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『REBEL MOON — パート1: 炎の子』のエロとグロとナンセンス

『Rebel Moon - Part 1: Child of Fire』(2023年)★★・・。
公開:2023年12月21日(北米→全世界)
IMDB | Rotten Tomatoes | Wikipedia

公開前から舞台裏までスケスケな作品も、考えもの。ザック・スナイダーが『スター・ウォーズ』用にこしらえた企画が却下され、その後Netflixがオリジナル作品として拾った長編2部作。と言われたら、何がどう『スター・ウォーズ』だったのか、そして何が原因で却下されたのか。考えながらの感想だらけになっても、世に出す方も文句は言えない。

そもそも、スナイダーのスタイルには否定派が多い。しかしスナイダーへの擁護で最近話題を盛り上げているのは、同じDCコミックス作品で名を上げたクリストファー・ノーランその人。『スナイダー作品に影響されなかったコミックス原作映画はない』『「ウォッチメン」は「アベンジャーズ」後に公開されれば評価は違っただろう』ー。

監督同士、支え合ってなんぼだということを理解している。ノーランに言われたら、ネットトロルたちも黙るしかない。

もとより実の娘を自死で亡くしている悲運にも思いを馳せてしまうと、なんとも形容し難いアーティストではある。私生活と作品とが個別の次元にあるような人だ。

それはさておき。いや、だからこそか。

やはりスナイダーの作風には好みが分かれる。厚塗りの絵作りと過剰な演出で「盛る」一方、物語の薄さで常にアンバランスさを抱えるストーリーテリング。本作も、幸か不幸か、その例に漏れない。

アイルランド、あるいはスコットランド系の農村の宴からはじまる本作。お祝いの雰囲気をよそに、憂いを纏う女(ソフィア・ブテラ)がひとり、畑仕事に精を出している。女はよそ者の体を崩さず、宴会の席でも辛気臭い。…そして翌日。巨大戦艦に乗ったドイツ軍人的な集団が村へ降り立ち、案の定一方的な抑圧をかけはじめる。そのとき、村民を救おうと立ち上がった女は凄まじい戦闘能力を発揮してーー。

その後は、村を守るための英雄集めの末、敵の将軍に一矢報いようとする冒険が展開する。しかしパート1は前哨戦。本戦はパート2にお預けだ。

続きが来るとわかった上での展開とクリフハンガーには悪い気がしない。

しかし、物語が平たい。性と流血に関しても、装いが下世話。序盤、祝いの席にも、帝国軍的悪役たちにも、エロとグロを欠かさない。それも『300』や『エンジェル・ウォーズ』に通じる、シーンやセリフには過剰、言ってしまうとナンセンスに思えるエロとグロが目立つ。

仲間集めも、やはり単調。新キャラの才能や能力のお披露目、からの、二言三言で即参入。モチーフとなった『七人の侍』などで描かれる人探しの苦労や工夫と比べたら、ルーティン感が否めない。それでなくとも、ライトセーバーから宇宙船から音楽酒場から運び屋からドイツ軍服からレーザー光線から、あれも『スター・ウォーズ』、これも『スター・ウォーズ』と雑念がよぎる。不健康な鑑賞。

好みが分かれるので、分かれた好みが上振れする人は、このストレートさと壮大さの組み合わせが響くことだろう。私自身は…後編が出たら結末は見届けそうだが、ネットトロル特有の「ヘイトウォッチ(=イヤイヤ言いながら結局は見ること)」で罪悪感を覚えることと思う。

贅沢の産物だ。これが劇場で公開されていたら…などと考えるのは野暮だが、配信独占作品の大衆感は諸刃の剣。

(鑑賞日:2023年12月24日 @Netflix)

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