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Natureが選ぶ今年のサイエンスに影響を与えた10名(後半)

前回、サイエンス誌が選ぶ10名の内5名を紹介しました。
基準は、2022年にサイエンスの形成に貢献した方々(Ten people who helped shape science in 2022)です。

今回は、残りの5名です。(順番は元掲載順でランキングではないです)

6.Lisa McCorkell: Long-COVID advocate
COVID感染にあった患者の長期間・広範囲での調査に積極的に立ち向かったことが評価されました。
コミュニテイ化を通じて患者の健康を優先させた資金拠出と流動の仕組みへ貢献しています。彼女が率先して報告したこちらのレポートは、今後のCOVID患者への長期的な支援において活用されています。

7.Diana Greene Foster: Abortion fact-finder
2022年に米国の州で中絶の規制が進められましたが、Diana氏は中絶規制とそれによる幸福への影響を科学的に研究したことが評価されています。
具体的には、中絶を行った層と出来なかった層を比較して、どちらがより幸福にすごしているのかを出来る限り科学的に調査しました。
そして結果として、中絶を拒否された層がよりダメージが多いことを明らかにしました。今後の政策における意思決定のありかたに重要な示唆を与えています。

8.António Guterres: Crisis diplomat
国連の事務総長です。科学者ではありませんが、2022年11月にエジプトで行われたCOP27でのリーダーシップが評価された形です。
特に、会議冒頭での下記の一言は印象深いものでした。
「私たちはアクセルを踏んだまま、気候の地獄への道を進んでいます」
その他にも、食糧輸出大国でもあるロシアからの供給が絶たれつつある危機を、直接プーチンとの交渉に臨んで救った功績も称えられています。

9.Muhammad Mohiuddin: Transplant trailblazer
遺伝子工学を専門とする科学者です。史上初めて、遺伝子編集した豚の心臓を人間に移植することに成功しました。術後2か月後に死亡はしていますが、元々は生命維持装置が必要な状況で本人もリスク合意しており、術後に家族と楽しい時間を過ごしてはいます。(この辺りの解釈は難しいですね。。。)
倫理的な議論は続くかもしれませんが、今回得たデータがまた1つ人類の医学研究に貢献したことは間違いありません。

10.Alondra Nelson: Policy principal
米国の科学政策において調整を担っている社会科学者です。
特に2022年に重要だった出来事は、資金を投じた科学研究を、(従来1年の猶予を与えていましたが)即時オープンにさせたことです。
他にも、AIによるプライバシーを守るAI憲章や、人権による不公正をなくす活動などが評価されています。

改めて今年の10名を俯瞰してみると、ノーベル賞と異なり、純粋な科学技術の発見・発明というよりは、社会への貢献を色濃く出していることが分かります。

科学と社会(政治・経済・文化もろもろ)との相互影響が不可分にのなっている現代だからこそ、今回の10名の功績はより知らしめるべき内容だと思います。

10名の皆様に、心からお祝いと素晴らしい活動への称賛を送りたいと思います。

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