見出し画像

異星人の探査船?オウムアムアの謎

前回紹介した地球外文明通信で触れた、恒星間天体「オウムアムア」の謎について言及してみます。

あらためて、謎の「オウムアムア」の出来事から触れます。

2017年10月19日にハワイの天文台で初めてその存在が発見され、他の天文台もふくめてわずか10日あまりだけ観測されています。
現時点では、史上初の太陽系外からやってきた天体とみなされています。(もっと古い候補もありますがまだ検証中)

謎は大きく2つに分かれているので、パートに分けて仮説とタイトルの根拠について触れてみたいと思います。
なお、今回は主に下記を主な参考書籍としています。


謎その1:異常な形状・反射

観測からある程度見た目は推測されており、下記がそのイメージ図です。長い軸で大体200〰300メートルの大きさです。

出所:Wiki「オウムアムア」

今まで確認されている天体で棒状が全くないわけではないのですが、短軸と長軸比率が1:3程度でした。今回の観測ではそれが1:5〰10の比率です。

しかも、妙に明るい点も、自然の天体現象として説明がつきにくいものでした。
恒星ではないので、輝くのは太陽光からの反射によるものです。つまり、天体の表面積と反射率が決め手になります。
表面積は、圧倒的に地球含めたほかの天体より小規模です。そして上記の数百mと仮定した場合、太陽光反射率は二分の一〰三分の一程度と計算されています。
地球で30%強、金星は80%弱(従って一番明るく輝く太陽系惑星)なので、一見驚く数値ではないように見えますが、これらは大気による影響が大きいです。それがない、例えば月の場合では7%程度です。

この形状・形質を説明する仮説として、
・宇宙放射線に長年さらされて表面があのようにけずられた
・どこかの惑星の重力に振り回されて一部がひきはがされた
・天体の表面の元素が金属系なのではないか?
と出ていますが、なかなか有力なものはありません。


謎その2:異常な軌道

今はすでにオウムアムアは観測を離れて太陽系の外に出ようとしている段階ですが、その軌道が最も不思議な謎として提示されています。

出所:上記書籍

天体の軌道は、主に重力による作用です。特に太陽系であれば圧倒的に重い太陽の影響に従います。

まず、太陽に接近するまでは時速32万キロメートルで通過して、その重力で加速し、上図のとおり別の方角へ向かう軌道を描きます。

このシミュレーションは今の科学技術であれば精密に実現可能です。

ところが、その重力に従う軌道を描かず、別の力によって加速する観測結果が得られました。

これが最大の謎といっても過言ではなありません。

過去に全く前例がないかというと1つだけ例外があります。
ハレー彗星でおなじみの尾を持った彗星は、太陽光に熱せられた塵や氷が蒸発したもので、それによる推進力(ロケットと同じ原理)を得ることができます。

ただ、今回の観測ではその塵・水蒸気の痕跡が一切見つかりませんでした。

その関連でいえば、回転の問題もあります。
オウムアムアは回転しながら宇宙空間を移動していることが観測から分かっています。
もし、回転しながら太陽熱の影響で噴射をしていれば、その自転周期は変わるはずですが、その痕跡も見つかりませんでした。

ただ、今回の科学者たちの見解では、上記にもかかわらず「おそらくはガス状の噴出による非重力加速だろう」と結論づけています。
それを補佐する仮説としては、今回の方法では計測できない噴射物(例:水素)だったのだろう、というものがありますが、また別の科学者が否定しています。

そしてもう1つこのガス状噴射に無理があるのが、その加速度が極めて滑らかかつ安定的だったことです。具体的には、太陽までの距離の二乗に反比例して弱まっており、自然のガス噴射であるならもっと急激に弱まります。

そのほかにも天体崩壊説や太陽光圧力もありますが、超小型かつ歪な非対称構造をもっていることから、ガス噴射説よりさらに無理があります。

まとめると、今回公式に発表されたなかで有力な自然説は、
「オウムアムアは、自身が持つ水素が太陽の熱によって噴射され、自身の10%相当の質量を失いつつ絶妙にコントロールして安定的な加速度を得た」
というわけです。

上記書籍の著者は、さすがにそれは無理があるとし、「消去法で」外部からの人工的な圧力が加えられた、という説をとっています。
つまり、「地球外生命体によるなにがしかの目的を持った機体」です。(タイトルでは便宜上探査船と記載)

この著者は、実際に同じような探査船プロジェクトに携わっています。地上からレーダーをピンポイントに放射し続けて探査船「スターチップ」の推進力を獲得する、というアイデアで、結構近い未来で実現する予定です。

このプロジェクトは「ブレークスルー・スターショット」と呼ばれています。関心のある方は下記の公式サイトを訪れてみてください。


発見以降の出来事

謎を整理すると、「形状」「反射」「軌道」となり、特に軌道は大いなる謎です。
そして実は、恒星間天体の第二号が2年後の2019年8月に発見されました。
発見したアマチュア天文家の名前にちなんで「2I/Borisov(ボリソフ)」と呼ばれます。

ただ、恒星間天体であること以外は、通常の彗星と同じような特徴であり、結果として「オウムアムア」の異常をさらに深めるものでした。

既にオウムアムアは観測範囲から離れており、2030年代には太陽系を超えて星間空間に突入します。

ただ、実は「今からでも追いかければまだ追いつきます」。
ということで、追跡プロジェクト「プロジェクト・ライラ」が計画され、もし実現すると2050年までには追いつけます。

※タイトル画像は下記サイトより引用

最後に、オウムアムアの名称の由来ですが、発見したハワイの言葉で「遠くからの使者(単語では斥候)」を指します。

もちろん比喩として採用したのでしょうが、まだその可能性は無きにしも非ずです。ぜひこの人類史上最大となる追跡劇を楽しみましょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?