【連載】家族会議『気持ちのぶつかり合いがしたい』
「親戚で一番幸せな家族になろうよ」のひと言から始まったわが家の家族会議。2020年1月6日から約4ヶ月に渡って行った会議の様子を、録音記録をもとに書き記しています。
前回の記事はこちら。
家族会議17回目#8|気持ちのぶつかり合いがしたい
――この日の家族会議は、振り返るとひとつのターニングポイントだったと思う。
わたしの言葉に反発があるはずなのに、心にもない同意をする父に、「反論でもなんでも、怒鳴ってもいいから気持ちを出し切って欲しい」と、わたしの本音を伝えている。
母:
(泉は)自分の気持ちをちゃんと言えるんだ‥‥。
わたし:
気は遣うよ。それなりに。
お姉ちゃんに言う時だって気を遣うけど。まあお姉ちゃんも反発してくるからこそ、言えるっていう部分もあるかなと。
母:
さらにその次に行けるみたいな。
わたし:
そうだね。その先に行けるって感じかな。
だって、多分わかってないもんお父さん。「わかった。その通りだ」って言うけど、何も腹落ちはしてないなって。それだと言い損っていうか。
こんな嫌なのに、何回も言わなきゃいけなくなっちゃう。それの方がもっと嫌っていうかさ。
――自分の父の問題点を指摘するなんて、子供としてやりたいことではない。できればスルーしたい。
だけど変わろうと。
そのために始まったのが家族会議だから。
父も同意して参加しているから。
だとしたら、この場で偽善的なやり取りをしても意味がないから言うのだ。
父:
泉ってどこから生まれてきたの?
わたし:
どこから生まれてきたんだろう?笑
父:
発想。
わたし:
発想ね。笑
父:
発想っていうか考え方。
わたし:
考え方は、もうこれ経験だよね。自分の経験かなって感じ。
父:
ブライダル?
――わたしは長年、ブライダルの仕事をしていた。
わたし:
ブライダルっていうか、まあブライダルであり、プライベートでありって感じかな?
母:
今まで生きてきた。
わたし:
いろいろ生きてきた中での。
父:
有意義な生活を送ってんだ。
わたし:
そうだね。
父:
お父さんは無意味な生活を送ってたのか?
わたし:
あとしいて言うなら彼氏かな。今の彼氏とはヒートアップして議論したりはするっていうか。向こうは絶対譲らないから負けるけど。
母:
無理やり押さえつけられる感じではないという。
わたし:
押さえつけることはしないし、わたしも負けないし、最後まで言い切ってる。それで後日振り返って、自分がおかしかったなって思ったら、それが半年後とか一年後とかのこともあるけど、「あの時こう言われたの、そうだったかも」みたいになったときに言う。
父:
半年後か
わたし:
うん、だって、その時に思ってないこと言えない。納得も理解もしてないことを、わかったって言えない。
母:
自分のことも誤魔化さないんだね。自分で自分のことを誤魔化さないっていうかさ。
父:
で、あともう一つ言いたいのはね、そういうふうな議論を望んでいるとは全然知らなくて。今までは、(ふたりに)言われたことが悪いところだろうと。しからば、これを変えるにはどうしたらいいの?っていうことだけを考えている。
だから話はよく聞いてる。目閉じてても。
――父は話し合い中、目を閉じてだまって聞いていることが多い。そしてそのまま、いびきをかき始めることも多々あるけど‥‥。
父:
で、布団に入った時に、お母さんがああいうことを言った。泉がこういうことを言った。それに対して俺はどうあるべきかと。いうことばっかりだよな、考えてたのは。
わたし:
うん。だから、すごいコントロール的なんだよね。その場では発言しないで、後で自分の中だけで整理して。整理したのを言うみたいなパターンじゃん。
でも、その整理されている間に感情とかが全部、排除されてさ。結論だけ出てくるみたいな感じなわけよ。お父さんって。
父:
うん、そうだと思うわ。
わたし:
だから伝わってこないだよね。気持ちが。
父:
ああ、うん。
わたし:
聞きたいのは、結論より気持ちのほう。だからその場で怒りとか反論とかあったら、それがその瞬間に湧いてきた気持ちで、そのほうがリアルなわけじゃん?
それ出しちゃうと喧嘩になるから抑えようとしてきてるとは思うんだけど。でもこの場は、この場ではむしろ本音。
その瞬間に湧いてきたもののほうが、特にお父さんの場合はリアルだと思うから。
父:
本当に湧いてきたことをリアルに言ってったら、うちの親父になっちゃうぞ多分。
――わたしが生まれたときにはもう他界していた祖父は、すぐに怒鳴る人だったらしい。
わたし:
うんでも大丈夫。負けないから。
父:
怒鳴り散らして
わたし:
怒鳴り散らされると、あれだけど。笑
でもいいよ。怒鳴り散らしたかったら。怒鳴り散らしたり、泣きわめいたりしてもいいよ。なんか多分、そっちだと思う。お父さんやったほうがいいのは。
今まで怒鳴らないでとか言われてきてたから、お父さんの中で今完全に言われてることは矛盾だと思うんだけど。でもね、そうやって抑えることによって、なんだろう‥‥気持ちのぶつかり合いができないというか。そういう感じかな?
父:
気持ちのぶつかり合いは、現役時代はやってないしな。
わたし:
わたし多分、仕事でもめっちゃ気持ちのぶつかり合いはしてきたと思う。
父:
それやったら、とてもじゃないけど‥‥。まあ、泉はそれでよかったのかもしれんけど。お父さんがそれやってたんじゃ、とてもじゃないけど
――確かにブライダル業だからこそ、それが出来たとも言えるし、それが必要だったとも言える。
だけど本当は、業種は関係ないと思う。
一緒に働く人と、どんな付き合いをしたいか。だと思う。
偽善的な付き合いにもメリットはあると思うし、だれかれ構わず気持ちをぶつければいいというものでもない。
だけど家族の間で、そんな偽善はいらない。
仮面家族から抜け出したくて家族会議をやっているのだから。
- 今日はここまで -
父にとっては、偽善的で表面的な家族だったころのほうが、上手くいっていた感覚なのだろう。
そのときは、なんでも父の思い通りになっていたからだ。
だから母や姉やわたしが、本音を言いだしてから崩れたと、そう思っていると思う。
だけどわたしたちにとっては逆だった。
今までのほうが、機能不全家族だった。
だから姉はうつになったのだし、わたしは親と距離をとった。
こうして問題が起きてもなお、父は「あのころ」への未練がある。
この日の家族会議で、なにかは父に響いた感覚があったけど、4年経った今、父は結局変わっていない。
<次回に続く>
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