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商売根性だだ漏れ。『アナと雪の女王 / 家族の思い出』

『Olaf's Frozen Adventure』★☆・・。

ピクサーの新作『リメンバー・ミー』の頭につく定番の短編は、ディズニー・アニメーション・スタジオのドル箱フランチャイズ『アナと雪の女王』の新エピソード。2015年にも『アナと雪の女王/エルサのサプライズ』が公開されたが、あちらは総尺7分のバイトサイズなショートフィルムだった。本作は、米映画芸術科学アカデミー規定では「短編」の部類に入るものの、映画の冒頭につけるには格別に長い22分。それを慮ってか、本作と本編との間には『リメンバー・ミー』のスタッフたちが「本編を楽しんでね」というメッセージ動画までついてくる。

『リメンバー・ミー』の鑑賞客の一部は、本作の長さとテーマのあり方に反発している。

[物語]

アレンデール王国の門戸が開かれてから、初めてのクリスマスが到来。アナとエルサは街の人を迎えてのサプライズ・パーティーを企画するが、人々は各々の祝日を過ごすために家路へ着いてしまう。そして両親が不在のまま育ったアナとエルサは、自分たちの家族に、祝日を過ごす習わしがないことに気づいてしまう。落ち込む2人を見て、オラフは2人のためにクリスマスを盛り上げようと決意する。

[評価]

効果的な短編作品のストーリーアークは、長編のそれとは構成を異にすることが多い。典型的な三幕構成を相似形に縮小しただけでは、物語を急いでいる印象が拭えなくなる。各々の幕に割く時間が絶対的に減ることで、ステークスを上げきれないことも問題だ。それでいて、どこかにロー・ポイントを設定できなければ、物語自体の目的が判然としなくなる。後半に向けて驚きを演出し、締めくくる「ワンアイデア」な短編が世に多いのはそのためだ。

本作は20分という十分な尺を用いて、典型的な三幕構成を地で行っている。その代わり、重みを極力排除して、オラフの明るさで物語を転がしている。押し付けがましくなりがちなロー・ポイントも、オラフが呼び込む笑いでカバー。彼が登場している間は、どのシーンもかわいらしく、自然と受け入れられる。

一方、『アナ雪』のメインキャラクターたちが登場すると、映画本編とは明らかに異なる「物語上の軽さ」で面食らう。軽すぎるステークスが、短編としての本作の「どうでもよさ」を逐一裏付けていく。「どうしようエルサ、私達には家族のホリデー・トラディションがないなんて...」。出版部門の児童書レベルの物語性のなさと、あからさまに年末商戦のマーケティングを押し付けてくることにも、目を覆いたくなるような痛々しさがある。

もともとの計画通り、はじめからABCのテレビスペシャルとして放送していれば、こんな反発もなかっただろう。ただ、イディナ・メンゼルの歌声の素晴らしさを聴かされてしまうと...劇場で流したくなった気持ちも、わからなくはない。機会に恵まれなかった「埋め合わせ作品」というところ。

[クレジット]

監督:ケヴィン・ディーターズ&スティーヴ・ワーマーズ=スケルトン
プロデュース:ロイ・コンリ
脚本:ジャック・シェーファー
原作:クリス・バック、ジェニファー・リー(キャラクター)
撮影:コーリー・ロッコ・フロリモンテ
編集:ジェレミー・ミルトン、ジェシー・アヴェルナ
音楽:クリストフ・ベック、ジェフ・モロー
出演:ジョシュ・ギャド、クリスティン・ベル、イディナ・メンゼル
製作:ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ
配給(米):ウォルト・ディズニー・スタジオ・モーション・ピクチャーズ
配給(日):ウォルト・ディズニー・カンパニー
配給(他):N/A
:22分
ウェブサイト:http://www.disney.co.jp/movie/remember-me/anayuki.html

北米公開:2017年11月22日
日本公開:2018年3月16日

鑑賞日:2017年11月26日10:30〜
劇場:Pacific Theaters Glendale 18 w/Y

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