見出し画像

第1話「魔法のランプに願いをこめて」

私たち夫婦が「コアラの街」と呼ぶその町にあるイタリアンレストランでは、魔法のランプを注文できる。

「いらっしゃいませ」

優しい笑みを浮かべた目鼻立ちの整った好青年が出迎えてくれた。

「予約したものです。魔法のランプをお願いします」

それはジャムの瓶より少し大きな、入口が小さく底が丸いガラスの瓶で、小皿で蓋をされて出て来る。瓶の中では白い煙が充満し、うごめき、時を待っている

「おまたせしました。豚肉の薫製 特製スモークポーク 魔法のランプです」

こんなに美味しいものはここでしか食べられない。肉は柔らかくスモークされ、肉そのものが持つ旨味を最大に引き出した濃密な味わいに心が躍る。

この店では客が蓋を開け、立ちのぼる煙に願いをかける

数年前、この店に訪れた僕は、瓶の蓋を開けて、煙が立ちのぼる様子に目を輝かせる彼女に言ったんだ

「僕にはお金もないし、力もないし、地位も名誉も何にもない。だけどジーニーのように魔法のランプから出て笑わせるよ。君を守りたいんだ。」

ランプに閉じ込められた魔人は、燻製のようにじっと閉じ込められながら熟成し、白い煙とともに僕の願いを叶えてくれた。

「ねぇ君、今日はどんな願いにする?」

2020.8.6 文: 佐々木健(初稿)


この話はフィクションですが実際にモチーフとなったお店があります。
Trattoria LA CAPANNA
千葉のユーカリが丘にある美味しいイタリアンのお店。料理名は違いますが、本当に美味しい豚肉の燻製で煙があがります。オススメ。

会話中の台詞は、知人のシンガーソングライター川崎鷹也「魔法の絨毯」の歌詞よりお借りしました(承諾ありがとう)。素敵な大好きな曲です。 ぜひ聞いて欲しいです。彼の声は、ひと声で聞くものを魔法にかける。


僕の文章は「優しい時間を届ける」という趣旨に賛同いただける方はどなたでもご自由にお使いください。著作権は放棄しませんが使うのは自由です。また、登場人物の声を入れ替えたバージョン、効果音やBGMを入れたバージョンなど作りたい方はどんどんやってください。一緒に育てていただければ嬉しいです。作った際には教えてくださいね。

という感じで何を持って「優しい時間」と定義するかは、まだぼんやりしていますが、自分が感じる「優しい時間」を発信して行きます。

よろしくお願いします。

佐々木健

————————————

STORYTELLER BOOK -優しい時間-は、
ナレーター佐々木健が、2-3分ぐらいで聞ける「優しい時間」をお届けしたくて作り始めました。作家さんや一緒に作ってくださる方募集中です。あなたの作った文章を読ませてください。写真や音楽、SE、映像編集、イラスト作成などなど協力してくださる方も募集しています。よろしくお願いします。

佐々木健プロフィール
http://aksent.co.jp/blog/200/post_55.html

ON AIR中のTVCM(2020)
https://youtu.be/e7g6vhAijlM

Spotifyでも配信中
https://open.spotify.com/show/58yuYUiHOgWI7NbClh9KJ4

Apple Podcastでも配信中
https://podcasts.apple.com/jp/podcast/storyteller-book-%E5%84%AA%E3%81%97%E3%81%84%E6%99%82%E9%96%93/id1528932021

ホームページ
https://kokorojin.com

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?