小川晃司

ラテンアメリカと日本の架け橋となるために活動しています。現在はメキシコで日本料理を作っ…

小川晃司

ラテンアメリカと日本の架け橋となるために活動しています。現在はメキシコで日本料理を作っています。 インスタグラム: @koji0gawa

マガジン

  • Encounter Japan Stories

    • 19本

    「ラテンアメリカと日本の新しい歴史を創り、人々の人生を豊かにする」ことを掲げたEncounter Japanの日本人メンバーが発信する記事です。

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メキシコの日本食レストランでメキシコ人と働くことについて

仕事内容ってどんな感じなんですか? と聞かれると、どう説明したら良いのかがわからないことがある。 肩書きで言うとレストランGOENケレタロ店の料理長になるが、僕は洗い場にお皿が乱雑に溜まっているのを見れば皿洗いを始める。お皿が回らないと料理の提供も遅れるし、テーブルから空いた皿を取り下げるのも遅れるからだ。 オフィスの掃除もほぼ毎日する。オフィスではいろんな書類が置かれる上、休憩に使う人もいるし食事もされる。荷物も置かれる。だからカオスになりやすい。キッチンの一角にあるオフ

    • 逃男 番外編 「書くこと」

      今回は番外編です。徒然なるままに現在の僕の周辺の景色と、頭の中を文字にしました。今回は砕けた感じの文で書いています。  仕事の終盤、キッチン奥の狭いオフィスで久々に一日中パソコンをたたき続けてぼーっとしている頭を冷やすため、ホテルの外の駐車場にでる。 風が気持ちいい。建物を出て正面、住んでいる町では決して見ることのできない緑で覆われた丘も、今はただの黒いの影だけが見える。強いライトで照らされた、サッカーコートくらいある駐車場を見ながら、20年前の自分だったら絶対ここで従妹

      • 逃男 #5 『 特大ジョッキ 』

        ジューーッ 炭火の上に敷かれた網の上で、ひっくり返されたカルビが美味しそうな音を立てると同時に、店員の男性が二つ特大ジョッキのビールを持ってきました。一杯700円のそのジョッキはおそらく1リットルはありそうな大きさで、そのジョッキは僕の前に一つ、もう一つは、カルビがが放つ煙越しに座る邑岡さんの前に置かれました。 そして空になった最初の一杯の大ジョッキを回収して去った店員さんの背中を目に、すでに酔っ払ってきた自分に焦りを感じながら視線を目の前のカルビに戻しました。 「そん

        • 逃男 #4 『 がらんどう 』

          初めての彼女との失恋の傷は大きく、何年も何年もかけて忘れることに努めた恋です。なので当時の細かい心情や行動は正直ほとんど覚えていません。書き出すまでに相当な時間がかかりました。  もう思い出す必要なんてないし、ここは飛ばして、次の章を書いてしまおうかとも思いました。しかし、今考えると失恋後の苦しんだ時間が今の僕の強みを作ったのは間違いありません。傷が完全に癒えた今、備忘録として残しておくことにします。 ちょっと嫌ですが、僕の女々しい部分も含め書き晒します。 親元から離れ、

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        記事

          逃男 #3 『 同棲失恋 』

           半同棲していた、人生初めての彼女に振られた末に出て行かれたのは、当時僕が21歳の2014年の大晦日のことでした。  2015年の元旦の昼前、町行く人は恋人や家族、友達を連れ神社に足を運び初詣をしている頃、元彼女の荷物が僕がバイト中に影として全て消えたアパートの一室の布団の中でうつ伏せの状態から身動きが取れずにいました。  何かに身を拘束されていた訳でもなく、目は完全に覚めていました。時折、空腹に襲われることもさながら、膨大な無気力のせいで、全ての感覚はほぼ「無」に向かって

          逃男 #3 『 同棲失恋 』

          逃男 #2 『 数学物理 』

          数学と物理が好きでした。 目の前で起こっている出来事を一旦全て文字に置き換えて、幾つかの等式で結び、最終的にそれらから一つのシンプルな数式を導く。その数式によって全ての文字の相互関係がひと目でわかる。というのが好きでした。一度文字や数字に置き換えてしまえば、どんなに複雑極まりない問題があっても、最終的に一つの相互関係式にまとめ上げることができ、教室で飛び交う会話のように話し手の言い方や声のトーン、聞き手の受け方によって事実が変わってしまうことも、こと数学や物理には起こりませ

          逃男 #2 『 数学物理 』

          逃男 #1 『 大学受験 』

          僕らの店を襲った事件から2週間、コロナによる感染拡大が落ち着き、戻り始めていた客足は事件を機に激減しました。予想していなかった膨大な時間とそれとに比例する量の不安が僕らの前に横たわる中、この時間を利用して、僕自身の過去を自ら振り返った文章を「逃男」というタイトルで毎週このノートに連載という形で纏めていきます。成功よりも、逃げる場面が多かった僕ですが、同じく何かと戦っている誰かの為になりますように。そして、ぜひレストランに食べに来てください。 今回は第一回、高校時代について書

          逃男 #1 『 大学受験 』