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【短編小説】スイカ

 見た目というのは、かなり重要な要素といえる。

 例えば人間の容姿において、見た目がもたらす効果は大きい。見た目が美しいほうが他人から好かれやすいし、何かと優位に立つことも多いだろう。

 一方で容姿が醜くかったり、特徴を持たない人は誰からも相手にされないし、何かと劣等感を感じるシーンがあるのではないだろうか。

 女性は必死に化粧をし、男性から好かれようと努力する。中には整形をして、人生を豊かに過ごそうと考える人もいる。

 私も外見はあまりよろしいとは言えない。五十年間生きてきて、彼女はおろか女性とまともに話したこともない。

 ニ十歳の頃からいまの仕事を続けていて、お金は貯まるが女性とデートをする機会もない。ただ黙々と、毎日同じ仕事をこなしている。

 話がそれてしまったので、戻すとしよう。

 人間以外でも、見た目は重要とされている。それは食べ物だ。例えば店先に美味しそうに盛られた料理の写真があれば、嫌でもお腹が空いてくるし、その店に入ってみようと思う。

 どんなに美味しい料理でも、見た目がパッとしなかったり、悪かったりすると、誰も食べようとは思わない。

 逆にそんなに美味しくない料理でも、見た目が美味しそうであれば、人はその料理を注文するし、食べてみて、これはこれでありかもな、なんて思ったりするものだ。

 そしてそれは完成された料理だけでなく、野菜や果物などの食材にも言えることだ。
 リンゴやレタス、イチゴなんかはその見た目からみずみずしさが溢れ出ている。そしてその味は、見た目通りに美味しい。

 それに引き換えスイカはひどい。ただの緑色のボールだ。他の野菜や果物に比べて大きいし重い。加えて味もそこまで美味しくないし、種が邪魔で食べにくい。

 それでもスイカは人々から愛され、夏の風物詩にもなっている。

 それはなぜか。見た目が良いからだ。あの縞模様に人は魅了されて、ついつい買ってしまうのだ。

 だから私は自分の仕事に誇りを持っている。三十年間毎日、彼女も作らずせっせと働いてきて悔いはない。だから褒めてほしい。

 あの縞模様を書くのって、結構大変なんですよ。

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