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結婚生活は、相手の真似をすればいいらしい トマス・ハーディ『良心ゆえに』

トマス・ハーディの短編『良心ゆえに(For Conscience Sake)』について。

トマス・ハーディは、1840年生まれの英国文学を代表する作家の一人です。純粋な女性"テス"が、運命に翻弄され悲劇的な結末を迎えるまでを描いた代表作『テス』からも分かるように、ショーペンハウエルの厭世思想に影響を受けた悲劇的な結末を迎える作品が多いです。
今回紹介する『良心ゆえに』が収録された〈ハーディ短編集〉に取り上げられている8つの短編も、全てバッドエンドです。

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『良心ゆえに』では、若い時分に妊娠させた婚約者を捨てた初老の男性が、罪滅ぼしをしようとその女性を見つけ出し、20年越しに結婚しようとします。しかし、結局関わった人間全員を不幸にしていく、その経緯が描かれています。
見つけ出した元婚約者は、社会的に成功しており、また、娘も良い縁談の話が進んでおり、幸福な生活を送っています。そこへ舞い込んできた主人公の結婚の話は邪魔でしかありません。しかし、彼は、結婚することが全員にとって幸福だと考えています。
1891年に書かれた作品ですので、女性にとって結婚の意味が現在とは異なるのでしょう。それにしても、二十年前に捨てた女性に結婚を申し込みに行く点からも分かるように、「それはないで!」と突っ込みどころの多い作品です。

詰まる所、自分が“良い”と思っていることは、他人にとって良いとは限らないんやで!という当たり前のことを教えてくれる作品でした。その後、彼らは結婚するのですが(するんかい!)、当然のことながらすぐに破局を迎えます。夫婦となると、"自分が良いと考えていること"と、"相手にとって良いこと"が、いかに違うかを痛感する日々の連続ですからね。。。

話は変わるのですが、妻が働き始める直前の彼女の誕生日に、良い一年になるようにと手帳をプレゼントしました。その数日後の僕の誕生日、妻からのプレゼントは、同じく手帳でした。また、去年の結婚記念日に、サプライズでケーキを買って帰りました。妻はそれが非常に嬉しかったらしく、その次の日にケーキを買ってきました。そういうやり方もあるんですねー。

現実では、妻が僕の真似をすることが多いのですが、2017年に制作したピアノと映像のための〈 V.模倣のための練習曲 "Imitate" 〉という曲では、僕が妻の動きを模倣しております。





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