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第2回 仏教って知れば知るほど面白い(後編)


長野県塩尻市の
高野山真言宗郷福寺副住職、白馬秀孝(はくばしゅうこう)
浄土宗善立寺副住職、小路竜嗣(こうじりゅうじ)
がつくるマガジン

「今どきのお坊さんがこれからのお寺について色々考える話(仮)」

今回は前回に引き続き、2015年に善立寺寺報「香蓮」に収録した内容をお送りいたします。

↓前回のお話はこちら↓


信仰ってなんだろう

善立寺副住職小路竜嗣(以下、小路)
 多くの日本人はお正月には初詣に行き、お盆にはお墓参りをします。
でも、「宗教を信仰してますか?」と聞くと、多くの人は「信仰していません」と答えます。このような日本人の信仰心についてどのようにお考えですか?

白馬
年中行事や冠婚葬祭と一体になっているのが日本の宗教の特徴のひとつです。このことから、「欧米と比べ、日本人は信仰心がない」と言われます。でも、私はそうは思っていません。キリスト教を中心とした欧米の「信仰」と、神仏が一体となった日本の「信仰」は同じではなく、
「何をもって宗教とするのか」
「何をもって信仰とするのか」

という根本的なところが異なると思います。

宗教・信仰は新しい言葉

小路
なるほど。「宗教」「信仰」という言葉が現在の意味で広まったのは、明治維新後にキリスト教宣教師が布教のために用いたからであると聞いたことがあります。元が英語であるゆえに、日本人の感覚とちょっとずれているかもしれませんね。

白馬
それが「宗教を信仰していますか?」と聞かれた際に感じる違和感の原因かもしれませんね。

小路
『日本人は宗教を信仰していない』ではなく、「宗教」・「信仰」という言葉の方が日本人の感覚に合っていない。

白馬
そう。なんとなくの神様がいて、なんとなく仏様がいて。ご先祖様がいて。知らず知らずの間に私たちはその感覚に安らぎを感じていると思います。そんなカミやホトケになんとなく、そして自然と手を合わせている。
私達僧侶も「信仰」という言葉に惑わされず、今まで大切にしてきたものを大切にしましょう。再確認しましょうということも仕事だと思います。

小路
「大切にすること」を信仰とすると、私達お坊さんの仕事は「大切にする気持ちを育てる」ことかもしれませんね。

仏教が持つパワーとは

白馬
日本に仏教が伝わって1500年近く経ちます。その間、何度も壊滅的な法難を乗り越えてきました。だから、これからも仏教が失われることはないと思います。
問題なのは、仏教よりもお寺かなと感じています。過疎化や核家族化により、お寺のかたちが時代に合わなくなったのかもしれません。

小路
仏の教えをいかに伝えていくか。それは私たち僧侶にかかっていると思います。これからのお寺は、お坊さん個々の力量に託されているのかもれませんね。

お坊さんに聞いてみたい

小路
最後になりますが、私がなぜこのお坊さんとの対談記事を企画した連載したのかというと、私自身、お坊さんがどんな事を感じ、考えながら仏教に関わっているのかを聞いてみたかったからです。

白馬
現場の生の声だね。最近、お檀家さんにお話をする上で特に感じるのは、私自身が体験したり、感動したものじゃないと伝わらないということです。

小路
「仏教が好きなんです!だから皆さんに勧めたいんです!」という熱意って、大切ですよね。私達が楽しそうに実践する姿をみて、皆さんにも仏教は楽しいものなんだと感じてもらいたいです。

白馬
そうですね。一般社会からも葬儀・法事以外の活動が求められていると思います。郷福寺でもお経を読んだり、お話をする機会を作り、「こころ安らぐお寺」を目指したいと思っています。そのために何をするかが、工夫のしどころ。
お寺って、数百年続いている老舗だけど、少資本・少人数の逆境をアイデアで解決していくベンチャー企業気質があるよね。何事もアイデア勝負!

小路
そう!そういうところが楽しくもありますよね。2回に渡る対談、ありがとうございました。これからもご近所のお寺同士、互いに切磋琢磨していきましょう!

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2015年撮影 左:小路 右:白馬

以上、2015年の善立寺寺報「香蓮」ここまで

2020年6月コロナ禍より

と、ここまで5年前の対談記事をお送りしました。

こんにちは。善立寺、小路です。
次回から、2020年の現代から交換日記を始めます。
コロナ禍でお寺に何ができるのか、これまでのイベントや法要どうしよう。対コロナの新たな一手はあるのか。とかを白馬さんと相談してたら、そもそも論として今私たちがチャットで話し合っている、「お坊さんが何を大切にして、何を考え、何を悩んでいるのか」を表現していくの大事なんじゃね?と思い、このマガジンをはじめました。

マガジンの進め方

各話の最後に、相手への質問をし、それに答える形で交互に書いていきます。

それでは私、小路からの質問です

Q:
白馬さんが「お坊さんやってて楽しいな」と感じるのはどんなときですか?

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