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代謝が変える「生命の定義」論争

生命の起源は、宇宙誕生同様誰でも一度は夢想したことがあるのではないでしょうか?

そんなテーマについて刺激的なニュースが配信されています。

ようは、
従来と異なって複雑な分子がなくても代謝する仕組みを発見して、生命の起源候補として可能性が出てきた
という話です。

まず、「代謝」とは食物などを分解してエネルギーを取り出す仕組みのことです。

「生命の定義」として、「代謝」はよく取り上げられます。ほかには下図のように「境界」「自己複製」がともに扱われます。

著者作

さて、今回の発表をもう少し補足すると、元々生命起源探索目的でなく、「解糖系」の研究の結果、複雑な分子(酵素)がなくても試験管の中で反応が起こった、という発見が発端です。
もちろんまだパターンが限られていて、はじめは「鉄」でのみ成功して今はそのケースを膨らませる研究を続けているようです。

ところで、生命科学への専門性が高くなるほど、生命が存在した奇跡に驚嘆する傾向がある気がします。(したがって専門家には地球外生命に否定的という方々も多いように感じます)

上記文中にも例示されてますが、現時点で最も単純な生物「細菌」約1000種類のDNA比較でも、30億年以上にさかのぼって146ものタンパク質が見つかった、とのことです。いかに生命が複雑な仕組みなのかが垣間見えますね。

で、やはり好奇心をくすぐるのは、上記3つの生命の要素で「はじめのスイッチが何であったか」です。(もちろん他の発想も全否定はしませんが)

元々「代謝」は、ある程度複雑な分子がある前提での話が常識で、従って「自己複製」から、という話を私自身はよく目にしました。(これは主観的な印象です)
特に、DNAとアミノ酸を媒体、最近だとワクチンとしての応用も進んでいるRNAが発端という「RNAワールド仮説」は有名です。

RNAは、自己複製もできるしある程度代謝機能も備えています。個人的には、今までこのほうがしっくり来ていました。

それが今回、複雑な分子なしで「化学エンジン」とよばれる作用が起こっていたのは正直驚きました。

まだこの研究は進行中で、まだ生命にとって重要な化学物質の作成までには至っていません。
あくまで細胞・複製機能なしでエネルギーに変える作用が出来るという研究であって、このアプローチでは、細胞膜そして自己複製のプロセスが登場する説明には至りません。

ただ、どうしても知能を有した我々人類の思考の癖として、「何か単純な原理から始まった」としがちですが、もちろん自然からするといい迷惑です。

もしかしたらもっと原始生命は上記3要素がそれぞれ偶発的に進行してどこかで偶発的に混じったものが生き残ったのかもしれません。

なかなか脳がすっきりしてくれない仮説ですが、そもそも「生命の定義」も極めてもろいものです。

例えば、我々の身体を構成する細胞も常に古くなったらリサイクルされて常に新しい細胞に生まれ変わっています。数か月たったら多くは違う細胞で出来ているため、細胞視点では別の生き物といってもいいです。

人類以外の生物では、たとえば「プラナリア」という生物は切断しても自己再生して分裂状態でそれぞれ生命活動を継続します。(100分割したら100個が自己再生して生き続けます)


冒頭の記事最後にはこのようにつづっています。

「生物と無生物の間にはグラデーションだけが広がっています」

出所:冒頭記事のムホウスカ氏のコメント

もちろん個人的な好奇心の追求として、生命の起源研究は引き続きウォッチしていきたいです。

が、それはあくまで人間(脳)のエゴで、
生命という言葉はバーチャルなものかもしれない
という視点もどこかで忘れずに、極上のミステリーを楽しんでいきたいとおもいます。

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