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日本人の月面着陸とアルテミス計画

2021年末にJAXA(宇宙航空研究開発機構)の星出彰彦飛行士が宇宙から帰還したニュースは覚えている方多いと思います。

その星出さんが、2022年2月に岸田首相を表敬訪問した記事が載っていました。

この記事だけをみると、リップサービスと思うかもしれませんが、意外にガチで計画に落とし込んでいます。

アメリカの月探査計画「アルテミス計画」の流れで実現する方針とのことです。

アルテミス計画」?  神話っぽい響きですね。

これは「アポロ計画」の由来となった「アポロン」(ギリシャ神話の太陽神)の双子にあたる月の女神からとっています。なかなかおしゃれですね。しかも、最終ゴールは月でなく、「人類未踏の火星への到着」です。

壮大なロマンあふれる計画なのですが、結構今「予算の確保」や「民間業者との調整」でバタバタしているところです。

そもそもですが、火星はともかく
「何をいまさら月へ?何度もいったでしょ?」
と思う方いるかもしれませんが、最後に人類が月に到着したのは、実に1972年(アポロ17号)までさかのぼります。

つまり半世紀も人類は月面に降り立っていないんです。

理由は「予算縮小」です。

1960年代はソ連との軍事競争もあり、時の大統領も投資モードだったのが、1970年代に入ると国際協調路線に進み、宇宙開発もコスト削減(有人探索が一番お金かかります)のあおりを受けたというわけです。

改めて宇宙開発の声があがったのが21世紀になって、当時のブッシュ大統領が「コンステレーション計画」と名付けた月面着陸プロジェクトを発表しました。これがアルテミス計画の原形です。

ただ、次のオバマ大統領では2008年の金融危機による財政問題を理由に宇宙開発への予算を縮小し、本計画は中止になりました・・・。

それが再燃したが、次のトランプ大統領です。就任した2017年に正式に「アルテミス計画」を発表しています。
背景として、アメリカの復権回復もですが、中国が宇宙開発をガンガン進めていることによる脅威もあります。 

こうやって経緯をたどると、本当に時の政権に左右されますね。

今回もう少し事情が複雑なのは、21世紀からロケット開発を民間委託にシフトしつつある点です。
つまり、民間業者同士の競争もあり、なかなかさくっとは決まりません。

ざっくりとアルテミス計画の、月到着までのポイントを上げると下記の要素が最低限必要となります。(以降の月面基地計画は割愛)

1.打ち上げ用ロケット(通称SLS(スペース・ローンチ・システム))
2.滞在用の宇宙船(通称オライオン)
3.宇宙船から月面に送るロケット(通称HLS(ヒューマン・ランディング・システム)

1・2は元々政府よりの仕事をしていた業者でほぼ固まったのですが、3については2021年にイーロンマスク率いるスペースXが単独受注しました。

これに異議を唱えたのがジェフベゾス率いるブルーオリジンです。(厳密には連合)
「NASAは民間の自由競争を妨げている!」として訴訟を起こしたり、私費の投入を打診して食いさがっています。例えば下記の記事。

こういったバトルで調整が難航し、既にアルテミス計画は遅延中です。冒頭の岸田首相発言も、完全にNASAの計画進捗に左右されます。

民間の活力が入ることはとてもよいことですが、なんというか、人類共通のテーマなので、手を取り合うことは出来ないものでしょうか・・・。

月の女神の嘆きが聞こえてきそうです。

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