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アハ体験のあるデザインリサーチ

デザインリサーチはどこまでやればいいのか。割とよくある疑問だと思います。
もちろん期間を決めてやるのは当たり前のことですが、リサーチをする前と後で、そのリサーチ対象についてこれまで意識できていなかった発見があったのか。その発見は、プロジェクトの方向性を決める手掛かりになるものなのか。これがイエスならリサーチの目的は達成したと言えるでしょう。

自分の経験からすると、手掛りが見つかったときには、それまでの見え方がガラっと変わります。いままでの観察やインタビューを通じて見てきたこと、議論してきたことが全てつながっていく。あれだけ議論していたのに何でこんなことに気が付かなかったんだろう、となるのです。まさにアハ体験。

ちゃんとリサーチができているか分からないという人は、そういう感覚があるまであきらめずに観察と分析をやってみてほしいと思います。実際にそういう相談があったときに、このリサーチでは何が発見できたのですかと聞くと、ぼんやりとしていたり、バラバラに細かい話になったり。手掛りが見つかった感覚まで辿りつかなかったのかな、と感じることが多いのです。

初めての行動観察

新しいサービスを企画して、立ち上げるためのお手伝いをする黒子のような立場で関わることが多いため、具体的な内容を例にするのは難しいのですが、私が以前データ分析のためのサービスを提供している会社に勤めていたときの話をさせてください。

2002年くらいの話になりますが、データ分析のためのサービスを新しく立ちあげることになり、その立ち上げチームにアサインされました。これまでもデータ分析のためのサービスを提供していたので、当然ながら今までとは違う方向性が求められました。

これまでアンケートのような形式で要望を集めてはいたものの、ユーザーは使っているもの、見ているものに対して話してくれているので、当然ながら要望がその範囲を出ることはありません。

どうやって新しい切り口を発見しようと考えていたときに、思いあたったのがコンテキスチュアル・インクワイアリーと呼ばれる行動観察の活用でした。
さっそく、社内でデータ分析の業務をしている人に協力を求め、実際の分析業務を見せてもらうことにしたのです。

ちなみにコンテキスチュアル・インクワイアリーの書籍は日本語訳がなく、日本語で触れている書籍も少ないので、当時は次の2冊を読みながら試行錯誤の連続でした。

「あ、これだ」と繋がっていく感じ

リサーチを続けていると、分析に必要なデータが足りないという場面にでくわしました。その方が、情報システム部門への依頼のメールを書きながら、「これで今日の分析は終わりです」と言うのです。

「まだ分析途中でしたけど終わりなんですか」と聞くと、「依頼してデータを受けとるまで2、3日かかるんですよね」と仕方ないという素振り。
2、3日と聞いて驚いた私が思わず「それで困らないですか?」と口にしたところ、「情シスも大変ですからね」という答えが。

このときに「あ、これだ」と感じたのを覚えています。つまり、「データを分析する人と準備する人が違うことが、不自由さや遅れの原因になっている」ということです。
また、「分析を進める中で新たな切り口が見つかるため、分析の前に必要なデータを全て準備することはできない」ということも。
もちろんこれだけではないのですが、それらを手掛りとして今までとは違う方向性のサービスを検討することができたのです。

どんなサービスになったのかはここでは書きませんが、分析する人と準備する人が違うことが問題であれば、その2者のやりとりをしやすくする方向性か、そもそも分析する人が準備もできるようにするか。解決する方向性はすぐに見つけることができそうですよね。

発見した瞬間の気持ちよさ

行動観察をしている中で、手掛りを発見した瞬間に、それまでぼんやりと考えてきたり、議論してきたことが、一気に繋がって輪郭を持つ。アハ体験ともいえるあの気持ちよさ。デザインリサーチをやっている人にはきっと通じるのではないでしょうか。
今回、私が初めて行動観察をしたときのことを思い返してみたのですが、デザインリサーチのおもしろさを体験して、私がデザインエンジニアとして仕事をするきっかけとなったプロジェクトだったのだなあと感慨にふけってしまいました。

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