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我々の身近にブラックホールが見つかる

ブラックホールは過去何度も取り上げましたが、また別の発見がありました。

ようは、
今までより半分の近さでブラックホールを発見した、
という話です。

今までの記録が3千光年で、今回見つかったのは約1500光年です。宇宙探査機ガイアによる探査から見つかったので「ガイアBH-1」と呼ばれます。
タイトル画像は、その想像図です。(Credit:T. Müller (MPIA), PanSTARRS DR1 (K. C. Chambers et al. 2016), ESA/Gaia/DPAC(CC BY-SA 3.0 IGO))

出所:上記記事

これは単一のブラックホール天体ではなく、G型主系列星との組み合わせからなる「連星」です。

G型主系列星とは、天体の温度によって分類される呼び名で、ちょうど太陽と同じような表面温度・質量・大きさを持っている天体です。

もう1つの今回見つかったブラックホールは、その10倍の大きさです。ブラックホールの中では小型な部類で、分類上「恒星質量ブラックホール」と呼ばれます。

2019年に初めて撮像されたブラックホールはそれに対して、太陽の数十億倍の重さをもち、これらは「超大質量ブラックホール」と呼びます。

我々の天の川銀河中心でも2つ目の撮像成功を果たしましたが、数で言うとまだ理論的には恒星質量ブラックホールは数億個以上あるとされています。

が、なぜか今回含めて手で数えられるぐらいしか見つかっておらず、それはそれで謎ではあります。

また、今回の連星周辺にある天体(伴星と呼びます)の公転軌道が理論値よりも長く、新しいミステリーが生まれました。

ブラックホールは一般的には、星がエネルギーを放出し終わった後に自重を支えきれず超新星爆発を経て形成されます。
が、そのシナリオではこの長い公転周期が説明つかないので、それと異なる形成シナリオがあるのではないか?と検討されています。

今回のケースだけでなく、ブラックホール形成には別のシナリオも提唱されており、1つは「原始ブラックホール」と呼ばれているものです。

名前から相当昔のイメージがありますが、実際そのとおりです。

元々は、スティーブン・ホーキングによって提唱され、ビッグバン直前におこったとされる「インフレーション」期に発生した「ムラ」から生じたのではないか?とされています。参考までに宇宙の歴史図を引用しておきます。

出所:https://astro-dic.jp/cosmic-microwave-background-radiation/

この原始ブラックホールは、宇宙全体の3割弱もの物質分布を占めるダークマター(暗黒物質)の候補としても「一応」残っています。

「一応」とつけたのは、可能性が低いと思われているからです。以前に下記投稿でもふれましたが、今の有力候補はWIMPと呼ばれる未発見素粒子のいずれかです。

元々は、WIMPの前にMACHO(Massive Compact Halo Object, Massive Astrophysical Compact Halo Object)と呼ばれる区分で、この原始ブラックホールも検討されていたのですが、全く発見出来なかった経緯があります。

ただ、全否定されたわけでなく、下記記事のようにまだ探索は続いています。

過去否定されたものが観測技術の進歩で見直されたケースもありますので、(日本の研究グループだからと身びいきしたいわけでなく)ぜひこの可能性も期待したいと思います。

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