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「なぜ」と考えるからあなたは苦しい -弓道から学ぶ悩まない方法-

みなさん、ごきげんよう

今の時代、様々なことで悩み、迷い、苦しんでいる人は多い。この記事を読みに来たということは、あなたもその一人だろう。

弓道を約13年、自らも修練し、そして後輩たちに指導している中で得た知見をまとめた今回の記事が役にたてば幸いだ。

なぜ人は「なぜ」と考えるのか?

そもそも人間は「なぜ?」と考えるのが好きな動物だ。子供たちは気になったことがあれば、すぐ「なんで?ねぇなんで?」と知りたがる。この世にある全ての事象に意味をつけることを私たちは産まれながらにプログラミングされている。

そして「なぜ」という問いは非常に重要視されている。天下のトヨタでも、「なぜ」を5回繰り返しなさいと言われている。それは、目の前に起きた問題をその場限りで対処してしまうとまた問題が繰り返してしまうからであり、問い続けることで表面には見えてこない、本当の原因が見えてくるのである。「なぜ」という問いは自分の考えをより深くし、そして説得力が増す。

弓道でも同じことを考えて取り組む人が多い。特に弓道というのは、弓を引き、矢を放ち、的に中(あた)ったかどうかのみの世界なので、結果がすぐに分かる。そして外れた時には「どうして外れたのだろう?」と考え、自らの改善ポイントを仮説として置き、その仮説の検証をして的中率を高めていく。なので、自分で考えることができる射手はとても上達が早い。

「なぜ」という問いは辛い

しかし、この記事に食いついたあなたは感じていて知っている。「なぜ」という問いは苦しく、そして辛い作業だ。考えること自体が気が重く、時間もかかる。特に答えが見えてこないと、その苦しさはずっと続く。だからこそ、人は考えることから逃げる。逃げずに考えてそこから得られたある種の答えというのは価値があるのであり、それがビジネスなどでお金になるのだ。

弓道では成長過程の中で、なかなか的中しない時期がくる。自分は天才かと思うほどめちゃくちゃ中っていたのにそうではなくなり、色々原因を考えるが原因が分からない、答えが見つからないという時期が必ずくる。その時、射手は負のスパイラルにハマっていく。「なぜ?」「なぜだ?」「どうして中らないんだ?」と袋小路の中に迷い込んでしまう。

この思考の沼に入ってしまうとなかなか抜け出せなくなる。弓を引く人間にとって最大の喜びは「的中」だ。「なぜ外れたのか」を考え、自分が納得する射ができるまで悩み苦しむ。それはゴールが見えないマラソンを走っている感覚と同じだ。能力のない自分を自分が否定し、こんなはずではない、昔のように中るにはどうしたらいいのかと考えてしまう。実際、弓道はメンタルがやられてしまう人が多い。必要以上に自分はダメだと考えてしまい、辛い弓道人生を歩んでしまい、最後は「もう弓はいい」と言って去っていく。長く続けることは自分のダメな点と直面し続けることを意味する。自動的に自尊心が削られていくことは、知らないうちに、自分で自分の首を締めていくことと同じだ。

社会に出て思うのは、何もこれは弓道に限った話ではないということだ。仕事で失敗した時、モチベーションが上がらない時、恋愛で後悔した時、パートナーができないなど、自分の何が悪かったのか、原因は?と考えるが、明確な答えが見つからなくて苦しむことは少なくない。

「どうすればいいか」と問う

「なぜ」という問いは終わりがない、また答えもない。中らない理由なんて複数の要因が絡み合って本当は誰も分からないからだ。これが答えだ!と思ったものでも、数週間経つとまた別の問題が出て来て、悩んだ末に獲得した答えでは対応できなくなる。意外と賞味期限は短い。

負のスパイラルから抜け出すための質問はただ1つだ。

「じゃあどうしたらいいのか?」だ。

弓道の試合では、なんか思ったように弓が引けない時がある。そんな時に「なぜだ?」と考えても、そんな悠長に考えている時間はないので、余計焦ってしまう。結果、平常心とはかけ離れた心理状態で臨むことになる。そして仮説を持ちながら弓を引いて外れた時、改善点は合っていたけれど自分が上手くできなかったから外れたのかどうかというのも不明確になる。問題の切り分けが案外上手くいかない。

結局試合では結果を出さなければならないので、「なぜ中らないのか?」と考えるのではなく、「どうしたら中るのか?」を考えるしかない。

こう考えることで、試したことが良かったのか悪かったのかが明確に分かる。

また人は上手くいったパターンに固執してしまい、その状態に戻そうとする。成長が止まる射手の多くは中っていた昔の引き方に戻そうとする。考えてみれば、弓道を初めて数えるほどの年月しか立っていないのに戻したところであまり意味はない。

注意として、ここはトレードオフの関係になる。「どうしたらいいか」ばかり考えたら、「なぜ」が疎かになる。対処療法的になってしまうため、バランスをとりながら考えていくことが必要だ。しかし今「なぜ」という自らが立てた問いについて悩んでいるのであれば、「どうしたらいいか」を考えることだ。

過去ではなく未来を考えた方が心は楽

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「なぜ」という問いは自分の現在から過去を対象に、「どうする」は現在から未来を対象に考える。

先ほど述べたように人は自然と、教わっていないのに「なぜ」と考える。特に自分のことが、人生のことが分からなくなった時、人はその原因を己自身に求める。なんで自分はこんな風なのかと。今まで起きたことなどを振り返りながら。しかしそこには「こんな風だからです」という答えしかない。色々な過去の経験などから様々な理由はあるかもしれないが、それはあなたがこんな風である理由でしかなく、「だから自分ってこうなのか!」と気づいたところで、そしてそれは変えようがないので、何も問題を解決してくれない。

負のスパイラルから抜け出すはじめの一歩は、今の現状を受け入れて、「じゃあどうしたらいいか?」と前に進むことだ。「なぜ?」と自分に問いかけて後ろを振り返っていても、さらに負のスパイラルに巻き込まれることになるだけだ。


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今回はスランプからなかなか抜け出せない時の思考と、調子がいい時の思考を対比した際に発見したことからまとめました。

弓道でのメンタル面での悩みはコメントまで。