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【連載】家族会議『雨の中の草刈りと父の誤算』
「親戚で一番幸せな家族になろうよ」のひと言から始まったわが家の家族会議。その様子を、録音記録をもとに書き記しています。
前回の記事はこちら。
【家族構成】
父:自己愛性パーソナリティ障害。頭に血が上ると大声で威圧する。
母:自己肯定感が低い。自分の意見を言えない。
姉:うつサバイバー。心理カウンセラーをしている。
わたし:性犯罪サバイバー。家族会議を主導する。
※遠方に住む姉は家族会議には参加していない。
※家族会議の目的は、夫婦仲の改善と、うつを抱える姉の気持ちをわかってあげられるようになることである。
家族会議9日目#2|雨の中の草刈りと父の誤算
――父の子供時代の思い出話を振り返っている。
わたし
なんか、親にして欲しかったことで前に言ってたの、なんだっけ?
父:
雨の日の草刈りとか?
わたし:
雨の日の草刈りの話って、雨の日に1人で行ったって話?
父:
うん、1人で行って
わたし:
それって頼まれて行ったの?おばあちゃんに。
父:
親父に頼まれか…頼まれたのはちょっと定かでないけど。ほとんど日課までいかないけどもやってた。
そのときは雨降ってなかったからね、最初は。そのときは言われて行ったような気がするな。親父かな?そこは定かでない。
母:
1回最初言われて、それからは自分で日課みたいにやってた。自分がやんなきゃいけない仕事って。草刈って何?なんかの餌にするため?
父:
豚の餌。ちゃんと豚の餌という草が、草場があるわけ畑が。クローバーだけ植えてるやつ。
わたし:
クローバーなんだ!へえ!
父:
うん。それを刈ってた。
わたし:
そのクローバーがある場所と、豚小屋は近いわけ?家と畑って近いの?
父:
家と豚小屋は近いけど、クローバーのところはリアカー引っ張って30分、20分ぐらいあるかな。
母:
結構遠いね。
わたし:
結構あるよね。だって小学生でしょ?リヤカーを家から引っ張ってくるってこと?
父:
中学校じゃないかな、それ。クローバーの草刈は。
わたし:
そうなんだ。小学生のときかなと思ってた。
父:
あ、そう?んで中学校だっていうのは、何で覚えてるかというと、じゅんちゃん(同級生)のお兄さんがね、高校通うのに自転車で通ってたんだよな。で、俺草刈り行くときに何回か会ってて。だから、お兄さんが高校に通うってことは俺は中学生。
母:
そうだね。
わたし:
うんうん、中学生ぐらいね。で、おじいちゃんかおばあちゃんに言われて行って、草刈ってる途中に雨が降ってきたのね。
父:
そうそう。びしょ濡れなったから本当に。
母:
そうだよね。
わたし:
雨降ってきてもやめないでやったって言ってたよね。
父:
意地で。誰か来るだろう。でも誰も来ない。
母:
うちの人も帰ってくるだろうって思ってたのかもしれないよね。雨降ったら。どうしちゃったんだろう?お父さんのそのときの意地は、何だったんだろうね。
父:
なんだろう、わかんないけど帰ったらお袋から「はい着替えて」って。
わたし:
そうは言われたんだ。帰ってきたのは気づいてもらったんだね。
父:
そうそうそう。
わたし:
最後まで作業をやったってことだよね。雨の中、やるべきことを意地でやって帰ったみたいな。
父:
意地で。
母:
じゃ、このときのお父さん、どんな気持ちだったの?
父:
だから一言褒めて欲しかったなって。
わたし:
怒られたって感じ?
父:
怒られてはない怒るわけない。何となく、「雨の中ご苦労さんだね」っていう感じはあったけどもさ
わたし:
うん
父:
そうじゃなくて、俺は特別なことをしたんだから、もっと褒めて欲しかったとかさ、そんな感じだったな。
母:
特別なことっていうのは
父:
雨の中草刈って。雨の中で止めないでやってたって。
母:
見てなかったからわかんなかったかもね。
父:
だって濡れて帰ってきてさ
母:
そうだけど、雨降ってきて止めて帰ってくる途中に濡れたのか、雨でもやってたのかわからないかもって。お父さんとしては、そこを褒めて欲しかったってこと?
わたし:
そこに気づいてほしいっていうのが、意地で続けたとこかもね。雨の中でも作業してるところを誰かに見て欲しかった。
父:
誰か来るだろうと思ってたから最初はね。
わたし:
うん。いつもだったら誰か来るんだ。
父:
来ない。いつもだったら来ない。だけど雨だから誰か来るだろうと思うってことは、俺が行ったの知ってる。雨が降ってきたのを知ってるんはずだと。俺はそういう思いがあるから、ずっと刈り込んでたら、誰も来なかったと。
わたし:
そうか、かわいそうにね。
父:
だから褒められるっていうのは、そういった日々のやつはあるよ。
わたし:
もちろんね。
父:
お小遣いもらってさ、うれしいなとか。ただ、裏返しにっていうか強烈に嫌だったなっていうのはやっぱ草刈り。
母:
草刈自体があまり好きじゃなかったってこと?
父:
いやそんなことないよ。草刈りは天気が良ければどうってことないんだけど。
母:
褒めてもらえなかったっていうことで覚えてんのが草刈りだってことか。
- 今日はここまで -
雨の中で草刈りをすれば、「さぞ褒められるだろう」とワクワクしていた父。でも、誰かが心配して迎えに来ることもなく、褒めてもらうこともなく…。悔しさやら寂しさやらで、「雨の日の草刈り」は父の苦い思い出となっている。
わたしは最初、これを小学生の低学年くらいの話と思って聞いていた。中学生の頃の話なのだとしたら、もう自分で判断できる年齢だ。つまりこの頃にはもう、しっかり人格障害の症状が表れていたということになる。
他者に褒めてもらう、認めてもらうことに執着するあまりに、行動をエスカレートさせていたのだ。そして思い通りに賞賛を浴びられなかったことを、根に持っている・・・。
ただ、そんな下心があったとしても、中学生はまだまだ子供だ。祖母が父の行動を褒めてくれたり、心配して迎えに来てくれたりしたなら、ここまでひどい人格障害にはならなかったんじゃないかとも思う。
結局のところ、やってもやっても見てくれない親だった。
愛してもらうのに交換条件が必要だった。
だから父は、「これでもか!」とエスカレートするようになってしまったのだ。それが反抗や非行じゃないからややこしいんだけど。
<次回に続く>
これまでの家族会議記事はマガジンにまとめています。お時間あればぜひ、わが家の会議をのぞきに来てください!
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