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逃男

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逃男 #5 『 特大ジョッキ 』

逃男 #5 『 特大ジョッキ 』

ジューーッ

炭火の上に敷かれた網の上で、ひっくり返されたカルビが美味しそうな音を立てると同時に、店員の男性が二つ特大ジョッキのビールを持ってきました。一杯700円のそのジョッキはおそらく1リットルはありそうな大きさで、そのジョッキは僕の前に一つ、もう一つは、カルビがが放つ煙越しに座る邑岡さんの前に置かれました。

そして空になった最初の一杯の大ジョッキを回収して去った店員さんの背中を目に、すでに

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逃男 #4 『 がらんどう 』

逃男 #4 『 がらんどう 』

初めての彼女との失恋の傷は大きく、何年も何年もかけて忘れることに努めた恋です。なので当時の細かい心情や行動は正直ほとんど覚えていません。書き出すまでに相当な時間がかかりました。
 もう思い出す必要なんてないし、ここは飛ばして、次の章を書いてしまおうかとも思いました。しかし、今考えると失恋後の苦しんだ時間が今の僕の強みを作ったのは間違いありません。傷が完全に癒えた今、備忘録として残しておくことにしま

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逃男 #2 『 数学物理 』

逃男 #2 『 数学物理 』

数学と物理が好きでした。

目の前で起こっている出来事を一旦全て文字に置き換えて、幾つかの等式で結び、最終的にそれらから一つのシンプルな数式を導く。その数式によって全ての文字の相互関係がひと目でわかる。というのが好きでした。一度文字や数字に置き換えてしまえば、どんなに複雑極まりない問題があっても、最終的に一つの相互関係式にまとめ上げることができ、教室で飛び交う会話のように話し手の言い方や声のトーン

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逃男 #1 『 大学受験 』

逃男 #1 『 大学受験 』

僕らの店を襲った事件から2週間、コロナによる感染拡大が落ち着き、戻り始めていた客足は事件を機に激減しました。予想していなかった膨大な時間とそれとに比例する量の不安が僕らの前に横たわる中、この時間を利用して、僕自身の過去を自ら振り返った文章を「逃男」というタイトルで毎週このノートに連載という形で纏めていきます。成功よりも、逃げる場面が多かった僕ですが、同じく何かと戦っている誰かの為になりますように。

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