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伝説の「メアリー暗号」で新発見

いつの時代にも、ミステリーはつきものです。特に「暗号」に関わる歴史的な逸話はどの時代でも語られます。

現代でも、量子暗号の技術が、普及したRSA暗号を破るかも?という話は何回かしてきました。

そんな現代でも注目の「暗号を取り巻くドラマ」のなかで最高級の1つが、中世のイギリスで起こった「メアリー暗号事件」です。

最近新しい暗号書簡が見つかって解読されたというニュースが流れました。

やや、時代背景がないと分かりにくいので補足しておきます。(中世の西ヨーロッパ事情は複雑なので簡潔に)

当時はブリテン島(日本風に言えばイギリスの主要島)はイングランド(南部でプロテスタント派)とスコットランド(北部でカトリック派)で宗派争いが起きていました。
結果としてスコットランド側が大敗して当時の王が失意のもと亡くなり、まだ幼子だった(今回の悲劇のヒロイン)メアリーが王女の位につきます。

メアリーはフランス(もカトリック派)と政略結婚して大陸を渡りますが、不幸にも相手が亡くなり、その後スコットランドに戻って幾度か再婚するも、相手に恵まれず幸せな結婚生活は築けませんでした。(亡くなったり暴力をふるったり・・・)

メアリーがスコットランドに戻っても統治がうまくいかないため、クーデターが起こってしまい、メアリーは内戦で形勢が不利になると旧敵イングランドのエリザベス女王に助けを乞います。
ここは相当違和感あるかもしれませんが、一応エリザベス女王は血のつながった親戚でもあり、(過去のしがらみは忘れて)助けてくれるだろうと期待したようです。

が、それが判断ミスでメアリーはエリザベス女王に幽閉されてしまいます。

表向きはクーデター過程での罪を問うたものですが、メアリーはイングランド国内でまだ人気もあり、いつか自分の王座を奪われる恐れを感じたからだといわれます。

実際その懸念は現実となります。

幽閉されたメアリーを助け出してエリザベス女王を暗殺してイングランドを取り戻そうという一派が誕生します。

その中心的役割を担ったバビントンがメアリーに暗号書簡を秘密裏(一応手紙自体を見つからないように樽に隠してもいました)に送り、その往来書簡の関連が今回解読されたものです。

この計画が発覚したのが、なんとこの書簡を届ける人が二重スパイだったという、なんとも壮絶なドラマです。

そこには露骨にエリザベス女王暗殺計画が記載されていたため、死刑までは・・・と渋っていたエリザベス女王(親戚であることと、安易に殺害すると国民の反感を買うリスクも)も、メアリーをついに斬首刑にすることに決め、数百人の群衆の前で執行しました。

もはや暗号がかすむほどの複雑なストーリーですが、ではその肝心の暗号をどう解読したのか?

実はエリザベス女王側の側近にスパイ作戦を仕切っていた参謀が、暗号の重要性を痛感していました。
当時設立していた暗号研究所とその専門担当者が、このアルファベット列を解いて決定的な証拠となります。

基本的にはアルファベットの頻度で作る仕組みらしいですが、100年以上もの眠りを起こしてそれが現代の暗号解読者(うち一人は日本人)によって解かれました。
今回の解読が他にも応用が利くような表現もあるので、今後ドミノ的に発見が続くかもしれません。(記事を読む限りは発見自体のほうがすごかったようですが)

実は今回見つかった書簡は首謀者とのものでなく、メアリーから駐英フランス大使あてで、そこでは暗殺を直接的には明治していませんでした。
この件では、やはり初めに暗号を送ったバビントン側のほうが迂闊だったと感じます。

そしてこれは現代への教訓を感じます。

暗号にしたから大丈夫、という根拠なき安心は捨てて、万が一破られても致命的にはならない程度の備えはしておいた方がよさそうです。

今回の話は、下記の冒頭エピソードにより詳しく書かれています。暗号全体の歴史書としてもお勧めです。


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