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【連載】家族会議『家族に弱音を吐くか、腹いせするか』

「親戚で一番幸せな家族になろうよ」のひと言から始まったわが家の家族会議。その様子を、録音記録をもとに書き記しています。

前回の記事はこちら。

【家族構成】
父:自己愛性パーソナリティ障害。頭に血が上ると大声で威圧する。
母:自己肯定感が低い。自分の意見を言えない。
姉:うつサバイバー。心理カウンセラーをしている。
わたし:性犯罪サバイバー。家族会議を主導する。
※遠方に住む姉は家族会議には参加していない。
※家族会議の目的は、夫婦仲の改善と、うつを抱える姉の気持ちをわかってあげられるようになることである。

家族会議13日目#4|家族に弱音を吐くか、腹いせするか

――「俺はね、上から目線を感じにくい男。」と父は言う。めちゃめちゃ感じているはずなのに。

自分が何に嫌な思いをしているのかさえ、わからないのが父なのだ。



なんか腹立つ人いなかった?なんか、あいつ腹立つって。


で、残念ながら会社の経験しかないんで、会社で腹立つことがあっても、上長だからしゃあないなと。

わたし
でもさ、腹立ってるわけじゃん?


だけど腹立っても


我慢して?


我慢っていうか、当たり前と思うかな。

わたし
なんか、もう瞬時に切り替える。当たり前に。なんかそういう技を身に付けてやってきたわけだけど、本当ははらわた煮えくり返ってるっていうところを…。

そういうのをさ、ぎゅうぎゅう心の奥に押し込めてるから、どっかでキレたりとか、例えばうちに帰ってきて家庭で、そのうっぷんを家族に向けて晴らしたりとか。っていうことになるわけなんだよね。だから、これ(嫌な思い)って消えない。


そっか。あなたはそれでいいでしょって感じだな?あなたが良かった分が、その下の人とか、嫁さんなんかに負荷かかってんだよと。そういうことね。

わたし
そう。だから上から目線をちょっと明確にわかったほうがいいと思う。

上長が言うことで例えばさ、正しいこと。正しいことでもむかつくことはあるじゃん?「言われたくなかった」みたいに。そういうのもあれば、理不尽なこと言ってくる人には、それに対するむかつきもあってさ。でもこれってだいぶ種類が違うと思うのね。

だけど、どっちも上の人から言われれば、どっちにしろ気持ち出さないじゃん?正論だとしても、理不尽なことだとしても。

それが正論だとしたら、その場では「くそー」って思っても、後から自分で噛み砕いて、自分が悪かったなと思えることは消化できるんじゃないかなって思うけど、やっぱり理不尽なことを押さえるのって


理不尽は結構反発したけどな。

わたし
してたの?そうなんだ。


お母さんに何回も言ってたけども、本部から「こうせい」って言われたときに、現場でできないことだったら「できません」って言ったの何回もあるよ。結構反論してたと思ったな。

わたし
じゃあわかってたってことじゃないの?上から目線が。

…でもなんか、ちょっと私が思ってる事例と、お父さんが挙げてくる事例が違うなっては思うけど。


うん、上から目線っていう感じじゃない。理不尽。理不尽なことに対する押し込みはそんなにやってない。それは別に、上から目線でもなんでもない。指示かな。

わたし
うん、そうだね。じゃあ、やっぱ感じてないのかな?お父さんが出してくる事例が、それって別に、上から目線とか関係ない話だなって思うから。


そういうことね。上から目線で押し込むっていうのはどういうことなのかな。


その具体例ではわからないけども、やっぱりずっと、お父さんと結婚してから、何かとにかく、会社でお父さんは無理してるって言ったらいいのかな。体も無理してたかもしんないけど、気持ち的にも無理してるっていうのは、なんか伝わってたよね。


無理してるよ心身ともに。


その無理が何だろう。細かいことはわからない、どんな無理かわからないんだけど、とにかく相当無理してる感じは感じるよね。思い返してみると。

やっぱりだから、無理してるから、うちでその無理を発散するっていうか、にはなりがちだったような気がするの。

わたし
お父さんは何を無理してたの?仕事してるとき、何を一番無理してたって感じ?


要するに、俺自身はね、ここじゃもう、やっていけないんだと実力的に。

わたし
実力。S社との知識の差ってこと?実力って。


そうそう。鉄の男(鉄鋼関連)じゃないと。そもそもが。電力のことは知ってるけど。

わたし
うん。


鉄のことを知らないからコンプレックスっていうのかな。そういうのがあって。

確かに今お母さんが言うようにイライラが募って、うちでぶつける。うちも面白くないから、また何か出てくる。すと両方が嫌になって、会社辞めるしかねえなと思って、会社を辞める運動を起こしてみたりさ。そういうふうに走っちゃってるね。

あのときは本当にもう、辞めるしかないなと思ったもんな。


あのときって、何か、そのときなんだね?


はい。


それは長い間って感じだったけど、結局そこで辞めれなかったから、ずっとずっと、無理することになったってこと?


そうだと思いますよ。

辞めるにしてもさ、給料とかあんまりね、下げられても困るわけだよ。何も関係のねえとこに行ったらがっくり下がるじゃん。収入がこれじゃ困るな。だからN社っていうところを狙って、そこに移ろうと思ってやったけど失敗したよと。

わたし
とにかくお父さんは辞めたかったってことね。すごく嫌だったけど、家族を養えるだけの給料を確保する、それに見合う転職先が見つからなかった。


あのときはなかったな。

わたし
それはつらかったよね。


本当は辞めたいのに何十年も辞めないでやってた。

わたし
だからだね。だから、家族に対してさ、むかつくよね。自分で家族を作った責任はあるけど、うちらがいなければ、もっと自由に辞めれたかもしれないのにとかさ。そういう気持ちも生まれて当然っていうか。そりゃそうね。

…本当に、家族を路頭に迷わせないために頑張ったってことだね。辞めたくて仕方がなかったのに。

それであれば、家で何だかんだ言われたら、カチンとくるし、わかってくれないって感じだったかもね。


そのときにな、お母さんに気持ちを吐露してればな。

わたし
そういうことにはなるけど。まあ、なかなか言えないだろうから。

だから「お前たちのためにやってんだ」みたいな言葉が出ちゃう。態度にも出るし、「誰のためにやってると思ってんだ」っていう気持ちにはなる。そんときに、辞めないにしても、もっと、それぐらいの状況だっていうことを話せる関係だったらよかったねってことだよね。


だから、S社のあの人(嫌な人)が新聞(の死亡欄)に載らないかなっつって。ほんなことを、何回か言ったことあるな、お母さんにな。本当に嫌だった。

わたし
何かその辺の経験とかが、より強固にしたのかな?お父さんの上から目線を。立場を利用して上から目線とか、相手に上から物を言うとか。

ある意味その人はさ、半分腹いせみたいなことを、お父さんにぶつけてきたりもしてたわけでしょ?だからこそ、そんなに嫌だったわけでしょ?


何なんだろうね、あれね。


それこそ理不尽なことを言うっていう人なんじゃない?

わたし
多分その人が言ってくる理不尽と、会社から指示される理不尽って、全然種類が違うと思うんだよね。お父さんがずっと恨んでるその人みたいな人から受けるのが、上から目線による理不尽さで。

その人には言い返してたの?


いや言い返せない。

わたし
言い返せないのね?だから、それだわ!それそれ!それだよ!

会社と違って取引先なわけでさ、お父さんの態度次第で取引が微妙になるかもしれないと思えば、それこそ言えないわけじゃん。そういうやつだよ。もう無理やり押し込めて。でも永遠に燃え尽きない。


そうだね。今でも新聞(の死亡欄)見てるんだから燃え尽きない。

わたし
そういうやつだよね。そういうのが上から目線だったんじゃないかなと思うんだけど。なんかそれって、当たり前じゃないんだよね。

だって担当者が変わったときとかはもっと、普通に話せたって言ってたじゃん。


その人も取引先ではあるんだけども、その人は上から目線とかじゃない人だったっていうことだよね。

わたし
しかも取引先なんて、より対等であっていい立場だと思うんだよね。会社では確かに、役職があってさ、序列があるけど。むしろ取引先って対等。


じゃないんだよな実態は。

わたし
うん、そういうのが世の中のスタンダードになってて、その人は、立場を利用して自分の何か(私的な感情)をそこに乗せてた。乗せてこない人とは対等っていうかさ。

まあ対等と言いつつお父さんはへりくだるんだと思うけど。へりくだったとしても、向こうが過剰に上から来なければ、それなりにいい付き合いができるのが仕事なんだけど


要するにS社は上だと思ってるから。発注者だから。

わたし
なんだよね。わたしも結婚式場でさ、結婚式場があって取引先がいっぱいいて、どっちかって言うとS社=結婚式場側で。


そうだね。

わたし
だけど、取引先が全員来なかったら成り立たないわけ。結婚式がね。S社もそうだと思うの。「納品できないんで」って言っわれちゃったら、もう立ちゆかないっていうかさ。他のとこ探すなりするかもしれないけど、ある意味、「ボイコットしたっていいよ」ぐらいの立場でもいいっていうか。だから本来対等。

発注する側は、「発注しないとそっち困るでしょ?お金になんないでしょ?」みたいなのあるけど、発注される側だって選ぶ権利ある。


お互い様だよね。

わたし
だから対等でいいんだよね、本来。大きさとか関係なく。だから、立場を利用して上から目線にならない人が、普通っていうかまとも。

そうじゃない人たちは、自分の実力以上に会社の大きさとか立場を笠に着て、それこそ上から目線の態度とってくる。それって本当はおかしいんだよね。


言う通りです。ごもっともです。

わたし
そんな人とはいえ、自営業だったら「じゃあいいわ」ってできるけど、会社の手前それもできない。だからそういうのだよね。本当にそういうの嫌じゃん。

多少は仕方ないって思えるとこあるとしても、それ以上のものを出してくる人にはさ、本当に嫌な思いする。そういう人だよね。嫌な人って。


本当に嫌な人ってのは2人いてさ。


お父さんは鹿島にいる間、ずっとその人と関係があったの?


いや後半戦は絡んでなかったけど


結構長い間


長い間

わたし
仕事してる中で一番嫌だったのってその時期で、その人による嫌がらせだか何だか…

結局だから、その間ってさ、人間扱いされなかったっていうか。お父さんを人としてさ。

お父さんがそれだけ辞めたかったってことはさ、人として大切にされてなかったからっていうの、あると思うんだよね。

結局さ、しょうがなくない。全然しょうがなくない。状況としてはしょうがないんだけど、気持ちは全然しょうがなくないんだよね、それって。


S社って本当にね、なんだろうな…。他でも嫌な思いはしたよ。だけど良い思いもした。俺ちょっと良い思いすればいいんだよ。悪い思いをするのは当たり前だと思ってて、良いのが勝ってりゃいいんだわ。

S社は勝ってないね。悪い思いが勝ってんだよ。でなんていうの、得てしてそうなんだけど、S社の俺の嫌なのってのは権力者なんだわ。

だからみんなの前で、俺んとこやっつけるわけよ。みんな何も言えないわけな。権力者だから。またかよと。


――権力者に嫌な思いをしたのではなく、権力を笠に着た人に嫌な思いをした。それが上から目線だろう。

そしてそれを、立場が変われば父もやる。それに気づいて欲しいけど気づかない…。


わたし
影でフォローとかしてくれる人居なかった?


いるいるいる。

わたし
いるんだね。いるよね多分。表立ってはなくても。


だからこっちに移ってから、ゴルフに誘ったことあるんだよ。何人か誘って、誘ったのはそういう人。

わたし
そうなんだね。まだちょっと救いがあったんだね。


それがなかったらもう本当辞めてたよ。

わたし
それで何とか踏みとどまって頑張れた。そういうの、わかってくれる人がいるだけでだいぶ違ったよね、きっとね。


人間扱いされてないから早く死なないかなって思うわよね。

わたし
そうだね。そりゃそうよ。


早く死なないかなって話をしてても、今までそういうのはよくよくわからなかったから。何があってそんなに、死を願うほどなんだろうとは思ってたけど。

わたし
取引先って最初は会社対会社だけど、付き合っていくうちにさ、担当者同士、人としての付き合いが生まれていくのが普通で。やっぱり人がやってるんだから。

そういうふうになっていかないと、仕事ってやっていけない。ロボットじゃないんだから。

そこは本当仕方ないとは言えない、何かがあったと思う。だから文句、直接はもう言えないかもしれないけど、そこはぶちまけてくれてもいいよって感じ。


だけどあの頃、俺も言えるだけの度量があればな。うちでこぼすだけの度量があればよかったんだろうけど。器が小さいねぇ。

だけど、もしそれで、帰ってきて「あんちきしょうこんちきしょう」ってこぼしてたらさ、不安にならない?

わたし
うーんと、まぁだから、その前段階が必要。普段からいろいろお母さんと話を共有してる必要があるよね。

確かに、わたしとかお姉ちゃんの前では不安になっちゃうかもね。だからそれをお母さんに。で、お母さんが受け止めるには、普段から状況を聞いてる必要がある。なんか帰ってきて突然キレてたら、それはちょっとわけわかんなすぎってなる。だから普段からいろいろ共有できてれば


そうだよな。

わたし
でもなんか、あんちくしょうこんちきしょうも、自分たちに向けられてなければ、状況がわかれば、それなりには受け止められるんじゃないかなと思うけどね、子供でも。

お父さんが会社で嫌なことあって泣いたりしてたら、「どうしたの?」みたいなことぐらいはできたと思うよ。


そうだよね。なんかみんなで背中をさすって


そうか。

わたし
そこはお父さんはさ、なかなかそうできないってのがあったとは思うけど。家でもちゃんとしなきゃ、会社でも。鎧着て盾持って、鉄壁ガードで心をさ閉ざしてさ、ロボットのように頑張ってきて。で家は家で、俺が大黒柱だからみたいなことで。もっとそこはさ、共有したかったんじゃないかなと思う。お母さんは。


そっか。弱音を吐いたら悪いなっていうか、弱音吐いちゃいけないって…

わたし
お父さんは全部自分がやんなきゃいけないんだ!みたいな気持ちだったんだね。


あんな会社でも

わたし
そうだよね。昔ほどそうだしね。でもお母さんなんてさ、対等になりたいぐらいだったんだから。

お父さんが弱音とか吐いてきたら、「私が頑張らなきゃ」ってなったタイプだと思うんだよね。だから夫婦で、それこそ二人三脚でできたんじゃないかなと思う。そうしなかったのは、お父さんのプライドだよね。「二人三脚じゃなくて俺がやるんだ」みたいな。


それが結果的に、自分も無理させるみたいなことだね。


――ここまで話せばもう、上から目線がなんなのか、上から目線でどう嫌な思いをするのか、そして自分がしてきたことがなんなのか、家族とどう向き合うべきだったのか、わかるはずだけど・・・。

それがわからないのが自己愛性パーソナリティ障害か。


- 今日はここまで -


父親が子供の前で、会社の愚痴をこぼしてたら不安にはなるかもしれない。

だけど、虫の居所が悪くてとばっちりを食うよりはましだ。

子供や妻を不安にさせまいとして会社での愚痴をこぼさない代わりに、腹いせで家族にあたる。そっちのほうが精神衛生上悪い。

父は自分のしてきたことが、まるでわかっていない。

<次回に続く>


これまでの家族会議記事はマガジンにまとめています。お時間あればぜひ、わが家の会議をのぞきに来てください!

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