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【連載】家族会議『俺を褒め倒せ!父のトンデモ理論編』

「親戚で一番幸せな家族になろうよ」のひと言から始まったわが家の家族会議。その様子を、録音記録をもとに書き記しています。

前回の記事はこちら。

家族会議2日目#6|俺を褒め倒せ!父のトンデモ理論

気持ちが通じ合わないことでさみしさを抱えていたことを吐露した母。対する父は、母が悲壮感を漂わせてくるから苦手意識が出てしまうと主張する。さらにもうひとつ、母に改善してほしいことがあるという。

:最近起きたやつでさ、「こうしてくれたらいいのにな」って思ったのがね、お風呂掃除の話あったっぺ。洗わなきゃいかんよと。で、「俺が洗うから」って最初言ったんだよな。そしたら「わ~うれしい」って言ったわけ。「うれしいなら俺喜んでやるから」って言った次の時にはね、「いいわよわたしがやるから」って。

:え。でもお父さんその時だよね、「俺ばっかり」って言ったの。

:うん、俺ばっかりって言ったけど。


言ったんかい!笑
父の話だけを鵜呑みにしてたら、母が狂った人になるところだった。


:だから、「だったらもうやらないで」ってなったんだけど。

:俺ばっかりになってるけど、「うれしいって言うんだったらやるよ」って言ったんだよ俺。

:だから

:いやだから、そーいう時に甘えたらいいじゃないの!

:だから甘えたつもりだったの。そしたら

なーにーが来てもさ、甘え倒すんだよ!

わたし:ぶはっ笑


なんだこの不毛なやりとりはって思って聞いていたけど、父が半ギレしながら「甘え倒すんだよ!」などと言うから思わず吹き出してしまった。我慢の限界を超えた笑いはなんとも無様である。


:よくわかんない(呆れ)

:だからそーこーでー!「うれしいって言うならやる」って言ってんだからさ、今まで3回もやってんだから連続でやってんだから

:だって俺ばっかりって言ったんだよ?

:うん、俺ばっかり掃除してる!だけども


くく、くくく・・・と笑いが漏れ出てしまう。
俺ばっかりっていうけど、連続3回以外は誰がやってると思ってるんだろう。


:俺ばっかりって、じゃあなんで言うの?そんなにうれしいなら喜んでやってくれれば良さそうだけど。

:いやいやいや、ちょっと

:最近俺ばっかりって

:最近俺ばっかりって言ったよ!怒

:言ったよね?「最近俺ばっかりだなー」って言うから、それ聞いたあとわたしが「じゃやめてよ」って。「やんなくていいよ」って言ったの!

:そこはね、言うほうもわる…やっぱだめだなこりゃ!言うほうもダメだけど、甘え倒すんだよ!!


やっぱダメだなこりゃ。はこっちのセリフである。
自分も悪いけど、結局は甘え倒さない母が悪いってことね。どんな理論よ?
・・・怒りながら「甘え倒せ」っていう人初めて見たんだけど。


:甘え倒せってどうやって?

:だから!そのまんま、やらせるんだよ俺に。「わーうれしうれしうれし」で!!


なに言ってるんだこの親父!笑
よくも自分でそんなこと、恥ずかしげもなく…。キレながら言えるな。笑

甘え倒せじゃなくて、俺を持ち上げろ!俺を褒め倒せ!ってことね。


わたし:ふ、ふふ笑・・・いいの?お父さんはそれで。

:嬉しいって言われたほうがよっぽどうれしいよ!私がやるって言われるよりも!


言いたいことはわからなくはないんだけど…いちいち喜んだり褒めたりしなきゃいけないなら、正直めんどくさい。別にそこまでしてやってもらわなくてもいいし。こっちは。


わたし:まぁ…「ばっかり」って言われるとさ、やっぱ頼みづらくはなっちゃうよ。

:ばっかりっていうのはどんな気持ちで言ったのかな、お父さんて。

:その通りだからだよ。

:ばっかりって、その通りって、お父さんの感覚でしょ?わたしが何回やって泉が何回やってって数えたわけじゃないんでしょ?

:そんなの記録してるわけないよ!ただ俺が続いてるから、そう言っただけで。

:「だけで」って、その言葉はこっちとしては、「あぁ嫌なんだな」って思っちゃう。

:俺はその時になんで甘え倒さないのかなと思ったよ。


父が頭の中で何を考えているかは、こうして聞いてみないとわからないものである。実にばかばかしいけど、甘え倒される(=褒め倒される)のが、父が中毒的に欲する『他者からの肯定』だ。


わたし:ふうーーーん笑。いいんだね?じゃあ、お父さんばっかりになっても。

:ちーがーう!甘え倒せばいいの!

わたし:ぶはっふふふ…はぁー。うんそうだね、じゃあ「ばっかり」って言うのもなるべく控えてもらって…ふふ。笑

:あのー、「言ったからやってよ」っていう感じじゃなくてさ、「続いてるけどまた頼むね」と言われたらやるんですよ。バカだから。木に登るんだ俺も。


めんどくせー。
いや、そもそも、そんな高等な会話ができる夫婦じゃないじゃん。理想高すぎでしょ。


:…ちょっと、勝手だなっていうのが出てくるけど。

わたし:まぁ、そうだね、つまりお父さんを調子に乗せて、そういう風に教育すればいいっていう

:俺はじっとしてるから、お前がなんか言ってくれれば俺はやるよって感じ?

わたし:違う違う。良い旦那の育て方って『褒め倒してやらせる』って、いろんなところで言われてるじゃん。だからそういうことだよね?

:そーいうことなんだよ。だけどお母さんに言わせると、そういう表現になっちゃう。多分同じことだろうと思うんだけど。なにもしねぇで言うまで待つんだとかさ、そういうんじゃないんだ。


そーいうことなんだって、自分で言うか。笑

それなら子供のころに、自分の母親に褒め倒してもらえばよかっただろうに。それができなかったからって70歳過ぎて妻に甘えてどうする。


わたし:んー。たぶんね、褒めるのがまず、嫌なんだよね?お母さんは。

:そうだね、今までのことがあって、勝手だなぁっていうのが出てくる。

わたし:うん、褒めることに抵抗があるから、上手に褒めて操るみたいなことができないんだよ、お母さんが。

:うん、そうだと思うわ。


いやいや、そうだと思うって、どこから目線なわけ?笑
いちいち面白いんですけど、この人。


:たとえばさ、一個うれしいって言ったのを、それを大事に受け取ってくれたらいいんだけど、「一個くらいじゃダメ」みたいな感じが

:そんなこと言ってないでしょうよ!


えー!ちょっと!笑
そんなことを言ってきたじゃん今まで。


:だって褒め倒せって。一回褒めたらそれも大事にしてほしいな、わたしから言わせればね。一回くらいじゃダメで、褒め倒せって言われたらなんか・・・

:あのね。この場っていうのは何をしたいんだ?改善をしたいんでしょ?


自分が言い出した話題に収拾つかなくなった父は、急に平静を装って諭し始めた。


:だから?

:だからお互いを改善をしないとダメなのよ。俺も直すって!

:だから?

わたし:うん、まぁ・・・(困惑)

:だから!あなたも直しなさいよ!!!(ぶち切れ)


父、キレた。母、win!

父は絶対に、自分が改善するとは言わない。自分も改善するからお前も治せと、必ず母をセットにする。

本心はこうだろう「お前が直せばそれで済む」


わたし:ふふふふ…はぁー笑。なんか、改善することも大事だと思うんだけど、ひとまずは出す。

:うん、もちろん出す。出さないと分かんないからね。

わたし:そう。全部出す。それで、今みたいな話しだったら、改善するのもひとつなんだけど…。例えば「お父さんが甘えていいって言ってるんだからお母さんは甘える」っていうのは単純な方法としてあるんだけど、もっといい方法が、たぶんあるんだよね。

:…すごい。

わたし:うん。ふふ笑。いい方法。

わたし:あのね、今言ったみたいなのは、よくあるテクニック的な話なわけよ。テクニックじゃなくて、こういうわだかまり全部出していって、本当にお互いの気持ちが分かるようになれば、そのテクニックも使わなくてよくなる。

:あら。それ素晴らしいな・・・

:テクニックってあんまりね。使うには気持ちがないと使えないよね。

わたし:そうなんだよね、結局ね。

:気持ち悪くなるだけ・・・

わたし:だから、ほんとに良くなっていけばね、絶対に、お父さんも自分ばっかりやってるって思わなくなるし、お母さんもやってくれることに感謝できるようになるし、お父さんは感謝してもらって嬉しいって思えるようになる。

わたし:なんだろうな、「やってあげてる」って思うことなくできるようになって、やってもらってる負い目を感じずに感謝できるようになる。っていうのが理想形。

:そうねぇ

わたし:だからそれには、改善していくこともね、やってく中で大事ではあるんだけど、ナチュラルにできていくのが理想っていうか。

:ナチュラルにやるために、いっぱい出さなきゃいけんと、そういうこと?

わたし:うん

:じゃ、どうぞ出して。


おいっ!笑


:なんか今のちょっと…笑

:いや、だから改善じゃなくて出すことだって言ったから

わたし:素直・・・笑

:すごい変わり様。

:変わってないでしょうよ!


よく言えば素直なんだけど。そう急に自分の意見をすっぽかされると、あなたの軸はどこにあるんですか?って言いたくなる。

父はこうやってコロコロ意見が変わってしまう。それがわたしの意見に納得してくれてのことならいい。だけど父の場合はその場しのぎでしかないから困る。


わたし:うん、まぁ、ひとまずは出すことだと思う。思ってることを。だからお父さんも、お母さんに対してムカついてることとか、今みたいにね。その時々に、お互いが何を感じてるかっていうのをとにかく出す。

:どうぞ。

わたし:うん、えっと…。お父さんばっかりっていう気持ちも、お父さん視点であるわけだから

:それ大したことじゃないんだよ。

わたし:大したことじゃない?

:うん

わたし:お父さんばっかりになっちゃうのは?

:じゃあもっと言葉を違えてほしいよね

わたし:ん、まそういう風には思っちゃうけど


もうこの話に勝ち目はないから、なかったことにしてほしいらしい…。父の「ばっかり」と感じる気持ちに寄り添おうとしたらこれだ。大したことじゃない。か…。


わたし:確かに何気なく言ってるのかもね。もっと「なんで俺ばっかり」って嫌な気持ちなのかなって感じちゃうけど、意外とそこまで深く考えてないのかな。

わたし:やっぱりデリカシーがないからか、これを言った相手がどんな反応するかっていうところまで

:考えてない。


え!笑・・・考えてないってハッキリ言っちゃうの?
父の羞恥の基準がどこにあるのか、まるで理解不能だ。


わたし:考えないで発言しちゃうみたいなことなのね。だからある意味、気にしなくていい言葉のひとつ?めっちゃ気になるけどね。

:このときもいろいろ言ってたから、お父さんのその言葉を聞いて考えちゃったよ。

わたし:だから「俺ばっかり」って言われると、「じゃあやんなくていいよ」っていう反応にはなっちゃうよね。普通は。

:じゃそこは俺の改善するところだからいいです!それは。今改善じゃないから、次に進んでくださいよもう。怒


父はこうやって、無理やり話題を次に進めて問題に向き合わない。こうして嫌がる話題をしつこくするのはわたしの悪い癖でもあるけど、そうでもしないと父は、意味も分からないまま問題自体をなかったことにしてしまう。

この場はそれでもいい。でも結局同じことを繰り返すのだから、今きちんと理解したほうが後々の自分のためになると思うのだけど。


- 今日はここまで -


父の理論はその多くがトンデモ理論だ。それを威圧と勢いで押し通してくるから子供だった頃は押し切られてきた。母は母で、父の論点ずらしに一緒にズレていってしまうような人だったから、わが家はながらく父の天下であった。

政治家がそうであるように、論点をずらし、まかり通らない理論で押し切るのは汚い大人のやり口だ。その不誠実さには吐き気がするけど、彼らの心もまた心配である。

他人に不誠実な態度は、自分にとっても不誠実でしかない。それを続けていれば、いつか心が壊れると思う。

<次回に続く>

これまでの家族会議記事はマガジンにまとめています。お時間あればぜひ、わが家の会議をのぞきに来てください!


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