=AKANE=　第十一話　一ヶ月

朝あさのランニングを一週間続いっしゅうかんつづけて、土曜日どようびの早朝そうちょうにはタイムは一時間二十分いちじかんにじゅっぷんを少すこし切きっていた。

そして日曜日にちようび、先週せんしゅうより三十分さんじゅっぷんほど早はやく家いえを出でた。

公園こうえんに着つくとまだ彼かれは来きていなかったので一人ひとりでストレッチを始はじめていた。

少すこしすると彼かれが自転車じてんしゃで向むかって来くるのが見みえた。

自転車じてんしゃを停とめて彼かれは、

樋口「今日きょうも来きたのかよ」

と、言いった。

茜「来くるよ！来くるって言いったじゃん！」

と、言いうと彼かれは…

樋口「ふぅ〜ん…」

と、言いってストレッチを始はじめた。

そして一通ひととおりのルーティンを終おえると走はしり始はじめた。

この公園こうえんは「船岡山公園ふなおかやまこうえん」と言いって一ひとつの小ちいさな山やまである。

なので平坦へいたんな御所ごしょの周まわりを走はしるのとはやはり訳わけが違ちがう。

アップダウンもあり石段上いしだんのぼりもある。

少すこしずつ彼かれとの距離きょりは空あいていくものの先週せんしゅうのように姿すがたが見みえなくなるほどではなかった。

彼かれは五周ごしゅうする間あいだ一度いちども振ふり返かえらずに走はしっていた。

そしてスタート地点ちてんまで戻もどった彼かれはようやく振ふり返かえり私わたしの方ほうを見みた。

おそらく私わたしの姿すがたが見みえないだろうと思おもって振ふり向むいたのか「えっ？」と言いう表情ひょうじょうをしていた。

そして彼かれの横よこまで辿たどり着つくと、

樋口「お前まえ、この前まえより早はやくね？」

と、言いった。

茜「ずっとぶっちぎられたまんまじゃいられないからね」

と、言いうと彼かれは「フッ」と顔かおを緩ゆるませて広場ひろばの方ほうへ移動いどうした。

そしてまた彼かれの一通ひととおりのメニューをこなし始はじめた。

素振すぶりのときも私わたしは彼かれの少すこし後うしろで彼かれのフォームを真似まねて練習れんしゅうした。

彼かれのフォームはとてもキレイでいいお手本てほんになった。

休憩きゅうけいしているときの彼かれは物静ものしずかでほとんど話はなしはしない。

私わたしが何なにか質問しつもんすると言葉数ことばかずは少すくないものの応こたえてはくれる。

そんな感かんじで一ヶ月いっかげつほど経たつと休憩きゅうけいしているときに珍めずしく彼かれから話はなしかけてくれた。

樋口「お前まえ、最近さいきんずいぶんついてこれるようになってんじゃん」

茜「そりゃいつまでも置おいてかれてばっかじゃいられませんよ！」

と、言いうと彼かれは少すこし考かんがえて…

樋口「ちょっとボール打うつから付つき合あってくれよ」

と、言いって立たち上あがりラケットとボールを持もって広場ひろばの方ほうへ移動いどうした。

私わたしもラケットを手てに取とり彼かれの後あとを追おった。

第十二話へつづく…

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