見出し画像

「時の運」(セレンディピティ)を掴めるかどうか。

先日、某所でビジネスコンテストの最終審査を行いました。その具体的な結果は、さておき。毎度ビジコンをやるたびに頂戴する「審査結果が腹落ちできない、納得がいかない」に、私なり―経営学者なりの考え方をお伝えします。

ちなみに、上記のご質問を頂戴するのは、その人が本気だったからこそですから、誠実な声として私は肯定的に捉えております。

だからこそ私も、私なりの考え方をきちんと返す必要があると考え、ビジコンを軸に、新事業創造というものをどう考えているのかをお話ししておこうと思います。

Young at heartな人生のチャレンジャーたちにも、メッセージとして届くことを期待いたします。

***

結論から言うと、審査結果がいかに納得がいかなくとも、「勝利を得た」という結果こそが重いのだ、ということです。努力の先の、幸運をつかみ取れたかどうか。

たとえ、エントリーした皆さんにとって、予想と大きく異なる結果だったとしても。さらに言えば、審査員の一人として私自身がつけた採点と全体の評価が仮に大きく異なっていたとしても。それでも私は、当日その場で評価されたという事実こそが、新事業創造においては、ひたすらに重いと考えます。

それは、新事業創造が、1)結局のところ、偶発的な幸運(セレンディピティ)をどれだけ引き寄せられるかにかかっているということと、そして、2)その偶発性にこそ、企業家たちの努力や行動の質が顕れる、という学術的立場に拠るものです。

フェイスブックだって、マイクロソフトだって、ソフトバンクだって、偶発的なラッキーを味方にして、成功を収めました。個人やグループの成功も同様です。サンドウィッチマンだって、プレスリーだって、時の運としか言いようのないものが、彼らを後押しした。

では、彼らの成功は運任せだったかといえば、そんなことはありません。運を引き寄せるためにこそ。ある瞬間に、とてつもない輝きを見せるためにこそ。日々の努力は、そのステージに立つためのものです。そして、幸運が舞い込みやすい場を選んで、幸運を得やすい行動してきたかどうか。そのエフォートと場の掛け算によって、各自が挑戦権として得た【成功の確率】のなかで、偶発的な幸運をつかむ勝負をする、というのが新事業創造です。

チーム崩壊をしかねないような状況からの必死さが、プレゼンに乗り移ったのか。

信念を貫き続けた結果が、場を司るキーパーソンの心に刺さったからなのか。

はたまた発表順の因果か。

最後は、確率のゲームです。諸条件が折り重なり、最後の祝福が誰かに降り注ぐ。そういうものであるからこそ、私はイノベーション/新事業創造という科目の審査・評価としては、その場で祝福されたということを、重く見るようにしています。

冷静に評価したら事業計画としてどれが優秀か、という話と、新事業が成功するかという話は、また別の次元なのです。

すなわち、私自身にも、新事業の成功という視座からして、どれがベストなのかは判断できないのです。PoCやデザイン思考の理論的基礎となる点ですね。不確実なものは、どこまでいっても不確実。蓋を開けてみるまで、分からない。だからこそ、最終コーナーまで、最大限全チームの力を引き出し、横一線のレースにしたうえで、最後の最後は、私は当日のセレンディピティがどう舞い込むか、果たしてそれをどのグループが掴むのかを見ることにしています。

以上が、私のビジコンにおける審査・評価の考え方です。

この世の中のチャレンジャーさんたち皆に、セレンディピティを掴むこと、それはあなたの長年の努力がみせる、瞬間のきらめきであることを、お伝えしたいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?