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【ゆるっと記憶アーカイブ1】映写室越しの景色

何か募集できるカテゴリがないかなぁと、なんとなく探していたら「映画館の思い出」というお題を見つけて、記憶を引き出してみました。
おそらく、私の映画館への思い出は、ほかの人と少し違うものだと思います。今は映画館が大好きですが、映画館とのファーストコンタクトはちょっと苦い感じです。

🎞映画館との関わり

実家が自営で清掃業をしていて、私が幼少のころは映画館の定期清掃をしていました。
日ごろはパートのおばちゃんでまかなっていたんですが、年末年始は、どうしても両親が対応しなければなりません。

🎞ちょっと違う境遇

それこそ、紅白歌合戦がテレビで流れている時間帯、小学校低学年の私を家に一人でおいておけないので、一緒に映画館に連れていかれました。
かといって真っ暗で客もまばらな館内に一人ほっておくわけにもいかなかったんでしょう。
私は、映写室に連れていかれ、そこから映画を見ながら両親の仕事が終わるのを待ちました。その当時スクリーンには、たいがいゴジラか寅さんが映ってました。

🎞共働き両親

映写室のガラスに映った、小さなスクリーンとその先の大きなスクリーンで映画を見ながら、年末まで働きづめでさらに31日まで狩り出されて機嫌の悪い母と、それにあおりを受けてイライラする父を待ちます。そんな状況で「ジュースが飲みたい」なんて言えるわけもなく、ただただ最後まで大小のスクリーンを眺めていました。

🎞元日からマイナススタート

そこから家に帰ると、紅白歌合戦で、小林幸子さんがすごい衣装で空を飛んでるぐらいの時間になります。
父はどっかと居間に座りテレビを見て、母は座る間もなく年越しそばの準備に入ります。「私ばっかり」と愚痴ろうものなら父の機嫌が悪くなるので飲み込んで、母はその不機嫌を元日に持ち込むという、最悪のパターンです。

🎞手伝い

私が小学生の高学年になると、ゴジラや寅さんに興味がないので、清掃を手伝ってました。
映画館の椅子を片っ端から上げていき、ほうきやモップをかけやすくすること。そして当時は鑑賞マナーも悪く、カップのジュースを中身があってもなくても椅子の足元に置いていく輩が多かったので、入ったままのものは中身を捨てて、空のカップを足で踏んで平たくすること。これが私に課せられたミッションでした。

🎞年末恒例「空気の読みおさめ」

両親がケンカにならないか、不機嫌に追い打ちをかけるような失態を自分がしないかで必死だったからか、よく頑張ったとか、言われたのかもしれませんが、褒められた記憶もない・・・。
当時は、自営業で近くに頼る人もなく必死だったんだろうと、親になって初めてわかる切羽詰まった感じを思うと、今となっては懐かしくありがたく思います。
古い映画館だったけど、親が掃除したトイレはとてもきれいに仕上げられていて、一人っ子だった私にとって気遣いの絶えない両親でしたが、そこだけはいまだに誇りです。

🎞映画館と私

大人になって、日々しんどくなったり息詰まると、たいがい一人で映画館に行きます。映画を立て続けに2本みるときは、本気で自分がしんどい時です。でも私にとって映画館は完全に、感情をデトックスできる貴重な場所です。泣いて笑ってビビッて没頭する・・・。
今はもう、フィルムじゃなくデータなんでしょうね。かつてのようにおっきいフィルムが回ってることもないだろうし、もう映写室で映画を見るなんて貴重な体験はできないんだろうな。もう一回、ガラスに映るちっさいスクリーンを見てみたいな。今ならイヤイヤじゃなくて楽しんで見ることができそうです。

#映画館の思い出


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