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どこへ消えた?自粛警察

自粛警察の皆さんへ


 拝啓、自粛警察の皆さま。

 2020年4月の緊急事態宣言のころ、自粛警察の皆さんは、大活躍をされていましたね。

 どこへも出かけられないため、せめてもの息抜きのために近くの公園で遊ぶお母さんと子どもたちを通報したりもされていました。本当に大変な中、なんとか営業を続けようとされた飲食店を通報するだけではなく、楽しみをなくした子どもたちのため、ささやかに開店しているけなげなお菓子屋さんに心無い言葉を投げつけたりもされました。また、大自然の中、お互いの距離が何十メートルもあるビーチでサーフィンをしている方々をやり玉にあげたりもされていました。釣りをしている人たちにすら、嫌悪の目を向けられていましたね。学生がコロナにかかった大学・高校などに脅迫まがいの電話をした方々もいましたね。


 そして、2020年12月現在、第3波が訪れて、毎日の感染者数は4月をはるかに超えています。重症者数も4月を上回っています。

 なのに、どうしたことでしょう?

 自粛警察の方々の活躍を聞くことはほとんどありません。


 4月には、正義感に燃え、活動されていた方々は、もうあの頃の情熱は失ってしまったのでしょうか?活動されていた方々、どうされてしまったのでしょうか?


 4月ごろ、皆さんは、多くの人たちの行動に目を光らせ、日本の社会を相互監視のような暗い影で覆いました。

 国民全体をあんな鬱屈した気分にさせておいて、あの頃よりも感染者数が多い今、何もしないというのはあまりにも身勝手ではありませんか?

 皆さま、あの頃よりも感染者数が多い今、まさか出歩いたりはしていないでしょうね?

 外食なんかしていないでしょうね?

 公園に行ったり、観光地に行ったりしていないでしょうね?

 室内に人が集まる映画館へなんか行ってないでしょうね?何千人もが集結する野球観戦なんかしていないでしょうね?

 まさか、GO TO トラベルやGO TO イートなんか利用していないでしょうね?

 もし、4月のころの自粛警察としての活動が正しかったと思うなら、今は、あのころよりもっともっと真剣に活動しないといけませんね?

 皆さんには、その責任がありますよね?


 もしかして、あの頃に皆さんがされていたことは、実際には皆さんの勝手な思い込みで、実はあんなことをする必要はなかったのでしょうか?

 もしそうだとしたら、自分たちの視野の狭さ、過剰な恐怖心、そのために他の人たちを本当に嫌な目にあわせたことを心から反省してほしいです。


 自粛警察の方々のしていたことは、過去の戦争中、戦争に批判的な人や戦争に負けることを冷静に予想した人たちを非国民だと非難し、特高警察に通報し、拷問に追いやった人たちと、かなり近いと思います。

 日本が今でも、そういう人たちがたくさんいる国だとわかったことは、本当に恐ろしいことです。日本は何も変わっていないんだなあ、と…。

 本当は的外れにもかかわらず、身勝手な正義感で周りの人たちを憎み、恫喝し、社会全体を生きにくく窮屈で鬱屈したものに変えるなんて、本当にやってはならないことだと思います。

 国民同士が相互監視し合う社会は、最も恐ろしい社会でしょう。


 そして、自粛警察の方々のしていた活動は、息抜きなどのためにわずかでも外に出たいという一般の人に重大なストレスを与えただけではありません。コロナに対する過剰な恐怖心が、不幸にもコロナに感染した方々への極端な差別、過酷な環境の中で一生懸命がんばってくれている看護師などの医療関係の皆さんへの痛ましい差別にもつながりました。

 こんなひどい状況を生み、医療関係者までも苦しめた責任の一端は、確実に自粛警察の皆さんにもあります。


 自粛警察の方々、あの頃自粛警察としてふるまっていたことを本当に心から反省してください。
 今からでも遅くありません。あの時、ひどい言葉を投げかけたことに対し、その人たちに対して、できる方法で謝罪の言葉を伝えてほしいと思います。近隣の人なら直接、SNSでならSNSで、お店に対してなら電話でもいいと思います。
 そうすることが、あの頃に恐怖心と身勝手な正義感からしてしまったことへのせめてもの償いになるのではないでしょうか。


敬具

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