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学校の先生にはなりたくなかった
中学生くらいの頃から、自分の「将来就きたくない職業ランキング」の上位に入っていたのが、教師だった。
嫌いな教師がいたわけではない。むしろ逆で、学生時代の自分は教師に恵まれたと思っている。だからこそ、教師という職業が「報われない仕事」に映った。
職員室からの呼び出しを無視する生徒かいれば、わざわざ教室までやって来て、声を荒げることもなく静かに諭し、納得させた上で連れていく。なり手がいなかった野球部の顧問をド素人なのに引き受けて、必死でノックの練習をし、早朝や休日の練習にも付き合ってくれる。まさに滅私奉公、聖職者と表現したくなる仕事ぶり。
その仕事が賞賛されるなら救いがあるが、生徒というのは教師を小馬鹿にするのが常だ。おじさん教師は「ハゲ」だの「くさい」だの言われ、若い男女の教師は廊下で立ち話をしていただけで噂を立てられる。「あの先生、昨日●●町のラーメン屋で替え玉2つも食ってたぞ」という、しょうもないニュースを流された人もいた。どこで何を食ったっていいじゃねーか……。
そうして「教師には絶対になれない、なりたくない」と思いつつ成長した自分は、大学を卒業後、印刷会社の営業を経て雑誌編集者になり、今はWebメディアで編集やライティングの仕事をしている。少し前からは5人くらいのチームを任されるようにもなった。
紙とかWebに関係なく、メディアの人間は概して自分勝手だ。「会社のために頑張ろう」というより、「会社の金を使って、自分が面白いと思うものを作ってやろう」という意識で働いている人が多いし、ある意味その姿勢が正しい業界でもある。
だが、そんな奴らが本当に野放しになったら、会社が成り立たない。あくまで「社員」として働いてもらわないといけないわけだが、そこで苦労するのが自分のような管理職だ。
「コアタイムが13時からなのに、毎日15時くらいに出社するのはさすがにどうかと思うけど」「ライターさんから『送った原稿がいつになっても載らない』って連絡あったけど、今どうなってるの」「『そんな記事やりたくない』って言っても、これあなたの仕事なんだよ」
こんな指導を毎日のようにしている。「時間通りに行動しなさい」「宿題を忘れずにやりなさい」「サボらないで掃除しなさい」と言っている小学校の先生と大して変わらない。自分は、あれだけ嫌がっていた教師になってしまったのだ……。なんという悲劇。めちゃくちゃ泣ける。
そして部下たちは、やっぱり自分のことを「細かいことにいちいち口出ししてくる奴」くらいに思って、小馬鹿にしているようだ。だろうね。
思わぬ形で教師になってしまった自分は,これからどう生きていくべきなのか。まったく考えていなかったので見当もつかないが、とりあえず会社の近所で飯を食うのはやめておこうと思う。
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