見出し画像

中国スタートアップ 資金調達Weekly Report_2021/04/09-2021/04/15_15w

こんにちは!
中国大好きな竹内雄登です。
現在は、SPEEDAというデータベース向けに中国産業調査をしていますが、前職は、ソフトバンクでベンチャー投資などのM&A業務をしていました。

今年の2021年から、ITjuziというデータベースの情報をもとに、Weeklyで中国スタートアップの資金調達状況について発信することにしました。
このWeekly Reportでは、主に以下3点についてまとめていきますので、お時間がない方は気になる箇所だけでも、ぜひご覧ください。

・各週の資金調達案件まとめ
 - 資金調達件数(日別、業界別、都市別、ラウンド別)
 - 投資金額(日別、業界別、都市別、ラウンド別)
 - 資金調達実施企業リスト
・上記資金調達により、新たにユニコーンになった企業
・投資案件数上位10の投資家

では、早速本題に入りたいと思います。

1. 日別 資金調達件数・金額

2021年の第15週目である4月9日〜4月15日における、日別の資金調達状況を見ていきます。

[資金調達件数]
4月9日〜4月15日の週は、合計95件となりました。
なお、1月1日からの資金調達件数の累計は1,496件となりました。

画像1

[調達金額]
非公開や曖昧な情報を除き、公開されている情報のみを集計したため、あくまで参考としてのデータですが、4月9日〜4月15日の週では、公開金額合計で131.8億元の資金調達が行われました。
また、1月1日からの調達金額の累計は2,420.8億元となりました。なお、今週の95件のうち60件が金額非公開のため、単純計算すると、今週の調達金額は集計できた金額の約3倍の規模になると考えられます。

画像2


2. 業界別 資金調達件数・金額

では、業界別に見ると、どうなっているのでしょうか。

[業界別 資金調達件数]
今週の95件の内訳を見ていきます。
業界別に見ると、法人向けサービスの資金調達件数が最も多く、合計19件となりました。次いで、医療・健康、スマートハードウェア、Eコマースが上位に入り、上位4業界だけで今週の件数全体のうち58.9%を占める結果になりました。

画像3

1月1日からの資金調達件数累計の内訳を見てみると、上位4業界の医療・健康、法人向けサービス、先進製造、ローカルライフサービスだけで、全体の57.2%を占めています。

画像4

[業界別 調達金額]
公開されているものだけのため、あくまで参考程度のデータですが、今週は自動車・交通、医療・健康、スポーツ関連、ローカルライフサービスの順に多く、上位4業界で全体の69.5%を占めています。

画像5

1月1日からの調達金額累計を業界別に見ると、物流、医療・健康、Eコマース、自動車・交通の順に多く、上位4業界だけで全体の59.9%を占めています。なお、先週時点では、自動車・交通は5位でしたが、今週の資金調達によって4位にランクインしました。

画像6


3. 都市別 資金調達件数・金額

続いて、都市別の内訳を見ていきましょう。

[都市別 資金調達件数]
今週の95件を都市別に見ると、北京、上海、深圳、杭州の順にランクインし、上位4都市だけで全体の71.6%を占める結果となりました。

画像7

1月1日からの資金調達件数累計の内訳を見てみると、上位4都市の北上深杭(北京、上海、深圳、杭州)だけで67.0%を占めています。
また、先週に引き続き、上位10都市のみで累計投資件数の85%を占めていることから、投資は一部の都市に集中していることがわかります。

画像8

[都市別 調達金額]
公開されているものだけのため、あくまで参考程度にご覧いただきたいのですが、今週は上海、北京、四川、深圳の順にランクインしました。

画像9

1月1日からの調達金額累計の内訳を見ると、北京、上海、深圳、長沙に集中していることがわかります。次いで、先週に引き続き5位以降は蘇州、広州、杭州が競り合っています。

画像10


4. ラウンド別 資金調達件数・金額

ラウンド別に見るとどうなっているのでしょうか。

[ラウンド別 資金調達件数]
今週の95件では、シリーズAが39件で1位、戦略投資が23件で2位になりました。これら上位2つのラウンドだけで全体の65.3%を占めています。

画像11

1月1日からの資金調達件数累計の内訳を見てみると、先週に引き続き、シリーズA、戦略投資、シリーズBの順に多いです。シード/エンジェルラウンドの比率は日に日に上昇しており、総じてアーリーステージの企業による資金調達が活発であることがわかります。

画像12

[ラウンド別 調達金額]
公開情報のみをもとに集計した調達金額をラウンド別に見ると、シリーズBが最も多い49.7億元となり、全体の37.7%を占めています。
次いで、戦略投資が43.7億元で2位となり、全体の33.2%を占め、上位2つのラウンドで全体の70.8%を占める結果となりました。

画像13

1月1日からの調達金額累計の内訳を見ると、戦略投資、シリーズD、シリーズAの順に多く、上位3ラウンドでの合計は全体の60.4%を占めています。

画像14


5. 今週、新たにユニコーンになった企業

今週は3社が新たにユニコーン企業になり、中国のユニコーン企業数は2021年4月15日時点で286社*になりました。
*ITjuziが公開しているデータのため、その他データベース等がまとめている数値と異なる可能性があります

画像15

[1社目]
企業名:Fiture沸彻科技

業界:スポーツ関連
拠点:成都(四川)
設立時期:2019年3月
バリュエーション:15.0億米ドル/97.5億元
主要な投資家:Z1资本, 红杉资本中国, 君联资本, 金沙江创投, 贝塔斯曼亚洲投资基金, 腾讯投资, DST Global, 中信产业基金, Coatue Management, 全明星投资All-Stars Investment, 黑蚁资本, 高鹄资本, 蔚来资本, C资本
企業HP:http://www.fiture.com/

スクリーンショット 2021-04-16 22.01.45

スクリーンショット 2021-04-16 22.02.02

同社は家庭用のフィットネス向けミラーおよびコンテンツを提供しています。同社提供のアプリと連携して、スマートミラーがコンテンツを映すだけではなく、内臓されたAIカメラと自社開発のモーショントラッキングシステムによってフィットネスをより科学的かつ効果的なものにすることを強みとしているとのことです。ユーザーの身体データや運動データに基づいて、パーソナライズされたプログラムを提供する取り組みをしているようです。

スクリーンショット 2021-04-16 22.02.21

また、フィットネスコンテンツにおける音楽を自社で制作するために、元Sony Music Chinaのゼネラルマネージャーを採用しています。加えて、コンテンツ制作用のスタジオにも投資を行っており、良質なコンテンツ開発に力を入れています。

同社の株主にはセコイアチャイナ、テンセント、レジェンドキャピタル、 CITIC PEなどの名だたる投資家がいますが、セコイアチャイナはエンジェルラウンドから投資をし続けています。成長市場×AIという文脈から、個人的には次のラウンドあたりでソフトバンクビジョンファンドが投資するのでは?と思っています。

[2社目]
企業名:瑞尔齿科

業界:医療·健康
拠点:北京
設立時期:1999年3月
バリュエーション:12.0億米ドル/78.0億元
主要な投資家:Ward Ferry, 未来资产集团, 淡马锡Temasek, 汉能投资, 奥博资本OrbiMed, 兴业银行, 高盛(中国), 高瓴资本, KPCB凯鹏华盈中国, 启明创投, 普思资本, 新天域资本, 才金资本
企業HP:http://www.arrailgroup.com/

画像22

スクリーンショット 2021-04-16 22.35.17

同社は、中国の中産階級と外国人にハイエンドな歯科・口腔衛生サービスを提供しています。具体的には、北京、上海、深圳、広州、天津、杭州、アモイなどに55の直営のクリニックを展開しており、1999年の創業以来、300万人以上にサービス提供しています。また、国内外の保険会社と提携し、保険の直接支払いサービスを提供しています。

[3社目]
企業名:趣链科技

業界:ブロックチェーン
拠点:杭州
設立時期:2016年7月
バリュエーション:10.0億米ドル/65.0億元
主要な投資家:银宏基金, 易方达基金, 龚虹嘉, 协创资本, 理想国际, 景喆投资, 汇仁文曲投资, 永滈投资, 新湖中宝-新湖控股, 国投创业, 树兰医疗
企業HP:http://www.hyperchain.cn/

スクリーンショット 2021-04-16 22.49.16

同社は浙江大学系スタートアップで、コンソーシアム型ブロックチェーンの開発を行っており、主に金融、不動産、医療・健康、エネルギー、行政、司法などにサービス・技術提供しています。国内外の錚々たる組織・企業が同社の顧客となっており、中国のブロックチェーン動向を追う際には同社を確認した方が良いです。

スクリーンショット 2021-04-16 22.47.23


6. 今週、資金調達を行った企業リスト

2021年4月9日〜4月15日に資金調達を行った企業は以下の通りです。

画像16


7. 今週末時点での投資件数TOP10の投資家

2021年の投資件数TOP10の投資家は以下の通りとなりました。
※順位の矢印は先週との比較を表しています

画像17

テンセントは今週5件の投資を行い、先週に引き続き1位にランクインしました。今週は、ゲーミング、法人向けサービスに2件ずつ、スポーツ関連に1件の投資がありました。

セコイアチャイナも先週同様2位にランクインしました。
今週の投資案件は5件となっており、スマートハードウェアへ2件、スポーツ関連、医療・健康、ローカルライフサービスへそれぞれ1件の投資をしています。

なお、テンセントとセコイアチャイナはそれぞれ上記スポーツ関連のFiture沸彻科技へ投資しています。


以上、今週の中国スタートアップ資金調達レポートでした。

今後も毎週レポートしていきたいと思いますので、よかったらスキとフォローをお願いします。


お問い合わせは以下にて受け付けております。
竹内 雄登(Yuto Takeuchi)
Twitter:https://twitter.com/yuto_takeuchi01

注:
・本noteは速報の位置付けとしています
・事実を整理し、定期的に投稿することを目的としていますので、特定企業の分析や各社の投資傾向に関する情報が薄くなることはご了承ください
・本noteにおける中国スタートアップは、中国を拠点とする非上場企業を指します
・投資件数・金額およびその他データは本note投稿時点にITjuzi上で集計できたものを反映していますので、後日ITjuziのデータが修正・削除された場合、Weekly Reportの前後で数値のずれが発生する可能性があります。ずれが発生した場合、遡及して過去分を修正しませんので、ご了承ください


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?