見出し画像

南アフリカのワインから大航海時代を思う−お酒は各地を旅する気分で

 濁りはなくて透明。しっかりとした黄色が見て取れる。グラスを傾けて起こすと、壁面には粘性を感じられる跡がつく。きめ細かな泡が立つ。グラスを鼻に近づける。香りは熟したリンゴぐらいかな。口に含んでみると、酸味もあるし、旨みもある。パンを口に含んだときのようなフレーバーもある。5000円ぐらいのシャンパーニュをわざわざ飲むなら、僕にはこれで十分かなぁとも思う。これは南アフリカのとあるスパークリングワインを飲んでみた感想です。
 「アフリカ」と聞くと、子どもの頃は「暑い」とか「砂漠」とか、そんなイメージを抱いた。実際にそういうエリアもあるのだろうけれど、南アフリカは日本よりもはるかに「ヨーロッパ的」であることをワインの勉強を通して知り、実際にワインを飲んでそう思うようにもなった。
 南アフリカ共和国はアフリカ大陸の最南端で、そのワイン産業のはじまりは17世紀、大航海時代にさかのぼる。
 歴史の授業で聞いたことはあるオランダ東インド会社。その商船がインドやその周辺地域に向かう際に寄港したのが大西洋に面したケープタウン。当時のヨーロッパの人々は、この地の気候の良さに驚いたに違いない。というのは、ヨーロッパ的な地中海性気候の土地だからだ。1655年、オランダ東インド会社のヤン・ファン・リーベックがブドウの栽培を始めたとのこと。その後、フランス・ロワール地方から多くの人々が入植する……
 こんな具合に、世界史や地理の知識があれば、ワインやお酒は楽しめる部分が増えると思う。僕は若いころには世界史も地理もほとんど勉強しなかった。各地のワインや料理に関心を持つようになってからは特に、「もっと勉強してたら良かったなぁ…」と思うことが多い。
 ワインはブドウから作られている農産物の加工品。農産物やその加工品が各地域の風土の影響を受けるのはもちろんのこと。
 今年は、日本でもこれまで当然のように手に入ったお米が手に入りにくくなるということがあった。  
農産物に対する気候変動や社会情勢の影響にも以前よりは自然と関心を持つようになった。大袈裟だけど、ワインやお酒、食べ物に対する興味が、僕の視野を広げてくれたと思う。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?