【書評】トーマス・ペイン『コモン・センス』--創業者の意思は何?
コモン・センスというのは常識のことで、でもこの本の内容はみんなの常識にはなっていない。少なくとも僕は知らなかった。実際に読んでみて驚くのは、過激なほどの平等主義である。
王様がいること自体おかしい、だって人間はもともと平等に作られたんだからとか、世襲制はおかしい、ある家族が他の家族の上に立つなんて変だとか、まぁ今の感覚だったらわりと普通のことをトーマス・ペインは言い続ける。でもイギリスの植民地でしかも王様に支配されていた時代の著作だから、当時はものすごく過激だったんだろう。
今のアメリカで謎だなあ、と思うこともたくさん書いてある。アメリカとはヨーロッパで迫害された人びとの避難所で、これは神の御意志だ、という宣言があって、あー、こういうところから、移民やら亡命者やらを受け入れ続ける国是が今まで続いているんだな、と理解できる。
あるいは、ヨーロッパの紛争に巻き込まれたらアメリカは損するだけだ、どの国とも平等に付き合って、ちゃっかり全部と貿易をするのが一番儲かる、なんていうのは、アメリカの基本的な DNA なんだろうなぁ、と思う。
もちろん現在、世界中に軍隊を展開しているアメリカが、他の国のことにはできるだけ首を突っ込みたくない、というのは変な感じもする。でも基本的な考え方はこうで、心ならずも今は世界の警察官にとして振る舞っているのだと思えば、アメリカの出て行きたいんだか閉じこもりたいんだかよくわからない政策も理解できる。
要するに、今のアメリカを理解したいなら今だけを見ていてもだめで、もともと創業した時にどうだったか、というのが重要だと思い知らされた。こういうのは人間でも会社でも国家でも同じなのかな。