【連載】家族会議『家族会議で一番大事なこと』
「親戚で一番幸せな家族になろうよ」のひと言から始まったわが家の家族会議。2020年1月6日から約4ヶ月に渡って行った会議の様子を、録音記録をもとに書き記しています。
前回の記事はこちら。
家族会議15回目#2|家族会議で一番大事なこと
――初日の録音を振り返りながら、感じたことを話してもらっているこの日。
母は、家族会議をしたことで3つの変化があったと言う。
家族会議以外でも会話が増えたこと
精神的に安定したこと
父がいい人だと思えたこと
では父はどうなのだろうか。
わたし:
お父さんはどう?(家族会議をしてみた感想はお母さんと)同じ感じ?
父:
まるっきり同じだわ。
わたし:
お父さんもお母さんのことを誤解してた?お母さんひどい人だと思ってたみたいな
――母は父を「ひどい人」だと思っていた。それが家族会議をきっかけに、「いい人」だと思えるようになったと言う。
それは今まで知らなかった、お互いの背景や気持ちを知れたことが大きい。
知ろうとも、知ってもらおうともせずに、思い込みや決めつけで相手を判断し、それによって大きな溝ができていたのだ。
父:
誤解じゃなくて、わかってなかったんだろうな。それを誤解してたっていえば、それもあるわな。
わたし:
(相手のことが)わかってなかった。でも、わからないとは思ってなかったよね?「きっとこういう人なんだ」って自分の中で決めてるっていうか、思っているよね?
――父はわかっていなかっただけではなく、母のことを誤解もしていたと思う。それは今までの家族会議での発言や考えを聞いていれば明らかだ。
わたし:
初対面の人に対してもさ、「この人ってこういう人なんだろうな」みたいなさ。(自分の中で)そう思って付き合うことって大事なんだろうね。大事っていうか、仕組みっていうか。
何も知らなくても身なりとか、話し方とか態度とか見て、こっちも態度を変えたりするわけだから。その人の人物像を知ることって、人付き合いの上で大事。それが誤解だったり、勝手な妄想によるものだったりもする。
母:
最初は見た目で「こういう人かな」って思う。それもすごい大事だね。
わたし:
それってあれだよね。安心。
母:
かもしれないね。
わたし:
自分が安心したいとか、そうかもね。
でも、そうやって最初決め付けても知ろうとしていけばいいんだけど、そうしないともう、自分の中で作ったイメージだけで付き合うから、どんどんズレてはいくよね。そのままずっと。
父:
俺はあれだよ。お母さんとの間で空気も全く違う。今までと。吸ってる空気が。
なんでそうなったかっていうと、やっぱおばあちゃんのこと、事細かくお母さんが質問をおばあちゃんにして。んで俺に教えてくれたと。
そのおばあちゃんがね、普通だったら「なんでそんな昔のことを聞くの?」と、言うのが当たり前だと俺は思ってたわけよ。それをね、そんなことは言わずに、娘の質問に対しても事細かに説明したんだよ。それを事細かに俺に説明すると。あれは感心したね。
あれで何か大きく変わった感じするな。
わたし:
ふぅん…。あれか、親子関係。
父:
うん。
わたし:
そうだね。こういうの(家族会議)を始める前までは、おばあちゃん(母方)にあんまりいいイメージがなかったんだよね?確か。
父:
おばあちゃん(義母)には良いのと悪いのと半分半分かな。
わたし:
うん。細かい、口うるさいみたいなところがやだなっていうか。なんか、娘はそれに輪をかけちゃってみたいな思いがあった。ある意味「この親にしてこの子あり」みたいに思ってたけど、実際におばあちゃんの背景とかを知ったり、親子関係を見たりしてイメージが変わった。みたいなことかな?
父:
うん。
母:
1回だけの説明じゃなく、時々電話して、電話の内容を喋ることとかも含めての話?
父:
うん。いい感じだなと思って。
わたし:
それにおばあちゃんがちゃんと答えること
父:
答えるの立派だな。それも、思い出したくもないような話をね。
しつこく聞かれるとさ怒り出すのが、俺のロジックはそうなってんだ。だからそれじゃないなと。
――思い出したくもないような話をしつこく聞かれるとイライラする。…父の本音だろう。
父は気持ちや本音をなかなか話さないけど、こういうところでポロッと出る。会話をすればするほど、ポロポロと本音がこぼれ落ちる。
会話をすることには、こういう効用もある。
わたし:
お父さんは、過去のこと思い出したくないことなのかなって今、裏読みしちゃったけど。笑
でも、おばあちゃんにとって思い出したくないかどうかは…
母:
それに、思い出したくないこととか言いたくないことは言ってないかもしれない。もちろん私も、そんな嫌がるところまで聞こうとは思ってないけど。
それも正確じゃないことも結構いっぱいあるよね。もう、年齢的なものもあるし。あまりにも過去すぎて。
けどとりあえず聞くっていうことは、お父さんに私とおばあちゃんとの関係を知ってもらえる以外に、昼間一人でいるおばあさんと喋るきっかけにもなってて。テーマを持って聞けるから、おばあちゃんも喋りやすそうだし、私も聞きやすい。
その結果、おばあちゃんが「誰かと喋りたい」みたいなのもちょっと満足させられるし、おばあちゃんのことで知らないことをいっぱい知ることができた。っていうのもすごく良かった。
わたし:
案外おばあちゃんもさ、そもそもはお喋り超好きなわけだから、嫌な気持ちはしないんじゃないかなって。
聞かれて嫌なことあるとは思うけど
母:
言ってないこともあると思う。
わたし:
ただ、そういうの、おばあちゃんはぐらかすの上手だから言わない。
母:
何かボケが入ってるからかなと思ってたんだけど
わたし:
それもあるかもしれないけど、でも無意識にはぐらかし
母:
無意識にか。
わたし:
なんていうのかな、逃避。そういう面もあるんじゃないかなって思う。
ただお喋り自体は好きだからいろいろ話したい。多分、昔の自分の武勇伝的なものはさ、聞かれて嬉しい部分もあるんじゃないかなって思う。
――祖母は今、グループホームに入っている。すっかり認知症が進んでしまって会話もままならない。
そう思うと4年前、たくさん話ができて良かったなと思う。
母:
あと本当、お父さんが、うちのおばあさんのこととか私のこととか、ちょっと知るきっかけになったっていうのは、すごい
わたし:
知ってもらうのも嬉しいことだよね。
母:
そうだね。聞きたくないなんて言われたら寂しいよね。興味ないそんな話って言われたら、なんか寂しいよね。
――4年前の録音の、母のこの一言にハッとした。4年前は、父も興味を持って聞いてくれていたんだ。と。
この家族会議を経て別居し、再度同居し、再度家族会議を行い、父は興味を持たなくなった。一度情報を得ていれば、もう聞く必要がないのだと。
聞いてもらえる、知ってもらえる喜び以上に、わたしたちに興味をもってもらえることが大事だったのに。何より、会話をすることが一番大事だったのに。
似たような話なら、家族会議に参加しなくてもいいと思ったという父に、わたしと母は絶望した。
わたしたちの会話は父にとって、単なる「情報収集」だったのだ。
- 今日はここまで -
父は未だに、なぜ家庭内別居をすることになったのかわからずにいる。
わたしたちを「ひどい人」だと決めつけ、自分は被害者だと思っている。
この家族会議で散々会話し、自分の気持ちにまで変化が生まれていたことを、父はもう覚えていないだろう。
<次回に続く>
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