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セッション定番曲その104:Caravan

ジャズセッション定番曲。エキゾチックなメロディで、インストでも歌入りでも演奏されます。テンポの速さとメロディのゆったりさのギャップ!
(歌詞は最下段に掲載)

和訳したものはあちこちのWebサイトに掲載されているので、ここではポイントだけ説明します。


ポイント1:Duke Ellingtonは偉いひと

なぜ偉いのか・・・いくら書いても書き尽くせません。
スイングジャズ全盛時代に自分のビッグバンドを率いて数多くの名曲/スタンダード曲を書き、録音し、演奏して「ジャズ」のイメージを確立しました。そんな名曲のひとつがこの「Caravan」(1935年発表)。ブルースとも違う妖しく異国情緒のあるメロディ、4ビート/スイングからはみ出したリズムアレンジ。

ジャズセッションではよく「アフロキューバン〜スイング」というアレンジで演奏されます。誰のどのアレンジをイメージしているかで解釈が変わってくるので要注意。

米国人って基本的には国外のことにはあまり関心が無く、興味本位で「異国情緒」を(ナンチャッテで)自由に取り入れるので、それが良い方向に機能いて文化的な豊かさに繋がることもありますね。


ポイン2:夏だ!ベンチャーズだっ!

かなり雑食性の強かったThe Ventures、まさにスピードチューンという感じですね。この暑苦しさも魅力的ですね。ビアガーデンで聴くならこのバージョンですね。

先にこっちのバージョンを聴いた人は「少し変わったロック曲だなぁ」と思ったはず。3分以下の曲なのにちゃんとドラムソロもあります。


ポイント3:「セッション(Whiplash)」

主人公のドラマー(の卵)が指揮者/指導者の指示を振り切ってドラムソロを止めないシーン(4:30から)はこの曲。良い子は真似しないように。

そもそも邦題もおかしいですね。やっていることは偶発性を排除したビッグバンドで、指導者の意図に沿ってリハーサルで徹底的に組み立てた演奏でコンクールを競う話で、全然「セッション」していない。練習の様子もただただ手数の多さを是とするみたいなシーンもあって物議を醸しました。

そんな指導者への反発から、ステージ上で予定調和を振り切って延々とドラムソロをかますシーン。まさにこの曲が相応しいですね。ドラムソロってリスナーにとっては基本的にはつまらないんだけど、ちゃんと「どの曲をやっているのか感じさせる」「メロディが聴こえてくる」ドラムソロなら大歓迎です。

ポイント4:モンクのクールなアプローチ

Thelonious Monkが弾くと・・・
エキゾチックさが増しますね。例のポツリポツリと弾く寡黙なピアノが涼しい雰囲気です。

ドラムは少し引っ込んでピアノとベースが核になって曲を引っ張るアレンジ。好きです。

ポイント5:歌入り

後付けされた歌詞の内容は「夜の砂漠を粛々と行くラクダのキャラバン隊」を描いたもので、あまり捻りはありません。夜でもまだ昼間の熱気の残る砂漠、夜空の星と月、長い旅、といった情景を歌で描く必要があります。様々な料理の仕方がある曲なので、歌う人によってアプローチは様々ですね。熱っぽく歌うのもアリ、クールさを強調するのもアリ。

Cassandra Wilson、2008年録音
気怠いクールなボーカルがこの曲に意外と合いますね。


Ella Fitzgerald
(with Duke Ellington & His Orchestra)、1957年録音
ご本家による少し変わったリズムアレンジ。Ellaのヌケの良い声が似合いますね。声のコントールはもちろんですが、彼女の強みは「リズムを掴む力」だと思います。


Dinah Washington
(with Quincy Jones And His Orchestra)、1956年録音
ブルース色が強く、ビブラートが強烈な彼女の歌唱。クセの強い歌い方ですが、口先で歌うようなジャズボーカリストが多い中、まずこれを聴けと言いたいですね。


Nat King Cole
、1957年録音
言葉を丁寧に明瞭に歌うNat King Cole、お手本です。


ポイント6:インスト

Art Blakey and the Jazz Messengers、1962年録音
熱いジャズドラマーといえばアート・ブレイキー!バンドを鼓舞するような演奏は全編を通して聴けます。


Wes Montgomery、1964年録音
こういうメロディとオクターブ奏法の相性は抜群ですね。ソロのスピード感もすごい。


Art Pepper、1977年録音
薬物中毒から1974年頃にカムバックして、初来日公演でのライブ録音。


Dr John、1999年録音
ファンクロック・アレンジでの演奏。


◾️歌詞


Night
And stars above that shine so bright
The mystery of their fading light
That shines upon our caravan

Sleep
Upon my shoulder as we creep
Across the sand so I may keep
The memory of our caravan

This is so exciting
You are so inviting
Resting in my arms
As I thrill to the magic charms

Of you
Beside me here beneath the blue
My dream of love is coming true
Within our desert caravan


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