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【連載】家族会議『実家のことと親のことは言われたくない編』

「親戚で一番幸せな家族になろうよ」のひと言から始まったわが家の家族会議。その録音記録をもとに連載で書き記しています。

前回の記事はこちら。

家族会議2日目#4|実家のことと親のことは言われたくない

実家の習慣の違いについて、父から「バカにされたような感じがしていた」という母。それを聞いてみるみる不機嫌になった父だったけど、アイスブレイクを挟んで調子を取り戻していったのだった。

そのまま父は、自分の幼少期の話をはじめた。

母親がご近所さんの家に行くとき、父はよく一緒に連れて行かれたという。そこは裕福な家庭で、家には父と同い年の女の子がいた。

:あそこちょっと金持ちで、文字とか勉強するやつがあって、小学校に入る前からその子はできてたわけ。俺はそういうのあることすら知らなかったから。字もそんな読めんし、足し算なんて出来やせんし、行くのやだったんだよ。

:お袋も嫌だから俺を連れてったのかな、とにかく連れていかれて。その子のお袋さんによく「あら、そこもまだできてないの?」なーんて言われて「くぅーーー」って。

わたし:それはくぅーだね(笑)

:だからそんなの「そのうちわかるからいいや」ってなって。「ほっときゃいい」ってのはそっから生まれてんだな。俺の頭の中では。

わたし:ん?ほっときゃいいって自分のことを?あ、そういう人たちをほっときゃいいってこと?

:違う。ほっときゃそのうちわかるようになるから。

:自分の子供たちのことをでしょ。

わたし:あー・・・。なるほどね。

:自分が出来てないし、で、学校入ってできるようになったし、それでいいじゃんって。

わたし:うん・・・


わたしの心を、みるみるうちにどす黒いモヤが覆いつくした。
放っておいても子供は育つって?そんな考えだって?
そんな寛容さは皆無だったくせに。

過去にどれだけ姉を矯正しようとしてきたか。
それで姉はうつにまでなっているというのに!
それをまるで、なかったことのように…。


:だけどあんときは嫌だったけど。


うん、嫌だったんでしょ?ものすごく。
ほっときゃできるようになるなんて強がっても、結局そう思えなかったんでしょ?悔しくて恥ずかしくてたまらなかったんでしょ?

だから姉を幼い自分と重ねて、「これはこうやるんだ!こうなんだ!」って半狂乱で、気持ちなんか無視して強引に矯正しようとしたんでしょ?

・・・って。こんなこと、父に直接は言えない。
言ったところで、「そんなことした覚えはない」と言われるか、怒りだして話し合いができなくなるのがオチだから。

父のデリケートな部分を刺激しないように、慎重に、慎重に…。
言いたいことはタイミングを見計らう必要がある。


わたし:それは嫌だよね、誰だって比較されたりするのはね。


大人のわたしは共感してあげたのだった。


:ちょっと脱線したけどなんだっけ?

わたし:実家の習慣の違いってことだよね。

:言い方なのかな。私的には嫌な感じを受けたんだけど。

:うん、あのね、デリケートな人なんだよ。ものすごくね。俺は素質持ってんだよ。上から目線のね。そういうデリケートさがなくて、ぼんぼんしゃべるから堪えるんじゃないかな。


共感してあげて満足すれば、自分の悪い点を自ら認めるようなことを言い出す。若干他人事のように言うところが気にはなるけど…。これを逆切れしながら言うときもあるから、今回は比較的冷静である。

父が冷静であることを見計らって、わたしはちょっとした反撃にでてみた。


わたし:うん、そうそう。お父さんは、デリカシーがないんだよね。

:うん、それ誰かからも言われてんな。


場合によっては怒りだして何も耳に届かなくなる所だけど、今は余裕があるらしい。冷静に振り返っている。

このタイミングでもうちょっと責めてみるか…。


わたし:いつも思うのは、デリカシーがない言葉を言うんだけど、なんの悪気もなさそうってこと。だからこっちは余計にくしゃくしゃってなる。
イコール上から目線もつながってると思うし、男と女の違いもあるんだろうなって感じはするけど。


うーん…。父はこれ以上責められると無理そうだ。いや、ほとんど責めてないけど。


わたし:まぁ、デリケートっていうのもほんとそうだよね。お姉ちゃんもデリケートだしさ。すごくね。
それで反発し合ってたんだね、結婚当初は。自分の家のことで。

:うん。だからなんていうか、今に繋がるわだかまりは、結婚当初から始まってたっていうか。小さな事かもしれないけど、それが積み重なってるなぁ。わたしの心の中には。

わたし:そうだよね。しかもさ、自分の実家の生活習慣とか環境とかって、自分達にはどうすることもできないことだよね。その環境の中で育つしかないわけで。

わたし:それで育ってきてるし、それしか自分の中にはなかったしっていうところで、言われるとすごい複雑な気持ちにはなると思う。
ここまで育ってきたのも、その習慣と環境の中でやってきてのことだから、それをまるごと否定できないしね。

わたし:それに、おそらくだけど、結婚するときに思い描いていたのって、今まで自分が育ってきたような家庭だよね?
同じようにしていけば「この先もそれなりにやっていける」っていうイメージがわきやすいから、そこから大きく外れないようにって。

:もちろんそれしか知らないっていうか。それだけじゃなくテレビとかで見てたのも総合してると思うけど。

わたし:うんうん。だからそれぞれに「わたしはお茶碗のほうが落ち着くな」「俺はお椀のほうが落ち着くな」っていう思いがあって、それぞれが、自分が育ってきた環境から大きく外れないようにしたいみたいなところがあるのかもね、って。

わたし:そこの違いが、ときに衝突しちゃうのかなって。

:違いはあるよね、違う家だから。そのことが、なんていうのかな、違うの当たり前だから、その違いを言うときの言い方なのかな。

わたし:そうなんだろうね。まぁでも、そういうことで喧嘩してる家っていっぱいあると思うよ。自分の実家のこととかさ、やっぱり他人からとやかく言われたくない。実家のことと親のことは、言われたくないよねって思う。

:それがあるから、なんかそこに触られると、隠すとかそんなんじゃないけど…。

わたし:うんうん。わたしもさ、この前、友達のおじちゃん本当にひどいと思ってさ、「それはないね」程度は言ったけど、やっぱ気は使う。友達がいくら殺したいと言ってても、殺しちゃえばとは言えない。わたしの立場からは。

わたし:やっぱり友達がいくらムカついてたとしても、「わたしには言われたくないだろうな」と思うから。そういうところだよね。

:そうだよねぇ。すごいね、泉って。


父はめずらしくわたしの話に感心したらしい。こういう話を聞いて、少しでも柔軟性を身につけてほしいところだ。でも、翌日にはぜんぶ忘れてる。


わたし:すごいデリケートなんだよね、家庭って。閉鎖的なだけに。

わたし:不安とかもあるのかな、これでいいのかなって。他の家と違うかもと思いつつ、他人の家庭には踏み込めないから。だから、うちはこれでやってるけど大丈夫?…って不安もありつつで。

わたし:だからこそ言われたくないし、あんまり教えたくもないし、指摘されたくもないしっていうところで、反発というか、恥ずかしさというか…。デリケートな部分だけに反応しやすいのかなぁって。

:そうかもね。

:とくに結婚したばっかりの時は違いが見えてくる時期でしょ。何年も経ては慣れてくるけど。

わたし:確かにより感じやすい時期かもね。一個一個に。昔のほうが多様性みたいなのをさ、認め合うみたいな考え方も薄いしね。


- 今日はここまで -


自分が育ってきた家庭も多様なカタチのひとつに過ぎない。それが正しいわけでも間違っているわけでもない。

ところが自分の家庭が正しいと考える人にとっては、それ以外は間違っていることになる。その視点でものを言えば、相手にとって嫌な言い方にしかならないだろう。

そもそも、それでは視野が狭すぎる。だから父は盲目的に実家を信仰したまま、自分の家族が崩壊寸前になってもやり方を変えることができないのだ。

『家庭』は、正しいか間違っているかより、家族ひとりひとりにとって良いことか悪いことか、その視点で考え構築する必要があるのだと思う。

<次回に続く>

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