見出し画像

【連載】家族会議『"論点ずらし"の父と通じるポイント』

「親戚で一番幸せな家族になろうよ」のひと言から始まったわが家の家族会議。その様子を、録音記録をもとに書き記しています。

前回の記事はこちら。

家族会議4日目#8|"論点ずらし"の父と通じるポイント

:ところで何だっけ?今日、話がいろんなとこ飛び歩いてるんだけど。


――家族会議4日目を少しずつ書いて、これで8記事目になる。毎度のことながら、話しが飛びまくってテーマがズレていくのがわが家だ。

話しが飛び歩くのは主に父の「論点ずらし」のせいなのだが。


わたし:今日聞きたかったのは、少年時代の和義くん(父)になんて声をかけてあげたいと思う?っていう話。

:もう本当頑張ったな。少年時代、中学校までは。高校はがんばってない。


――「なんて声をかけてあげたい?」という質問に対し、過去の自分を振り返った感想を言う。こうしてちょっとずつ論点をずらすのが父の得意技である。


わたし:でも就職してからまた頑張ったもんね。

:えらいえらい!

:就職してからな。なんで高校のとき、あれほどまでに変われるんだろうと思うくらい勉強しなかった。


――父は高校に入ってから成績が落ちた自分を、よほど認められないらしい。「勉強しなかったから成績が落ちた」と、何度も言い訳をするのだ。

わたしたちが、父の高校時代の成績など知る由もない。たとえ成績表を見たとしても、父が高校の時に成績が悪かったことなど気にもとめない。

でも父にとっては、高校時代の成績が人生の汚点であり、あってはならないことだったのだろう。


わたし:まぁでも、中学時代まではがんばって生徒会長までしたんだから、頭良かったんでしょ!

:生徒会長、頭関係あるのかな?

わたし:あるんじゃない?だって頭いい人だったよ。みんな。もちろん頭いいイコール生徒会長ってわけじゃないと思うけど。
だからすごいんだね、お父さん。

:そうだ。成績+人望だよ!

:すごいじゃない


――父のご機嫌取りも、お手のものである。笑


わたし:だからね、おばあちゃんに褒めて欲しかったんだよね。

:お兄さんは生徒会長したの?


――母は根掘り葉掘り聞きたがるタイプで、これもまた話が多方面に飛んでいく原因である。

ちなみに父は、この質問に対しこう答えた。


:兄貴は(生徒会長)やってないんじゃない。だから高校では俺より成績良いよ。俺は工業高校に真ん中より上で入れたけど、卒業するときは真ん中より下だったから、いかに勉強してないか。


――父の説明がわかりづらいが、こう言いたい。

「兄は生徒会長もやってないし、高校に入るときもギリギリだった。だから高校入ってから焦って勉強したんだろう。結果的に、卒業時の成績は『あえて勉強しなかった俺』よりも良かったんだ。」と。

兄を思いっきりディスっているのである。

よく考えれば、兄より成績が悪かったことが認められなくて、言い訳をするのかもしれない…。


話を戻そう。

そもそも今日の家族会議では、インナーチャイルドを癒すためのワークをしたかったのだ。


わたし:褒めてあげて!お父さん。1日1回、和義少年のところに会いに行ってさ、「お前すごいよ」って「よくやってるよ」って。「誰も褒めてくれもしないのにさぁ」って。

代わりにおばあちゃんに言ってあげるのもいいんじゃない?
「俺がお袋に言ってあげるからね」って、「俺が言っておくから大丈夫だよ」って。

:小さい時は言えなかったから、すごかったんだよってことを、今大人になったお父さんが、おばあちゃんに…?

わたし:っていうより、そこに行くんだよ。タイムスリップしてそこに行くの。そこで何も言えずにただ1人で頑張ってる和義少年に、お父さんが会いに行って、「代わりに言ってあげるよ」って言うってこと。
で、その当時の和義少年の「気持ちを受け止めてあげるよ」って。

褒めてあげるのもいいし、一緒に怒ってあげてもいいし。

:そっか。おばあちゃんのひどさを一緒に怒ってくれるんだってよ。お父さん!


――母のひと言で、父の中にふつふつと怒りがこみ上げるのがわかる。父が母親を崇拝していることをわかっているのに、「母親はひどい人だった」と決めつけたような言い方をしてしまう。


わたし:おばあちゃんの「ひどさを」ってお母さんが言っちゃうと、お父さんは嫌な気持ちになると思う。

:ごめんごめん。取り消して。


――母は慌てて謝った。


:ひどいかどうか、わかんねんだよ。俺

わたし:おばあちゃんがひどいっていうよりは、お父さんが傷ついていたっていうこと。

:傷ついたことをおばあちゃんに言って、あげるってこと?

わたし:そう。「寂しがってるよ」って、「もっと褒めてほしがってるよ」って言ってあげるみたいな。


――ここで重要なのは、本人が感じている気持ちだ。祖母がどうだったかなどは想像でしかないが、本人の気持ちだけは「事実」である。


:ひどいってのは和義少年側に立ったらそういう言葉がでてきたの。本当におばあちゃんがひどいとか言ってるわけではないのよ。

:そうですか。

わたし:和義少年も多分、ひどいってことは受け入れられない気がする。その時点で、すごく遠慮してるわけだから。「そんなことないもん」って言うと思う。
「お母さんのこと悪く言わないで」ってなっちゃう。かな。

:そっか、ごめんごめん。

わたし:だからお父さんが一番、気持ちわかってあげられるよね。どんな言葉をかけたら、安心したり、ほっとしたりするか。

:わたしは行かないからからね。お父さん。大丈夫!邪魔しないから。


――母は心配性の世話焼きだ。「わたしは行かないからね」とここで宣言していなかったら、行って横から口を出す姿が想像できる。笑


:やっぱり思うにあれだね。親父とお袋比べたら、何々して欲しかったっていうのは、お袋側にいっぱい出てくるんだ。それだけお袋との間が濃かったのかな。親父との間は、薄かったんだろうな。

濃いからこそそういうことが言えるのであって、だからやっぱり親父とお袋どっち守るかっていったら、お袋の方守るもんな。


――父はこのあと、特攻隊の人たちが最後に残した言葉も、みんな母親に向けてのものであって、その気持ちがわかるのだと話した。

死ぬ間際の言葉なのだから真実なのだと、それが男の本音なのだと言いたいのだろう。

しかしわたしが、「幼少期の父の気持ちを思い出して声をかけてあげて」と何度話を戻しても、「お袋に思いをはせる」方向に論点をずらすのだった。

父が不機嫌になるのを阻止できたのはよかったが、わたしの問いは無視されたままだ。父はなかなかに手強い人である。


- 今日はここまで -


論点ずらし…。検索してみたら、ひろゆき氏の記事がヒットした。

「誰が見ても明らかな論点が1つだけある」というのは「思い込み(バイアス)」なんですよね。

DIAMOND online『「論点をズラして話す人」のたった1つの特徴』

AさんとBさんそれぞれに論点があって、それが微妙にズレている。また「話せば理論が通じる」というのも思い込みによる理想だと。


確かにそうだ。父とわたしたちとでは、まるで見えている世界が違うかのように、思考回路も価値観もズレまくっている。話しても理論は通じない。

だけどときどき、通じるポイントがある。それは、奥底の気持ちにアクセスできたときだと感じている。すぐに遮断されてしまうけど。

それでもわたしたちは、どうしても「話せば理論が通じる」と思い込みたいのだ。

<次回に続く>


これまでの家族会議記事はマガジンにまとめています。お時間あればぜひ、わが家の会議をのぞきに来てください!

この記事が参加している募集

#これからの家族のかたち

11,355件

よろしければサポートお願いします! いただいたサポートはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!