月1日からの調達金額累計を業界別に見ると、
物流、Eコマース、医療・健康、先進製造の順に多く、
上位4業界だけで全体の61.8%
を占めています。

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3. 都市別 資金調達件数・金額

続いて、都市別の内訳を見ていきましょう。

[都市別 資金調達件数]
今週の104件を都市別に見ると、
上海、北京、深圳、杭州の順にランクインしました。
今週は上位4都市だけで全体の65.4%を占める結果となりました。

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1月1日からの資金調達件数累計の内訳を見てみると、
上位4都市の北上深杭(北京、上海、深圳、杭州)だけで66.4%を占めています。
今週も5位以下には広州、蘇州、南京、四川、武漢、山東が安定的にランクインしています。

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[都市別 調達金額]
公開されているものだけのため、あくまで参考程度にご覧いただきたいのですが、今週は北京、上海、深圳、杭州の順にランクインしました。

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1月1日からの調達金額累計の内訳を見ると、
北京、上海、長沙、深圳に集中していることがわかります。
次いで、広州と杭州が多く、いわゆる北上深杭(北京、上海、深圳、杭州)や北上広深(北京、上海、広州、深圳)への偏りが見られます。

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そんな中、長沙が上位にランクインしている理由は、共同購入ECの兴盛优选(興盛優選)による大型資金調達が行われたためです。

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詳細は以下noteにまとめていますので、ご関心があればぜひご覧ください。


4. ラウンド別 資金調達件数・金額

ラウンド別に見るとどうなっているのでしょうか。

[ラウンド別 資金調達件数]
今週の104件では、シリーズAが39件で1位、戦略投資が22件で2位になりました。
これら上位2つのラウンドだけで全体の58.7%を占めています。

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1月1日からの資金調達件数累計の内訳を見てみると、
先週に引き続き、シリーズA、戦略投資、シリーズBの順に多く、
アーリーステージの企業による資金調達が活発
であることがわかります。

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[ラウンド別 調達金額]
公開情報のみをもとに集計した調達金額をラウンド別に見ると、
シリーズAが最も多い56.1億元となり、全体の39.7%を占めています。
次いで、シリーズBが35.3億元で2位となり、全体の25.0%を占める形となりました。
上位2つのラウンドで全体の64.7%を占める結果となりました。

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1月1日からの調達金額累計の内訳を見ると、
シリーズA、シリーズD、シリーズBの順に多く、
上位3ラウンドでの合計は全体の61.5%
を占めています。

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5. 今週、新たにユニコーンになった企業

今週は1社が新たにユニコーン企業になり、
中国のユニコーン企業数は2021年3月11日時点で280社
*になりました。
*ITjuziが公開しているデータのため、その他データベース等がまとめている数値と異なる可能性があります

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[企業概要]
企業名:京东产发
業界:不動産
拠点:北京
設立時期:2015年1月
バリュエーション:28.0億米ドル/182.0億元
主要な投資家:华平投资(Warburg Pincus), 高瓴资本(Hillhouse Capital)
企業HP:N/A

京东产发は、社名から分かる通り、京東(JD.com)のグループ会社で、インフラの資産管理や複合サービスを提供しています。

また、同社は不動産ファンドの運営をしています。物流関連の不動産を対象とした2つのファンドが成功したため、2020年第4四半期には、シンガポールの政府系ファンドであるGICやアラブ首長国連邦の政府系投資会社であるムバダラなどから資金調達し、30億元のファンドを立ち上げています。現時点での運用総額は190億元を超えているとのことです。

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今回、シリーズAで华平投资(Warburg Pincus)、高瓴资本(Hillhouse Capital)から7億米ドル(約45.5億元)を調達し、ユニコーン企業になりました。

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京東は、华平投资(Warburg Pincus)、高瓴资本(Hillhouse Capital)が株主になることで、彼らの業界知識とリソースを活用することが期待でき、京东产发のインフラの開発・運営における地位を強化していきたいと述べています。


6. 今週、資金調達を行った企業リスト

2021年3月5日〜3月11日に資金調達を行った企業は以下の通りです。

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7. 今週末時点での投資件数TOP10の投資家

2021年の投資件数TOP10の投資家は以下の通りとなりました。
※順位の矢印は先週との比較を表しています

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テンセントは今週6件の投資を行い、
先週に引き続き1位にランクイン
しました。
今週の投資先の業界は、法人向けサービスが最も多く、3件でした。
その他、不動産、教育、医療・健康へ1件ずつの投資がありました。

セコイアチャイナも先週同様2位にランクインしました。
今週の投資案件は4件となっており、法人向けサービス、医療・健康、先進製造、不動産へ投資しています。

なお、今週はテンセントとセコイアチャイナが共同で居理买房网へ投資しています。

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同社は、住宅購入の支援サービスを行っている企業です。
具体的には、サイトでの住宅検索、内見時の無償送迎、コンサルタントへの相談などのサービスを提供しています。

36Krによると、同社は現時点で37都市をカバーしており、累計で300万世帯以上のユーザーへサービス提供した実績があり、2020年12月単月のGMVは50億元(約800億円)を超えたとのことです。

https://36kr.com/p/1131710378493314


以上、今週の中国スタートアップ資金調達レポートでした。


今後も毎週レポートしていきたいと思いますので、よかったらスキとフォローをお願いします。

お問い合わせは以下にて受け付けております。
竹内 雄登(Yuto Takeuchi)
Twitter:https://twitter.com/yuto_takeuchi01

注:
・事実を整理し、定期的に投稿することを目的としていますので、投資傾向や特定企業の分析が薄くなることはご了承ください
・本noteにおける中国スタートアップは、中国を拠点とする非上場企業を指します
・本noteは速報の位置付けとしています
・投資件数・金額およびその他データは本note投稿時点にITjuzi上で集計できたものを反映していますので、後日ITjuziのデータが修正・削除された場合、Weekly Reportの前後で数値のずれが発生する可能性があります。ずれが発生した場合、遡及して過去分を修正しませんので、ご了承ください

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