BiSHの「#BiSH逆参勤交代」という企画がプロモーション戦略として素晴らしかった件
BiSHというアイドルグループを知っているだろうか?
※BiSHの代表曲「オーケストラ」。時間に余裕があれば、ぜひ一度聴いていただきたい。
2016年1月に「楽器を持たないパンクバンド」としてavexからメジャーデビューした6人組アイドルグループだ。
BiSHについて書き出すとそれだけで1記事は余裕で書けるので、それはまた次回にするとして、そのBiSHが行った「#BiSH逆参勤交代」という企画が、プロモーション戦略として素晴らしすぎて、もはや感動すら覚えた。
この感動を、マーケティングに関わる仕事をしている者として、きちんと言語化して整理しておきたく、今日はその「#BiSH逆参勤交代」のどこが素晴らしかったのか、自分なりにまとめてみたいと思う。
「#BiSH逆参勤交代」とは?
3/28(水)発売のBiSHのニューシングル「PAiNT it BLACK」の発売を記念して、4/1(日)に行われたこの企画。
BiSHのメンバー6名がそれぞれ別れて全国のCDショップに挨拶をしながら、それぞれのメンバーに定められたゴール地点のイベント会場を目指す。
併せてメンバーにはファン満足度勝負をしてもらい、優勝したメンバーには叙々苑で好きなお肉を何でも食べ放題の権利が与えられる。
ファンは、BiSHメンバーをCDショップで見かけたら、自由に写真撮影ができる。その写真を「#BiSH逆参勤交代」というハッシュタグを付けてツイートする。
そして「#BiSH逆参勤交代」にアップされた写真をBiSHのマネージャーが確認して優勝者を決定する。
ファン満足度が勝敗を決めるので、BiSHのメンバーには、いかにファンに対して笑顔で対応できるかが求められる。
当日の盛り上がりは下記の記事から確認できる。
なぜプロモーション戦略として素晴らしいのか?
今回は、説明しやすいように、一般的なマーケティングファネルに当てはめて考えてみたいと思う。
多くの広告キャンペーンは、「今回は認知を目的にしましょう」とか、「比較検討している層にアプローチしましょう」とか、どれか一つの層に対してアプローチすることが多いのだが、今回のBiSHの企画はこのマーケティングファネルに当てはめて考えた時、ほぼすべてをカバーする企画になっているのだ。
しかも、TVCMやWEB広告などにほぼ予算を使わずにそれを成し遂げた。その上、ファンもそしてメンバーもかなり満足度が高い企画となった。順に説明したいと思う。
①潜在顧客〜③興味へのアプローチ
この企画が終わって1週間が経過した4/8(日)時点で、「#BiSH逆参勤交代」のハッシュタグ付きの投稿が概算で20,000件以上。
「#BiSH逆参勤交代」のハッシュタグを付けてツイートしたアカウントのフォロワー数までは調べられないが、仮に各アカウントに100人のフォロワーがいたとしたら、BiSHに関するツイートが200万近いimp数(実際は全員のフォロワーにツイートが届くわけではないのであくまで概算)を獲得したことになる。
しかも、これは企業が発信するメッセージではなく、ファンによる口コミでだ。企業によるメッセージが届きにくくなった現在、これはかなり強力だったに違いない。
また、この企画の独自性から音楽メディアのナタリーも記事で取り上げている。
このように通常一番予算をかけてプロモーションする部分を、ファンの心理を上手く利用してツイートさせることで、盛り上がり感を醸成することに成功した。
④検討〜⑤購入へのアプローチ
この企画に参加するためには、BiSHのメンバーに会いに、CDショップに足を運ぶ必要がある。僕も昔はよくタワレコに色んなCDを試聴しに行っていたが、Apple Musicが登場してから、すっかりCDショップに行くことがなくなった。
もはやCDショップに行くことは、わざわざな行為なのだが、この企画では、メンバーがCDショップに訪れているときに遭遇すれば、一緒に写真が撮ることができる。(通常、BiSHのメンバーと写真をとるには、CDを複数枚買わないといけない)
なので、ファンはCDショップに行かざるを得ない。そして、メンバーに会うことができ、写真も撮ることができたら嬉しくなってその流れでCDを買う人も多くいるだろう。優れたO2O施策だ。
それだけではなく、各メンバーが目指す最終目的地のCDショップでは特典会が開催され、CDを複数枚買った人はツーショットチェキを撮ることができる。
もはや検討の余地はほぼないのだが、こちらも広告予算をかけずに人をCDショップまで行かせるというところにとても感心した。
⑥共感・熱狂へのアプローチ
メンバーには、ファンの満足度を上げることが求められている。なぜなら、一番ファンの満足度が高かったメンバーには、叙々苑の焼き肉がごちそうされるからだ。
なので、メンバーはいつも以上にファンに対して丁寧に接する。
そしてファンからしてみると、間近で好きなメンバーを見ることができて、写真が撮り放題。その上いつも以上に丁寧に接してくれる。これでファンがハマらないわけがない。
実は、僕も先日初めてBiSHの特典会に参加し、メンバーの一人、アユニ•Dさんとチェキを撮ったのだが、間近で好きなメンバーに会えたこと、そして丁寧に対応してくれたことにより、さらにアユニ•Dさんにハマってしまった。
この企画のおもしろいところはそれだけでなく、メンバーが次どこのCDショップに行くか、ファンには知らされないのだ。だから、ファン同士でコミュニティを作って、情報を共有しあう。わずかなヒントを元に、次にメンバーが行く場所を予想したりする。もはや探偵ゲームをしているような感覚だろう。
このように、ファンが熱狂する要素がいくつも含まれているのだ。
⑦推奨へのアプローチ
大好きなメンバーと写真を撮ることができたファンは、なんとしてもそのメンバーに優勝してもらいたいと思う。
そこで、「#BiSH逆参勤交代」のハッシュタグをつけてツイートするのだ。しかも、自分のありのままの想いを込めて。
みなさんも、自分が深い感動を得たときにあるものを推奨することが多いと思う。逆にいうと、深い感動を得る経験がなければ、推奨することがない。深い感度を得る経験というのはそんなに多くあるものではないため、貴重ともいえる。この企画では、ファンとメンバーが直接ふれあうことで、その深い感動を作り出しているのだ。
このように、熱狂したファンが感動を含めたツイートをし、それが①潜在顧客〜③興味の層にアプローチするというエコシステムができている。
この流れが理解できた時、心底このプロモーション戦略の上手さに感動した。
プロモーション戦略を言語化するのはおもしろいし、役に立つ
今回、自分の大好きなBiSHに関するプロモーション戦略を言語化してみたのだが、そうすることによって抽象化することができ、自分がこれから考えていく企画にもかなり活かせると思った。
世の中にはまだまだおもしろいプロモーション事例はいっぱいあると思う。それらをただ見過ごすのではなく、それはどういう目的で、どういう方法をとっていて、何が優れているのかなどについて今後も考えていきたいと思う。
最後にBiSH、本当本気でおすすめです。曲が本当に良いです。ぜひ一度、騙されたと思って聴いてみてください。
僕はこれでアユニ・Dさんにハマりました。
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