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コーポレートガバナンスの最前線②

ニューフレアの買収合戦は東芝がニューフレアを買収する形で幕が下りました。東芝機械がニューフレア株を東芝に売却することを発表し、東芝の勝利が確定したという流れになります。

ニューフレアTOBから見えた日本の未熟さ

ニューフレアという上場子会社の経営者にこの判断は過大という意見もあります。そういった意見が出ること自体が日本の資本市場の未熟さを物語っているように感じます。

今回、HOYAがTOBの意向を表明したことで、一時、株価が東芝のTOB価格の11900円を大きく超えました。その後、東芝の勝利が確定し、11900円に収束しましたが、HOYAに売却していれば、12900円が手に入るはずであったはずです。

ニューフレアは、個人投資家に対して一株当たり1000円もの経済的損失を被らせたことになります(お金を奪ったともいえます)。

このことをニューフレアは株主に対しどのように説明するのでしょうか?

上場が意味するもの

株式市場は経済にとってどのような価値をもたらしているのでしょうか?それは、少額でも大企業に出資できるという点です。このことによって、皆さんの家庭のタンスの奥に眠っていた小さな資金が株式市場を通じて企業に送られ、有効に活用されることができるのです。そうして、経済は株式市場がない場合より大きくなります。

このためには、株式市場に参加する上場企業は出資する株主のために株式の価値を最大限高めるという前提が必要です。企業が株主以外の誰かのために活動するようなことがあれば、少額の資金はタンスの中に逆戻りとなり、経済は縮小してしまいます。

これは上場子会社であっても同じです。子会社であることを盾に親会社のみに利益のある行動をとれば、他の株主の利益は毀損され、株式市場の信用がなくなります。上場企業である以上すべての株主の利益を平等に考えるべきなのです。

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次は東芝機械のTOBに向けた動き

今回、ニューフレア株を東芝に対して売却した東芝機械がファンドからTOBを受けています。

東芝機械はTOBに反発しており、敵対的買収に発展する可能性が高い見通しです。買収防衛策を行使する準備を進めているとの情報もあり、買収防衛策を行使することが上場企業としての姿としてふさわしいか、問い直されることになりそうです。

買収の目的

買収の目的は村上氏のインタビュー記事をご覧になっていただきたいのですが、一言でいうと東芝機械の資産が過大で有効活用できていないため、株主提案を通じて状況を変えたい。ということです。

詳しくは記事をご覧ください

東芝機械に敵対的TOBの村上世彰氏、狙いを独占告白「物言う株主」として知られる村上世彰氏が、東芝機械に対するTOB(株式公開買い付け)を1月21日から始めた。同氏は2019business.nikkei.com

ニューフレア株が売却されて得られた現金に加えて東芝機械は元々多額の現金(500億程度)を保有しているようです。この現金が株主のために使われていない事が今回の争点です。

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コーポレートガバナンスが目指す世界

コーポレートガバナンスが目指す世界とは、会社と株主が対立することではない、ということは忘れてはなりません。

現状、対立が起きているのは、会社が株主のためとならない事を行ったり、株主が、会社の将来性を無視した提案を行ったりするからです。

コーポレートガバナンスはこのような対立を解消するためのコミュニケーションを円滑にすることを目的としています。

不要な資産を保有するか、株主に還元するかというようなコーポレートガバナンスの問題は、株主と経営者の利益の奪い合いのように見えます。

確かにそれは事実ですが、短期的な視点にすぎません。コーポレートガバナンスの向上は日本の株式市場の透明性向上や信頼性向上につながり、ひいては資本市場の健全な発展と密接にかかわっています。

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