見出し画像

遂にマシンはエクサスケールへ!

日本のコンピュータ科学にとっては残念なニュースが報道されています。

要は、
数年間(半年ごとに発表)ほど単純計算速度で世界1位だった富士通と理化学研究所共同開発の富岳が、今年は米オークリッジ国立研究所の「フロンティア」に首位を明け渡した、
という話です。

こういったニュースを聞くと、
「1位でないとダメなんですか?」
という政治家の声が蘇ります・・・。

その是非はともかくとして、今のスーパーコンピュータがどれくらいの性能なのかについて触れてみたいと思います。

その前に、上記記事だけだと誤解を与えるので、もう2つ記事を引用しておきます。

全く真逆の印象を受けると思います。

要は、単一指標のコンテストでなく部門毎評価なので、総合的に負けたわけではないということです。

言い方を変えると、コンピュータの出来不出来は、人間同様単一の尺度では測れないということですね。

今回首位陥落した評価は通称「Top500」とよばれ、ざっくりいうと複雑な連立一次方程式を解かせることでその処理性能を競います。

下記サイトでその順位を公開しています。

1位:フロンティアシステム(米国):1.102エクサフロップ(Flop)/秒
2位:富岳(日本):442ペタフロップ/秒
3位:LUMIシステム(フィンランド):151ペタフロップ/秒

上記のフロップがコンピュータの処理能力を測る1つの単位で、1秒間に浮動小数点演算を何回できるかという能力を表しています。
フロップスの前にある呼び名は、国際単位系で定められたスケールで、我々の日常生活でギガは馴染みとおもいますのでそこから書くと以下の通りです。

  • 1G(ギガ=10の9乗)フロップス:1秒間に 1,000,000,000回

  • 1T(テラ=10の12乗)フロップス:1秒間に 1,000,000,000,000回

  • 1P(ペタ=10の15乗)フロップス:1秒間に 1,000,000,000,000,000回

  • 1Exa(エクサ=10の18乗)フロップス:1秒間に 1,000,000,000,000,000,000回

ここまで0が並ぶとリアリティを感じないかもしれませんが、いずれにせよとうとう人類で初の「エクサスケール」を実効値として出したマシンが登場しました。
ただ、上記記事内でもあるとおり、富岳も理論上はエクサを超えているそうです。1位と2位がとびぬけてますね。

エクサスケールを1つのマイルストーンとする論調が以前はありましたし、それをタイトルとした書名も過去ありました。
やや記憶があいまいですが、人間の脳処理がそのあたりのスケールであるという説が1つの背景にあったと思います。
つまり、「マシンが人間を上回る」というワイドショー的な表現を使いたいわけです。

正直これは比較出来うるものでなく、もっと辛辣にいえば比較する意味もあまり感じません。
例えば、PC性能を表す表記に「クロック周波数」があります。同期を測る時間と思えばいいですが、これは人間の脳は極めて遅く、我々が普段使っている普通のマシンのほうがはるかに高速です。
ただし、脳は膨大なネットワーク構造となっているため、結果として多機能かつ高速な処理を省エネ(20W)で実現しています。(余談ながら一位フロンティアの消費電力は21MWと100万倍!)

実は今の最高速スパコンも、並列型またはインターコネクト型といわれるものが主流になっています。
少々雑な表現ですが、GPUという並列処理型CPUをいかに高速につなげるのかという工学スケーリング上の競争といってもよいと思います。
たとえば富岳は、432筐体(158,976ノード)で760万個のCPUコアという構成を採用しています。おそらく一位のフロンティアも物理的にも相当広い場所を確保しているはずです。

最後にもう一つ、どうしても今のコンピュータとして外せないのがAIへの取り組みです。
今のAIは深層学習が主流になっているので、そのパフォーマンスを評価するランキングもあります。

HPL-AI」と呼ばれるもので、AIの計算などで活用されている単精度や半精度演算器(要は従来が10進数でこれはもっと低い進数を採用)などの能力も加味した計算性能を評価する指標として、2019年11月に制定されています。
そのランキングも上記同様1位フロンティア・2位富岳です。

ただ、AIについては他の新規参入組もみえており、ちょうど5月30日に(図ったかの如く)NECがAIマシンの開発に名乗りを上げています。

ベンチマークの在り方もこれからさらに変わってくるかもしれませんが、いずれにしても、ぜひ実験室での評価以上に社会的にプラスになる成果も残していただければと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?