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=AKANE= 第十九話 夢



勇次「………オレ………」



茜「……なに?」





勇次「ここで茜とトレーニング出来できるのも今日きょう最後さいごだ……」



茜「え…………」





茜「え、どううこと??」




勇次「親父おやじ仕事しごと都合つごう転校てんこうしなきゃいけなくなった」



茜「え………」




わたしかれとの時間じかんがずっとつづくものだとおもこんんでいた……




茜「転校てんこうて……そんなきゅうに……」



勇次「ひとつきほどまえにチラッとはいてたんだけど……オレにとっては『またか、今回こんかいはやかったな』ぐらいのもんだった」



茜「え……本当ほんとう転校てんこうするの?」



勇次「あぁ……」



勇次「中学ちゅうがくときもこんな時期じきだっただろ?」




茜「そんな………」




勇次「ただ……」



茜「ただ?」



勇次「今回こんかい転校てんこういままでとはすこちがうんだ」



茜「え…?」



勇次「オレ、この高校こうこうだったら親父おやじ転勤てんきんわずに一人暮ひとりぐらししてもいいかな?ておもはじめてたんだけど…」



茜「だったら……」



勇次「今回こんかい親父おやじ転勤先てんきんさき……」




勇次「………オーストラリアなんだ」



茜「オーストラリア!!?」




勇次「あぁ……で、親父おやじ会社かいしゃってのはテニス用品扱ようひんあつかってて、このまえ秋季大会しゅうきたいかい優勝ゆうしょうのことをちよっとはなしたらしいんだ」



茜「………」



勇次「そうしたら現地法人げんちほうじんがジュニアのアカデミーのスポンサーやってて、よかったらアカデミーのハイスクールプログラムで留学りゅうがくしてみないかってってるらしくって」



茜「え………すごいじゃん……」



勇次「それで現地げんち話聞はなしききにってたから学校休がっこうやすんでたんだよ」



茜「そうだったんだ……」




勇次「オレ……テニスで……世界せかいたたかってみたい!てのはずっとおもってた……」



勇次「でも親父おやじ転勤てんきん二年にねん一度いちどかならずあるから、正直諦しょうじきあきらめてた……」



勇次「でも今回こんかいはそれがチャンスにわったんだ!!ゆめ一歩近いっぽちかづくんだ!!」









茜「……勇次のゆめならけばいいじゃん!」



茜「てか、くべきだよ!!かなきゃ!!」



勇次「茜………」




勇次「いいのかよ……」



茜「なんで?あたしにめられる理由りゆうなんてないよ……」



勇次「おまえ……」




茜「ってきなよ!……てか、もうめたんでしょ?」



勇次「………うん…………りぃ」





茜「つぎ近畿選抜きんきせんばつ絶対優勝ぜったいゆうしょうするから!!」



茜「だから勇次も……絶対ぜったい世界せかいって!!」



勇次「おぅ、もちろんそのつもりでくんだよ!!」


茜「約束やくそくだよ!」



勇次「……わかった」



茜「途中とちゅうしたらそっちまでぶっばしにくからね!!」



勇次「フフッ、ぇーな」






勇次「ありがとな」



茜「うん、元気げんきで……」




そしてかれ自転車じてんしゃのサドルにまたがはしそうとした瞬間しゅんかん


わたしこころなかおさええていた感情かんじょう爆発ばくはつしてさけんでしまった……








茜「きだったんだよ!!!」



茜「あたし……勇次のこと、きだったんだよ!!!」





そうとしていたペダルがまり、背中せなかけたままかれさけんだ。




勇次「オレもだよ!!!」



勇次「オレもおまえのことがきだったよ!!!」




茜「わすれないからね!!絶対忘ぜったいわすれないから!!」



勇次「オレもだよ!!!」





勇次「いつか……世界せかいのトッププレーヤーになってかえってくるからな!!」





勇次「そのときは……」





茜「そのときは……?」







勇次「じゃあな……」



と、かれ一度いちどだけうなづきペダルをはじめてってしまった……




わたし呆然ぼうぜんくしていた。





すると木陰こかげから





「茜……」



と、こえが………







第二十話へつづく…



=AKANE= 第一話はこちら




本編『だって、恋したいもん!』はこちら





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