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それを何と呼ぶ

「声に出した瞬間、嘘に感じる」

そんなことを言われても、言葉にするしかできなかった。いつもそばにいることができないから、必ず戻ってしまうのも分かっているから、その言葉を聞きたかった。

でも、あなたは拒んだ。安っぽくなってしまうし、その言葉で私を思ってくれるひとくくりの言葉ではないという思いが強かった。

だから、嘘に、感じる、のだろう。あなたが発しても、私が発しても。

いつもあなたと私が発する言葉。


「スキ」


そして決まって
「ほんとにスキなの?」
とお互い聞く。あなたは真面目な顔で言うけれど、私より1つ、思いが弱いのは分かっている。だから、私は

「でもあなたには・・・」

と、すかさず言ってしまう。

だから、あなたは、

「そう、だからスキと言ってもキミの心に届かない――届けているんだけどね――」

分かっている、分かっているんだけど、発してほしかったんだ。いつでも、どこでも。あなたといるこの瞬間、どの場所でも。

でも、そうするしか、確認ができなかった。確認するしかなかった。パートナーがーいるあなたは、そんな言葉など言わずに戻るところがあるし、言わなくても伝わる相手がいる。


それをなんて呼べばいいのだろう。

短い言葉で片づけられず。

長い言葉では心に届かない。

いつも、「スキ」をどう、あなたの心に届けたら、私の届くようにしてくれたら、この先、「叶わぬ恋」が「叶う恋」になっていたのだろうと。2人で考えていた。考えるしかなかった。やっぱり叶わなかった、あのときの恋。