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脳の関門を開けるか?「集束超音波」への期待

なかなか耳慣れないタイトルですが、脳への治療に期待されている手法です。

とりあげたきっかけの1つがこの記事です。

ようは、
集束超音波で閉ざされた脳への治療可能性が広がる、
という話です。

まずはじめに、脳は人体の各部位で比較すると、さながら独立国家の様相を呈しています。
脳の活動にとって必要な物質以外は一切通さないように物理的な関門が設けられています。

どういう経緯でこうなったかはまだ解明されていませんが、人体の中で一番重要な部位の1つであることは間違いありません。反射など単純な運動を除けば、一旦神経を通じて脳に情報が集まってそれをフィードバックします。(無意識の活動も含めて)
言い方を変えると、脳が機能しなくなると全身に影響を及ぼすというわけで、特に今後の高齢化でアルツハイマーなど認知症も、ざっくりいえば脳がうまく機能しなくなるものです。

その関門が、「血管脳関門」と呼ばれているものです。
関門とありますが、イメージ図も載った記事を見つけたので引用します。

脳は体全体の20%のカロリーを消費するといわれているほど大食漢ですが、それに必要な酸素(ヘモグロビン)や糖など必要なものはきちっとこの関門が見分けます。
ただ、心強い一方で人工的な薬も不純物と見なしてせき止めたり入った後も排除するように出来ています。

その頑固な性格が今まで脳への治療薬投与が難しかった理由でしたが、今回のアプローチはその関門をあけてしまおう、という野心的な試みです。

例えば、上記で触れたアルツハイマー。この数年でも新薬販売とその効果について色々とメディアでも登場しますが、興味深い現象が分かりました。

まずアルツハイマー発症メカニズムについては、過去にNOTEでも取り上げたので、基礎情報は割愛します。

発症後の神経細胞が異常化した「アミロイド班」と呼ばれる残骸を、なんとこの血液脳関門をあけただけで排除してくれる現象を発見しました。
これによって記憶障害など、認知的効果も期待できます。

ちょっと余談ですが、実は最近アミロイド班の原因となるアミロイドβ自体も、原因でなく別の原因の結果に過ぎない、という仮説がざわざわを呼んでいます。(上記投稿記事で言う「アミロイドカスケード仮説」自体が誤りではないか?という指摘です)

この話は長くなるのでまた取り上げるかもしれませんが、関心のある方向けに関係記事だけ引用して閉じておきます。

さて、その魔法のような超音波ビームですが、念のため冒頭記事より画像を引用しておきます。

出所:冒頭記事内の画像

イメージだけ補足すると、超音波を集中してあげることで熱エネルギーを与え、関門にあたる内皮細胞をさながら肩こりをほぐすような作用をあたえることで敷居を下げ、血液を取り巻く神経細胞(ニューロン)にまで届ける、というものです。

記事の後半にあるように、現時点ではMRIというそこそこ値が張る仕組みを使いますが、今はそれを携帯レベルにまでコンパクト化し、かつ廉価にしようという装置開発が進んでいます。

認知症やALS(筋萎縮性側索硬化症)の方にとっては、今後期待される分野だと思います。
実はつい最近、ALS宣告を受けたのち、今後の人類の新しい選択肢をつくるべく、自身のサイボーグ計画を選択した方がお亡くなりになったようです。(家族のTwitterがきっかけ)

心からの敬意と哀悼の意を表します。確実に人類、そして自分自身にとって勇気を与えてくれました。


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