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小島良介
2022年4月30日 23:56
11 アラームが鳴る。 目を覚まし、しばらく放置してからそれを止める。時刻は七時半。ウトウトしているとまた携帯が震える。すぐさまそれを止め、またウトウトする。そんなことを繰り返し、七時五十分まで粘り、ようやく重い身体を起こす。 風呂場の洗面所に行き、電動歯ブラシを濡らし、歯磨き粉を付け口に突っ込む。鏡で寝癖と顔をチェックする。そのまましばらく磨き、終わったら口を濯ぎ、今度は電気シェー
2022年4月29日 01:01
10 何も考えることができなかった。 親が買ってくる飯を口に運び、あとは布団の上で眠るか寝転がるだけ。誰からの連絡も返さない。テレビを見てもネットを見ても何も感じない。風呂には入ることができなくなり、身体を擦ると消しゴムのカスのような垢がたくさん出てきた。 何をしていたのか覚えのない時間が三ヶ月過ぎた。その間一度も風呂に入らなかった。消しゴムのカスはピンポン玉サイズの塊になっていた
2022年4月26日 00:12
9 誕生日はタマと過ごした。いつものように横浜でデートをし、ホテルに行った。そういうことをする気にもならなかったけど、なんとなく流れで一度した。そのあとはずっと横になっていた。「元気ないですね」「そんなことないよ」「だって、今にも死んじゃいそうな顔してる」「そう?」「うちと一緒にいても楽しくないですか?」「……そんなことないって」「じゃあ、はい。ギューってしてあ
2022年4月21日 15:00
8「こうやって普通にデートするの久しぶりだよね」「そうですね。御茶ノ水の時以来ですかね?」 横浜の赤レンガ倉庫に来ていた。僕の左腕はタマの右腕と組まれている。「なんか、すげー恥ずかしいんですけど」「うちもですよ。お酒飲んでないとやってられないです」 ショッピングモールを歩いて回る、ごくごく普通のデート。お互い空いている手には酎ハイの缶を持っていた。「彼女できるの、