一日
わたしは今日も元気である
うんこずわりで歯を磨く
「先生、できたで」
と、うれしそうに声をかけてくれた中学生のことなど思い出す
その中学生のつくったもの
天使の羽
ダンボールに
障子の紙貼って
まだレースはかけてない
その羽をつけるひと
小学生四年生
内弁慶
お兄ちゃんにだけ高飛車
最近すこし笑ってくれる
わたしは今日も
こどもたちの作文を直して演劇づくりをして
昼寝して
実家に帰り
甥っ子と人形遊び
その人形遊びを
甥っ子は映画と呼んでいる
映画は大人は見てはいけない
わたしは大人と思われてない
いつも女子の声の役わり
甥っ子の妹は二歳
わたしをしいちゃんと呼ぶ
トイレのドアをあけて
行こう、と誘う
バタン、はげしくしまるドア
「できるだけはやく」
車の窓越しに
甥っ子とつぎの約束
向かいの家の開け放されたカーテン
蛍光灯とテレビの音
ちょっと遠回りして帰ってきて風呂
目が悪いので
ほこりなのか蜘蛛なのか
いつも見分けられない
タイルの目地を行ったり来たりしているゴキブリにシャワーをかけて殺す
トリートメントしながら
詩を書く
詩というか
ひとりごとか
誰にも隠していることだけど
あなたに話しかけられなくて
ことばにことばをかけるしかない
あたりまえに抱きしめていた
あなたを消してしまった
あなたとつながりを持つために
書いているようなもの
もう戻らないと決めていても
こころはゆらぐ
やっぱり、さみしいよ
一日の最後に思いつくことばを
DELETE
点滅するカーソル
「もう眠ろうね」
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか？